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領主さんちの次男坊です。  作者: 小さい飲兵衛
第1章 北の国から
30/50

安定の全裸待機


に…兄ちゃんのメガネ姿がメガ進化…メガネだけに…

グハッ!下らない!実にくだらないよ、俺!


漂う意識が回復する事にどうでもいい言葉が浮かんできては、霞の如く消えていく。

意識が現実のものだとハッキリすると共にカッと目を開く。


はい、来ました、安定の全裸マッチョ!

なぜ眼鏡美形からの安定の全裸マッチョなのでしょう…

息苦しくて煩わしい鼻に詰められていた綿を取りながら上体を起こし、いい笑顔のポールをじっと見つめます。

今日の俺は、昨日とは違います。

記憶も戻り、アダルトチックな危険にもあいました。

多少の恥ずかしさは我慢できます。

免疫ついて一皮むけた俺は、全裸マッチョな婚約者(仮)に一泡吹かせてやりますよ。


「目が覚めたようだな…」

「…ポール…俺ね…兄ちゃんに…ここを舐められたんだ…婚約者なんだから上書きしてくれるよね?」


頬を薄く染め、シャツの紐を解いて包帯を巻かれた首筋を露わにし、目を伏せて睫毛を震わせた。

ふふふ…やられっぱなしの初心な俺ではないのです。

きっとポールも慌てちゃうに決まって…

チラッと薄目でポールを見ると真面目な顔を近づけ、差し出した首筋に唇を押し当てようとしています。


待って待って!どどどどうしよう!突き飛ばして逃げる!?いや、待てよ…寸止めでからかうかもしれない!


考えがグルグルしている俺をよそに、包帯の巻かれていない耳の下に生暖かい感触と擽ったい様な少し切ないような痛み…ふにゃぁああ!これは…吸われてる!?


「ふあっ!ポールのエッチぃいい!」


ポールを突き飛ばそうと手を厚い胸板に置いて、腕を突っ張るように伸ばすが、当然ビクともしない。

それどころか、胸に置いた両手首を一纏めに握られてベッドに押し倒された。


「ポ…ポール…?」

「大人をからかう悪い子は…もっとエッチな目にあうぞ…」

《ポールは…起き抜けの俺に尻を噛まれたいみたいだね…》


ぬっとベッドの下から不機嫌MAXで顔を出したブルーノ。

モンスター感全開で大きな口を開き、ポールの一糸纏わぬ無防備な尻を齧り、尻から流血しながら痛々しい雄叫びを上げるポール。

その惨状を顔を真っ赤にしたまま俺が眺めているという何とも言えない光景。

後に変態尻から流血騒動と名付けられる。




《エルは、ポールに敵わないんだから変に煽っちゃダメ!》

「はい…反省してます…」

《ポールもエルの記憶が戻ったからと言ってアダルトな悪ふざけは禁止!》

「……コイツが誘ってきたのに…」


俺は着替えを終え、ポールは尻の手当てと着替えを終えてブルーノの前に二人で正座して反省会です。

昔の記憶でもブルーノは、しっかりしていたけど…話し方がとても子供っぽくてたどたどしかったのに…俺が転生しているうちに成長したんだなぁ…

なんとなくしみじみとブルーノを見つめてお説教を受けている俺をポールが大人げなく唇を尖らせて睨んできます。

記憶がなかったときは、ポールのこういうちょっとした行動も仕方ないなって感じで流せたのに…なんででしょう。

つい口調がきつくなってしまいます。


「…なに?」

「エルの誘いに乗ったせいで俺の可愛いお尻は血塗れになったんだが…」

「…俺は、首にエッチな痣を付けられたんだからお互い様でしょ。」

「俺は痛いけど、お前のは気持ち良かったんじゃないのか?」

「よし!表に出ろ!!!!」


正座から勢いよく立ち上がり、今迄だったら絶対に口にしない強気な発言が、自然と出てきてしまいます。

でも、ムッと来たんだからしょうがないよね。

気持ちいいって…セクハラだよ!とんでもないくらいのおじさん発言!


《懐かしいやり取りだね…ポール、エルの言葉で涙ぐむのやめて。懐かしくて泣いてるのか、可愛いエルに言われて性癖で泣いてるのか分からないから。》

「本当にお前は、毒を平気で吐くようになったな。」


ブルーノの言葉で感動を台無しにされたポールは、眉間に皺を深く刻んでしかめっ面になっている。

まったくこの程度で泣いちゃうんだから…ポールとブルーノの頭が丁度いい高さにあるので両手で撫でて笑いかけた。


「これから、アジュ達のフォローに行くから二人で仲良く朝食をとってね…あと…色々ごめんね。」


俺までジンッとして涙が出そうだったから誤魔化す様、二人のおでこにキスをして二人の顔を見ることなく足早に部屋を出た。

改めていうって恥ずかしいよね。

ここの所、毎日一緒に居たのにさ。


気持ちを切り替えようと長い廊下に出て、昨日覚えた地図を思い出していると暗がりの中で兄様と姉様が立っていた。

俺を待っていたようで、見つけるなり珍しく落ち着きない挙動不審な動きをしている。

そうだよね。

俺の記憶が戻ったってことは、俺の奴隷だった事実が甦る。

奴隷ってこと自体、二人には良い過去ではない。

ましてや、成り行きとはいえご主人様だ…もう、元のように接してはくれないかもしれない。


ポロッと涙が零れだしてしまった。

不安という感情が膨らんで、決壊したダムのように涙も嗚咽も止まらなくなり、その場で座り込んで力なく泣き続けた。

どうしよう。兄様も姉様もご主人様って言ってきたら…エルって呼んでくれなくなってたらどうしよう。


「どうしたんだ?ポールさんに、また全裸で嫌がらせをされたのかい?」

「叫び声が聞こえたんだけど…大丈夫?何があったか私達に話して?」


二人は、昨日兄ちゃんとアジュを怒鳴った時と何も変わっていなかった。

俺をちゃんと弟として見てくれている。

心配してくれる言葉が、とても嬉しくて泣き笑いになってしまったけど、両手を広げて強請った。


「兄様、姉様…ぎゅってして…」

「「エル!」」


ああ…ちゃんと兄弟だ。

いつもと変わらない。

うん、鼻血もね。

どこにも切り傷が無いのに、包帯には所々に赤いシミが広がっていくよ。


「エル…これは何?」

「これ?」


兄様が、青い顔をして震える指を首に当ててきた。

あ、ポールがつけたキスマーク…包帯で隠れないところに付けられたんだった!

反射的に首の痣を手で押さえ、抱き合っていた二人から距離を置いた。


「エル…兄様の質問に答えて?」

「姉様まで怖いよ…あの…これは…ふざけててね?」

「「で?」」


美形が凄んで近付いて来るってかなり迫力あるって、昨日兄ちゃんで学んだんだけど…

…ポール…お尻の傷が広がっても…愛してるぜ!

俺は、心の中でポールに敬礼をし、ありのままを二人に話すことにした。


「ポールに付けられた…」

「「……あんの変態騎士!!!!」」


二人が残像を残して消えた。

暗躍スキルってやっぱり凄いね。

ポール、文句は夜聞いてやるからな…生きろ!

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