014.Speaking Louder Than Before<ピー丼大盛り、丸五追加で!>
マリーが飲食店を利用する場合訪問前の根回しが必須であるが、飛び込みで訪問しても問題無い貴重な店も何軒か存在する。
メンバーがイケブクロに来た時に頻繁に利用するその中華料理店は、東口商店街の一角にある小さな雑居ビルで営業している。
その店は近隣の餃子専門店と同じでジャンボサイズの餃子が売りの繁盛店だが、深皿のご飯に中華餡を載せた丼メニューも評判が高い。
丼メニューは厨房にオーダーが入ってから提供されるまでがスピーディーで、中華用コンロの大火力を巧みに使った調理は食材の旨さを決して損なわない。
熱々の中華餡が食欲を限りなく刺激するそのメニュー達は、野菜はあくまでも火が通り過ぎず味付けも濃い目でとてもご飯が進む逸品揃いなのである。
ランチタイムの喧騒が過ぎた時間にこの店を訪れたマリーとユウは、わざわざ狭い一階のカウンター席の隅に座っていた。
二階の四人がけのテーブルは居心地が良いが、わざわざ狭い席を選ぶ理由が二人には存在する。
一階の客席からは料理を受け渡しする大きな窓越しに、厨房の様子がしっかりと見えるのである。
最初に注文したメニューは席についてから5分も経たないうちに目の前に置かれた。マリーは肉ピーマン丼の大盛りと餃子、ユウは酢豚丼大盛りと餃子である。
ユウが微妙な火の通り加減のタケノコを味わっていると、レンゲを使って食べていたマリーからの追加注文が厨房に向かって直接発せられる。
「ピー丼大盛り、丸五追加で!」
店員さんだけに通じる符丁だが、マリーは何度か通っていて自然に覚えてしまったらしい。
フロアに常駐している店員さんは、マリーの勝手な掛け声に嫌な表情一つ見せずに伝票にオーダーを書き足している。
厨房に居た店員さんはマリーの愛らしい掛け声に相好を崩しながら、カッコンカッコンと鮮やかな手並みで中華鍋を振っている。
どうやらこの店に何度か通っているうちに、マリーの顔は店員さん達にしっかりと覚えられていた様である。
追加のピーマン丼大盛りと餃子も僅か数分で提供され、マリーは餡かけの熱々をレンゲでかき込む。
細切りピーマンと玉葱に絡みつく旨みの強い中華餡と豚肉から出てくる肉汁の味、餡が染み込んで具材を包み込む大盛りの白ご飯。
ユウが追加した固焼きそばを食べ終えるまでに、マリーは都合7回丼メニューと餃子のお代わりを繰り返しやっと満足した様だ。
注文してあったお土産の生餃子を山のように抱えて、ユウはマリーと一緒に店を出る。
店員さん達が出がけにかけてくれる声も、とても清々しく聞こえる。
気兼ね無く注文をして、美味しいものを好きなだけ直ぐに食べられるごく当たり前の事がとても嬉しい。
「また来ようね」
外食では滅多に見られないマリーの満足そうな表情は、普段から近所の飲食店の根回しに忙しいユウの心もほっこりと暖かくしてくれる。
決して高級店では無いガッツリ系の店なのに、ニホンにはこうして心地よく利用できる店がそこかしこに沢山ある。
Congohトーキョーのメンバーが、ニホンを高く評価する理由はこんな所にもあるのかも知れないと思わず考えてしまうユウなのであった。
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