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偏在の理想ボーイ幻覚の普通ガール  作者: キャボション
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電撃

「では、行くとしよう」

総理は椅子から立ち上がり、扉を開けようとしたとき山猫が総理の進行を妨害するように立った。

「総理。今、部屋から出るのは危険です」

「どうしてだね?」

山猫は指を1本ずつ折っていった。

「武装した奴らが10人程います。わかるんですよ。昔から耳が良いので」

「総理は少し部屋で待っていてください。片付けてきますので」

山猫は部屋を出た。

「乃木、山猫で大丈夫なのか?」

「大丈夫だよ。強さも山猫って言われる理由なんだから」

「そうなのか?」

「うん」


山猫はドアを閉じると2歩足を動かした。左足が着地すると同時にスーツからトレンチナイフを取り出した。ナイフを慎重に握ったのとほぼ同じタイミングで武装した10人程の男達が歩いてきた。

「あー、君たち。悪いが帰ってくれないか?その方がお互いに楽なはずだ」

「オレ達は総理に用があるんだ。そのチンケな果物ナイフでどうにかできるとでも思ってるの?」

男は山猫に散弾銃を向けた。しかし山猫は散弾銃を気にせず男の方へ足を動かした。

「どうにかできるんだよ」

山猫はいつの間にか男の背後に回り込み腎臓にナイフを刺していた。仲間が倒れ込んだ数秒後残りの男達が山猫を撃とうとしたがその直後に違う男が倒れ込んだ。

「喧嘩を売ったのはお前らの方だ。悪いが大怪我してもらうぞ」


「人間は道具なしでは山猫を捕まえられない。それは乃愛ちゃんも知ってるよね?」

「まぁ、なんとなく分かる」

「山猫は捕まえられないんだよ。山猫の天才的な反射力、運動神経。そして異常な強度の訓練。その結果山猫は山猫になったんだよ」

「つまり山猫は化け物と」

「そう言うことだね」

「怖いな」

すると山猫が帰ってきた。山猫の姿は先ほどまで戦っていたとは信じられなかった。山猫のスーツは汚れどころかシワのひとつも付いていなかった。

「ただいま」

「あ、おかえり山猫」

「山猫、本当に戦ったのか?」

「急にどうしたんだ久遠」

「スーツが綺麗過ぎるんだ」

「最低限の動きだけだからね」

山猫は前髪をいじっていた。山猫からは一切の疲労も感じられない。嘘をついてないのは分かるのだが、やはり信じられなかった。

「乃愛ちゃん。山猫の実力を見ればそうなるよ。でもそんな乃愛ちゃんもかわいいね」

「乃木はどんだけ俺の事好きすぎるんだ」

だが俺もまんざらでもなかった。

それから1ヶ月。俺達は影から総理の警護をしたが事件はあの日以外起きなかった。

そして運命の日。

俺は乃木とテレビを見ていた。

「賛成280。反対2。同性婚法案の成立を認めます」

俺と乃木は日本の歴史が動いた瞬間を体験した。

「乃愛ちゃん!決定したよ!やった!」

俺は乃木に頭を下げた。

「真理亜。こんなおてんば娘ですがよろしくお願いします」

「はい。あなた」

乃木はそう言うと俺とベッドに倒れて互いに抱き合った。

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