第一章 不思議な学園と個性的な生徒たち 2
そんなこんなで、私は喉をガラガラにしながらも学園へと何とか辿り着けました……
正直これに慣れれるのかどうか、疑問しかありませんが、でも慣れるしか無いですよね…… 使う機会は必ず訪れるでしょうし。
「ようこそ、アリス。私達の学園へ」
お姉ちゃんは西洋にあるようなお城の厳かな門の前に、踊るようにして手を広げるとそう私へ声を掛けました。
その姿は本当に、魔法使いに見えて、自分が今から普通の日常から非日常的な毎日をこれから過ごしていくのだろうと、彼女を見て改めて思い、気を引き締めます。
だけども……
「それじゃあ、私は今から用事で居ないから後はよろしく~♪」
「え゛?」
「じゃあね~!」
ちょっとちょっと、お姉ちゃん!? いきなりもう私を放置ですか!?? 今こそ貴女のお力が必要なのにぃぃぃぃぃぃぃぃ!!
そんな私の心の叫びは聞こえなかったのでしょう、お姉ちゃんは私に背中を見せ、パタパタパターっと、軽やかに学園へ走っていくのでした。
「あぁぁぁぁぁ、行って…… しまった」
ま、まあ良いでしょう。恐らく魔法学園って行っても、普通の学校と同じぐらいの広さで、きっと入学式の会場も分かりやすい体育館みたいなところで……
そう思いながら門を潜り、バラや百合の花等等が沢山咲いてある植物園みたいな庭を抜けると、目の前でドンッとゲームやフィクション、それこそヨーロッパでしかお目に掛かれないような大きなお城が建っており、私は口を開けてポカーンっと立ち尽くします。
「アリサお姉ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!」
私はありったけの怒りを込めて叫ぶと、ぜーはーぜーはーっと息切れしながら肩を上下させ、一呼吸。うん、割と気持ちがすっきりしました。おかげで周りからドン引きされたり、変な子を見るような感じで見られ、そればかりか全く状況は進展しません。本当に本当にありがとうございます。
「取りあえず…… 歩くしか無いでしょうね……」
私は奇妙なものを見る視線を浴び、少し恥ずかしさで顔を赤くしつつ、学園の大きな入り口扉を開けます。扉は私の身長の倍はあるのに、ノブはかなり柔らかかったので、すぐに開くことが出来ました。
丁度その時。
「ねぇ、そこの貴女」
「はい?」
突然、後ろから女の子らしき綺麗な声に呼び止められ、私は振り返ります。
すると、そこには私とは少し色素の薄い、けれども綺麗なシルクのような銀に近い金髪に、汚れのない真水のような水色の瞳をした白い肌の正に美少女!っと体現するかのような女の子が立っており、私はドキッとしました。
「もしかして新入生?」
「はい、そうですけど」
「良かった、実は私もなの。あ、いきなりで名前を言ってなかったわね。私は涼波恵美。貴女と同じで今日からここの生徒になるの。よろしくね」
彼女、涼波恵美さんに丁寧に挨拶され、私もすぐに慌てて自己紹介をします。
「はい! えっと、私の名前は伏義アリスです。恵美さんと同じで今日からここの生徒になります、よろしくお願いします!」
「伏義アリス…… ふふっ、良い名前ね」
「ありがとうございます、恵美さんもとても素晴らしい名前ですし、雰囲気もとっても美しいお姉さんみたいですよ!」
「あ、ありがとう。あまり言われた事無いから少し照れちゃうわね」
「えっ? そうなのですか?」
「お姉さんっというより、お人形さんって言われやすかったわね、えぇ」
確かに言われてみれば、綺麗なお人形さんみたいに可愛くて美しい感じがします。でも、足とかスラッとしてるし、身長は自分より高いから、私はお姉さんみたいに思えました。
「ふむふむっ、でもお人形さんという肩書はこれで消える事になるかもね、だって、私の前の前にこんな可愛らしいお人形さんが居るのだから」
彼女はウインクをしながら、そう私を褒め返してくれて、私は少し照れくさくなってポリポリっと指で頬を掻きながら恵美さんに感謝します。
「は、はぁ。ありがとうございます」
「っとっとっと、つい話が脱線してしまったわ、見たところアリスは入学式がどこであるか分かってないけど…… しおりは持ってる?」
「しおりですか? はいっ、勿論です」
私は持っていた重たいカバンを地面に下ろし、カバンを開いて中に入っているしおりを取り出して、彼女へ見せました。
「しおりに普通は地図が書いてあるはずなんだけど……」
「えっ?」
「良く読んだ?」
「ちょっとお待ちを」
私は前日にかなりしおりをくまなく読んでいた筈です。しかし、地図らしきページなんて無かったような…… でも、恵美さんが嘘を吐く筈ありません。もしかしたら私の見落としかも。
そう思い、ペラペラページをめくっていき、一つ一つ丁寧に見ます。横から恵美さんが覗いて、「ほら、このページよ」っと地図のページを指して教えてくれました。
だけども……
そのページは白紙で、何かが書かれている跡が全くありません。
私は不思議に思い、小首を傾げながら彼女に問いかけました。
「あれれ、何も描かれてませんよ?」
「そんな事は無い筈なのだけど…… アリスはこの学園へ特に何も無く来れた…… わよね?」
「は、はい」
「普通なら素質があれば、自分の魔力と反応して地図が浮き出てくる仕組みの筈なのだけど。どうしてかしら?」
「もしかして、このしおりに何か不具合が?」
「まっさかー、機械じゃ無いのだからそんな事あるはず無いじゃない」
「ですよねー」
「まあいいわ、取りあえずこの事は後回しにして、早く行かないと遅刻しちゃうわ。私に付いてきて、アリス」
恵美さんはそう言うと、私に笑顔で手を伸ばし、私の手首を掴まえます。
「うわっ」
「さぁ、少しはしたないけど走るわよー」
そして、恵美さんは少し楽しそうに駆け足で走り、私も彼女に連られて走り出しました。最初に見た時はお嬢様って印象でしたけど、なかなかに恵美さんは活発な女の子だったのですね。
そう思うと、少しだけ気持ちも軽くなり、私も何だか楽しくなってきました。
彼女と入学式のある場所へ走りながら、私は心の中で、もしクラス分けがあるならば、私は彼女と同じがいいなーっと心の中で思うのでした。