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偏在の理想ボーイ幻覚の普通ガール  作者: キャボション
28/65

冷たい

ライブハウスは予想以上に席が埋まっており、俺と乃木が席に着いた頃には満席になっていた。乃木によると今日はテレビによく出てくるお笑いコンビが出るらしく、そのせいで混んでいるのだという。確かにそのお笑いコンビの名前はツッコミのほうが深夜番組の司会を務めているので聞いたことがある。丸顔の細い目をした男だ。

満席になってからしばらくして開始時刻になりステージの幕が開いた。ステージには若いコンビが立ってコントを始めた。

「いやねぇ、僕スパイなんですよ」

「え!そうなの?」

「そうそう。僕、レモンなんですよ!」

「いや、それはスッパイだろ !」

ツッコミ役の男は相方の頭を叩いた。

なんというか非常につまらない。俺の頭に浮かんだその言葉は観客たちの考えていた事と一致していたのか先程までざわついていた客席が一瞬にして静まりかえってしまった。

その数分後、幸か不幸かそのコンビのコントは終わり、コンビは逃げるようにステージから退場した。

「なんだか高校生がふざけてやるコントみたいだね」

乃木は興ざめするように言った。乃木のいう通り確かにあれはひどかった。しかしあのコンビ、どこかでみたことがある。

「乃木、あのふたりってどこかでみたことないか?」

すると乃木は耳元で「回収班のふたりだよ」と非常に小さな声で言った。

「確かにあいつらだな」

「でしょ?」

その後に今回のメインとなるコンビが出てきた。先程のコンビとは場数が違うのか普通に面白い。やはりテレビに出てくるくらいなのだから実力はあるのだろう。するとステージにひとりの男が乱入してきた。

「お前らのせいで俺はチャンスを無くしたんだ!」

男の手にはナイフが握られていた。人気コンビは明らかに怯えている。

「お、落ち着きましょうよ」

人気コンビのひとりは怯えながらもナイフ男を諭そうとした。

「黙れ!」

ナイフ男はナイフを振って人気コンビのひとりを切ろうとした。ナイフが体に当たることは無かったが服が切れた。そのせいで人気コンビのひとりは気を失ってしまった。

その時だ。ヒーロー登場!そう言わんばかりに回収班のふたりがステージに昇ってきた。

「おい、今すぐそのナイフを捨てろ」

落ち着いた口調だが非常に威圧感がある。ナイフ男はその口調に一瞬たじろいだ。彼らはそれを見逃さなかった。ひとりがナイフ男のナイフを握った手を蹴りナイフを奪い、それと同時にもうひとりがナイフ男に投げ技を放った。ナイフ男はそのまま動けなくなってしまった。

そしてしばらくして警察がきて男を傷害未遂の現行犯で逮捕した。回収班のふたりは警察官に「ご協力感謝致します」と敬礼されていた。

「あのふたりコンビネーションがすごいな」

「ねぇ」

俺と乃木は感心するばかりだった。

「乃愛ちゃん」

「なんだ?」

「もし私が殺されそうになったら乃愛ちゃんは助けてくれる?」

「多分助ける」

「どうして多分なの?」

「乃木は殺されそうになる前にそいつを殺すと思うからだ」

「そうかもしれないね」

乃木は可愛い笑顔をしていた。

翌日。

新聞を見てみると昨日のことが記事になっていた。

「新人コンビ、暴漢を成敗!」

シンプルな見出しだったが分かりやすかった。

「あのふたり今度テレビに出るらしいよ」

隣に座っている乃木は楽しそうだった。

「ワイドショー?」

「そうそう」

そんな会話をしているうちにあることに気がついた。いつの間にか乃木と同棲をしていたのだ。大概のことはいつの間にかだと俺は思った。





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