第一章 不思議な学園と個性的な生徒たち 3
なんと入学式場は、あのお城…… 校舎? からお隣にある植物園っぽい場所の、綺麗な噴水広場を抜けて、更に進んだ森林の中に、何故か扉がありそこを開いた先でした。結構…… 遠いです。
これは地図が無いと本当に迷いますし、心底恵美さんに出会えて良かったと思いました。同時に、あのお姉ちゃんにはお話したい事が出来ました。えぇ、とっても。
入学式場はお茶会とかするような、大広間の真ん中に丸い大きなテーブルが一つ置かれており、そこに沢山のお茶菓子や花瓶などの小物類、そして今回の新入生全員分であろう椅子と、一枚の紙が均等に並べられていました。既に、何人かこの場所に来ており、式が始まるまでゆったりとお茶菓子を食べたりしながらくつろいでいます。
本当にお茶会みたいですね……
「割と余裕な時間で来たわね」
「そうですね…… はぁぁ、距離が距離だけに疲れました……」
私は目的の場所に吐いて、ほっと一安心した瞬間。私は一気に身体から疲れを感じて、溜息交じりに呟きました。
「えっ、そう? あー、確かにそんな重そうなカバンを持ってるからねー」
「恵美さんは荷物とかは?」
「私の荷物はこれだけよ♪」
彼女はそう言うと、シャツのポケットから小さな液体の入った瓶を取り出し、私に見せます。
「ええっ? それだけで…… 大丈夫なのですか?」
「ふふっ、まあその秘密は後でっという事で♪ それじゃあね」
恵美さんは私にそうにっこりと笑いながら言い、それから私から離れて、近くの椅子へと座りに行きました。
「あっ……」
本当はお礼をしたかったのですが、彼女はきっとお知り合いなのでしょう、着物の和風な女の子(しかも、その人も美少女!)の隣に座っており、何か二人でお話合いをしていました。
流石に初対面ですし、お邪魔するわけにはいきませんよね……
私は仕方なく、彼女とは対面側にある椅子へと歩くとその椅子に座り、ほっと一息入れます。
それにしても、本当にあの瓶何だったのかな…… 魔法の道具?
秘密は後で…… っと言ってたから、きっと教えてくれるのでしょうけど、うぅぅ、凄く気になります! 自分の中の知的好奇心がさっきから胸の奥からうずうずして、彼女へ今すぐにでも聞きたいぐらいです!
そんなこんなで数分後。
生徒も大分集まってきて、部屋がワイワイガヤガヤと賑やかになってきた頃。先生らしきローブを着ている数人の大人達が扉を開けて部屋に入り、生徒達の話し声がピタリっと止まりました。
「それでは皆様、これより私立メルヘン魔法学園の入学式を執り行います。全員ご起立くださいませ」
先生の一人であろう、どことなく知的だけど冷たいイメージを受ける冷静な女性の声に、私含めて弾かれたように立ち上がります。
「では、校長先生、お願い致します」
「うむ、任された!」
校長が呼ばれた筈なのに、活発そうな一人の少女らしき鈴のように綺麗な高い声が聞こえ、私は首を傾げます。すると、さっきの声の主らしき私達と同年代に近い、茶髪をポニーテールにした可愛らしい少女が立ち上がり、私は驚きました。当然、周りもざわめき始めます。
「これこれ、そう驚くで無い。わしの名前はインゲル! 本当は年老いたおばあちゃんだったんじゃが……」
「えーっと、インゲル様はきっと老いからのボケでしょうか、朝食のパンを食べようとしたらお手が滑ってパンを落とし、そしてそれを踏んでしまわれて……」
少女な校長の後に続いて、おっとりしてそうな眼鏡の女性がさりげなくひどいフォローをしました。
「老いとはなんじゃ老いとは! 合ってるけども」
「踏んだ拍子に、自身の魔力が暴走、こんな十代の身体になってしまわれたのです」
「その暴走の際に何やら闇の世界に繋がったみたいでのう、向こうの悪魔とやらと雑談しておったらいつの間にかこんな事に……」
あの、色々ツッコミ所がありすぎて何をどこからツッコんで良いのか分からないのですけど。取りあえず一言言えることは校長が何か失敗して、年齢が十代まで下がったという世の女性達が羨むような体験をしたのだけは分かりました! っていうか、闇の世界の悪魔と雑談って……
「ああ、そうそう。後カモメに変化出来るようになった」
「「「心底どうでもいいわ!!!」」」
校長の呑気な笑顔と放たれたどうでもいい言葉に、私含めて生徒達はつい大きな声で彼女にツッコんでしまいました。だけど、彼女はどこ吹く風で、言葉を続けます。
「っとまあ、こんな感じで魔法の取り扱いにはくれぐれも注意するのじゃ。分かったな、皆の衆」
「魔法は極めて便利が良い能力ではございます。しかし、それを誤って使ったり、このような馬…… 失敗をしてしまいますと、こういう大きな悲劇が起こりかねませんのでくれぐれも気を付けて、魔法学を学ばれるように」
今までの流れは学校名物の校長挨拶だったのね…… さりげなくそれっぽくまとめやがりました。ちなみに、私はこの怒涛のボケに精神はすり減り、若干荒んでるっぽくなってます。えぇ。口にはしませんが、はい。
「それでは次は教頭の私、スノウから少しお話を」
あの校長に馬鹿と言いかけた教頭のスノウ先生は、私達の顔を細長い瞳を動かしてそれぞれ見回すとゆっくりと口を開きました。
「貴女達は今日からこの学園で三年間の間過ごして頂きます。まず、この学園は百も承知でしょうが、普通の人間が通うようなただの学校、公共施設ではございません。それゆえに危険や困難がたくさん貴女達を待ち受けることになるでしょう」
先程の校長先生のボケボケな調子から一転し、極めて真面目で重みのある彼女の言葉に、私は再び身体に緊張が走りだし、グッと拳を握ります。
「ですが、この学園で暮らした事は一生記憶に残り、いつまでも忘れる事のない三年間だったと保証出来るでしょう。何か困った事があれば私達に相談して頂ければ出来る限りお力沿えもします。ですので、どうかこの三年間。貴女達が有意義に充実した時を過ごして頂ければとこの馬…… 校長は勿論の事、私や教師一同は心から願います」
あのどことなく冷たいイメージのあるスノウ教頭先生から、私達に思いを込めた温かい言葉を掛けてもらい、私は彼女が見た目や口調とは正反対な心の優しい、生徒想いな教師だと分かって、今まで見た目だけで恐そうな人だと思っていた自分を心から恥じました。人は見た目によらないとは良く聞く言葉ですけど、本当の事だったのですね……
「私からは以上です。それでは早速クラス分けに入りたいと思います」
スノウ教頭先生はそう言うと、ローブの裾からカードを取り出しました。
「このカードは杖、帽子、ドクロの三種類に分かれており、生徒の数六十枚分用意しております。これを一人一枚ずつ引いて頂き、その引いたカードの種類と同じクラスに分かれて頂きます」
彼女は説明を終えると、机にカードの山札を置くのでした。
「それでは、お一人ずつお取りくださいませ」




