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第一章 不思議な学園と個性的な生徒たち 4

「私のカードは…… 杖ですね」


 つまり、私は杖のクラスでこれから学んでいくという事になりますね。恵美さんはどこのクラスになったのでしょうか? 同じクラスだと、とても嬉しいです!

 だって、初めて会う私に、彼女は気さくに話しかけてきてくれて自分に仲良くしてくれた優しい人ですから、是非ともお友達になりたいと思ってますから。


 同じクラスだと良いですけど、例え違うクラスでも、その気持ちは変わりません。


「同じでありますようにー、同じでありますようにー」


 で、でも、同じクラスを願ってしまうのは仕方ないですよね? ね? 


 割と自分はくじ運が無いという、自慢にもならない悲しい特技を持っていると自負がありますから、心のどこかでは違うクラスだろうなーっと思っていたり……


 当たったらとびっきり嬉しいんですけど、あぁぁぁ、本当、不安です!


「終わりましたね…… では、杖のカードを引いた生徒達はこちらの灰音先生に付いて行って下さい」


 スノウ先生は、最後にカードを引いた生徒が自分の席に戻るのを確認すると、改めて私達を見渡してから一泊置いて、灰音先生に頷きます。


「杖の方は私に付いてきてくださいね~♪」


 スノウ先生に後を任された、灰音先生は立ち上がると、ゆっくりと挙手してのんびりと声掛けをしました。眼鏡をかけている彼女は、どこかほんわかした印象があり、灰音先生は頭に被っていたフードを外すとコスモスのような優しいピンクの色をした髪をおさげにしていたので、ますます癒され…… 柔らかいイメージが強くなりました。


 私は杖なので、彼女に付いていく為に立ち上がります。すると、何という事でしょう。願いが届いたというか運が良いというか、恵美さんも立ち上がってこちらを見るではありませんか!


 私は心から嬉しくなり、すぐに彼女の下へ駆け寄ります。


「恵美さんも杖だったのですね!」

「えぇ、アリスも一緒だなんて嬉しいわ!」

「私もです!」


 二人で手を握り合い喜びあっていると、恵美さんの隣に座っていた、彼女のお友達らしき着物の女の子も来ており、私に優しく微笑みかけてからゆっくりと頭を下げて挨拶をしてくれました。


「初めまして、貴女が恵美の言っていた例の面白い子ね」

「お、面白い?」


 一体、恵美さんは私の何を面白いと彼女に伝えたのでしょう、全く失礼な! あっ、もしかして例のしおり事件の事かな?


「そこの三人は杖の方~?」


 灰音先生は立ち話をしてしまっている私達に、おずおずと近づいて問いかけてきて、私は慌てて彼女に謝ります。


「お話してご、ごめんなさい!」

「仲の良いお友達が早速出来たみたいで、なんだか私は凄く嬉しいわ~。だけど、お話は後にしましょうね~♪」


 彼女はほがらかに口元に手を当てながら言うと、それから、「では、皆様付いてきてくださ~い」っと声を掛けて、灰音先生は杖の皆が自分へ注目したのを確認すると、何故か拳を上げて、えいっえいっおー! っと言わんばかりに拳を上下に動かした後ゆっくりと歩き始めました。


 うーん、不思議な先生です。


 そんなこんなで数分後。


 絵画が沢山並べられた美術館っぽい廊下を抜け、その先のどこまで続いているか分からないようなとにかく長い螺旋階段を上り、そこから今度は悪魔やら魔女やらの石像が並んでいる廊下を歩いて教室棟へ辿り着きました。


 そして、その教室棟を歩き、ようやく杖の教室へ到着します。


 私は教室もきっと、魔法学園というのだからへんてこりんな様相をしているのだろうと思い、期待半分不安半分で中を見たのですが、教室は割と……


「普通……」

「普通だわ」

「普通ねー」


 私と恵美さんと着物の女の子が一緒に同じ事を呟いてしまうぐらい、普通でした。


 教室は教壇は勿論、教壇の後ろにはチョークで図や文字を書いたりする黒板。それに、生徒分の木製の机と椅子が均等に置かれていて、その後ろの隅にちょこんっとロッカーが置かれてるぐらいでした。

 

「もしかしたら、座ったら魔法陣が浮かんで机や椅子が変形するのかも?」


 着物の女の子は、人差し指を小さな顎に当てて少し考えながら言葉にすると、恵美さんは彼女へ小首を傾げて尋ねました。


「例えば?」

「魔法薬を作る授業とかだったら、机がそれに合わせて魔法釜になるとか!」


 彼女は両手をパンっと合わせるや答えを閃いた感じで、目をキラキラ光らせて自信満々に言葉を返します。


「確かに一理ありそうね、実際そういう魔法道具はあったわけだし」

「でしょでしょ♪」

「もしそうなら、何だかワクワクしますね! えーっと…… 」


 私は二人の会話に混ざるも着物の女の子の名前を聞いてないので、彼女の名前が分からないために言葉がつっかえてしまう。すると、彼女はそんな私を察してくれたのか、にっこりと笑うと、私に手を差し出して自己紹介をしてくれました。


「私の名前は竹中かぐやよ、よろしくね♪」

「かぐやさんですね、ありがとうございます! はい、こちらこそよろしくお願いします!」


 私はかぐやさんの差し出してくれた手を両手で握り、彼女へ笑顔で挨拶を返します。


 それから少しして、灰音先生は一度咳払いをした後、口を開きました。


「それでは早速、皆に自由に座って貰いたい~…… ところなのですけど、これから一年間共に協力しながら学んでいく班を作り、それから班に分かれてから座って頂きます~♪」


 なんと、この学園にも普通の学校と同じように班分けというのがあるみたいでした。ま、まさか。また同じようなくじ引き的ーなのような奴でしょうか?


「書く六人一班に分かれて貰うのですが、別にクラス分けみたいにカードとかくじとか組み分けローブ的な物は、私では使わないので、仲の良い人同士で班を作っちゃってくださ~い♪」


 彼女のそんな女神的な、慈愛に満ち満ちた声を聞いて、私は彼女を心の底から感謝します。灰音先生…… 何かあったとしても、私は必ず貴女に従います!!


「こっちはもう既に二人確保済みだから、これは楽勝ね♪」


 恵美さんは私とかぐやさんをウインクして、自信満々に言い放ち、私とかぐやさんは少しだけくすりっと笑いました。


「確かに私達はもう決まったも同然として…… 残りの三人はどうするの?」

「そこよねー、こうなったらクラスの全員に声を掛けまくるとかはどうかしら?」

「それしか無いわね」

「じゃあ、手分けして勧誘しましょう」


 早速、私達は三人の確保っという目的が出来たところですぐに、ミッションを開始しました。


 まず私が狙うのは、あの笛を持ってらっしゃる、知的で優美な雰囲気のある緑髪の女の子! 


 私はそうと決まるとゆっくりと彼女の下へ行き、レッツ☆会話します。


「こんにちはー♪」

「はい?」

「もし、班決めで困っているなら私達のところに…… 」

「ごめんなさい、既に先約が居るので…… 」

「そ、そうなのですか? あ、でも、まだ三人分の余りはあるので、そちらも三人だけなら…… 」

「私を入れて六人なの」


 伏義アリス、轟沈しました。

 

 少し粘ってみてみたけど、もう相手に班が出来ているなら、不可能ですよね…… ぐはっ


 私は彼女にごめんなさいっと謝りを入れて離れると、折れそうになる心を再び奮起させて次のターゲットに狙いを定めます。


 次は…… あの、黒髪をショートにした、魔法使いというよりは剣士っぽい風格のあるお姉様!


「すまない、私も丁度今出来た所なんだ…… 本当にすまない」

「あっ、いえっ、こちらこそ気づかずに声を掛けてしまってごめんなさい……」


 駄目でした。


 意外にも皆、班が出来るの早くないですか? 私の所はまだなのですけど! 有利だった筈なのに! 


「あのぅ…… す、すみません…… 」


 私は心の中でめいいっぱい叫んでいると、突然隣から声を掛けられて、すぐに反応しました。


「どうしましたか!? もしかして、班希望ですか!? ですか!?」

「ひっ!」


 私の大きな声に声を掛けてくれた女の子は、ビクッと驚いてしまい、若干涙目になっていたのですぐに私はハイになっていたテンションを落として、彼女に謝り倒します。


「ごめんなさい、ごめんなさい、驚かせて本当にごめんなさい! あまり見つからなくてつい興奮して……」

「い、いえっ…… あ、あたし…… も、みみ、見つからないし、き、気持ちは、わかり、ますから。はいっ……」


 赤い頭巾を頭に被り、赤茶のエプロンドレスを着た可愛らしい彼女は、私がそんなに恐ろしかったのでしょうか、かなりビクビク震えていまして、涙目で口をわななかせながらも頑張って私に話しかけてくれました。 本当、申し訳ない気持ちでいっぱいです。


「あ、あの…… よよ、良かったら…… あ、あう。あ、あたし…… を、入れてもらっても…… いい、ですか?」

「是非お願いします」


 私は待ちに待っていた言葉を彼女から聞けて、表向きには冷静に、だけど心の中では狂喜乱舞しながら赤い頭巾を被った女の子の手を取り、固く握手するのでした。


「あ、あの…… あたし、赤井楓…… っと、言います…… よ、よろしくです」


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