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女子高校生が小さな眠っている男の子を抱っこしていても警察に通報されないフードコート最強。

やっぱり密会にはフードコートなのよ。

だって誰も他人に興味持ってないもん。

だからソファに座った時小っちゃかった紅葉の手をした男の子が三十分ほどして自販機よりでっかいイケメンになったとしても誰も驚かない騒がない。


「おはよう。大丈夫?」


「ああ」


「ああじゃないわよ。なっちゃんが運んでやったんだからね。感謝しなさいよ。ホントにもう、突然寝ちゃうんだから」


「ありがとう。悪かった」


「何か食べる?」


「ここさっき来たフードコートか?」


「そう。このソファ席は特に目立たないからちょうどいいでしょ」


「ああ。助かった」


「何か食べたら?私はそこのラーメン食べたよ」


「買って来る」


「いきなり立てる?」


「大丈夫だ」


佐倉君は天ぷらうどんを携え戻ってきた。

エビが大きい、羨ましい。

大きくなった彼と並んで座っているのは何だか落ち着かないから私は佐倉君の向かいのソファに移動する。


「悪かった」


「何が?」


「面白くなかっただろ?地味すぎて」


「ううん。面白かったよ。正直何にも想像してなかったから地味だとも思わなかった」


「暑い中付き合わせたのに大して面白くもないものを見せて悪かったな」


「何よイケオ。殊勝じゃないの。どうしちゃったわけ?別人?」


「本人だ」


「えっと、面白かったよ。本当に。来て良かった」


「ホントにか?」


「うん。夏休みの思い出ができたよ。多分もう何も起こらないから今年の夏佐倉君と電車乗ってお出かけしたなって、夏休み唯一の思い出として思い出すと思う。小さくなった佐倉君可愛かったし」


「そうね。あれだけでお釣り来るわね。少なくとも元は取れたわ」


「除霊は嫌がられることが多い。長いこと一緒に暮らしていると情もわくし、生活に組み込まれていくから悪霊になっても一緒にいたがる。竹中さんが言ったように憑りついた人間の身体を乗っ取って代わりに働きに行ったりして本人のように振る舞っていた悪霊もいっぱいいたし、母親が出て行ってしまった家で残された子供を育てていた幽霊もいたし、一人暮らしの老婆を看取ってやりたいからと除霊しないでくれと言う幽霊もいた」


「そうなんだ」


「でも俺は除霊する。放っておいて人間を食いだしたら取り返しがつかないから」


「まあ、そうだよね」


「セイラさんもいずれなる」


「ねえ、あのね。あの小っちゃくしたあの一つ目のお化けさんはピルケースに入れたけどどうするの?」


「所長の所へ持っていく」


「持って行ってどうするの?」


「さあ」


「さあって」


「所長が研究に使っている、らしい」


「えっと、知らないの?」


「ああ。よくは知らない。興味ないし」


「そうなんだ。あのね、悪霊って小さくしたら無害なの?」


「まあ限界まで小さくしたら何もできないし、踏みつぶしたら終わるし」


「そっか。悪霊になったってどうやったらわかるの?」


「顔が変わるからすぐにわかる」


「言動も変わる?」


「嫌、限界が来ないとそこまで変わらない。だから皆除霊して欲しいと言わない。このままでいいと言う」


「そう」


佐倉君はあっという間に天ぷらそばを平らげる。

私達は暫く無言で向かい合う。


「アイスでも食べるか?」


「うん」


「買って来る。サーティーワンでいいか?」


「じゃあ、ロッキーロード、カップで」


「了解」


私達はアイスを食べてもお互い立ち上がる気になれずドーナツを食べ、マックフロートを飲んだ。


「ねえ、そろそろかえりましょうよぅ。あんまり遅くなると今日雨降るかも」


「そうなの?帰ろっか」


「ああ」


駅についてすぐ電車に乗った。

電車に乗ったけど何故か眠くならなくて窓際の席に座り窓から流れゆく景色を見ていた。

巨大スクリーンを独り占めにして見ているようで贅沢だと思った。

涼しくて電車の中は快適で窓から見える景色はとても綺麗で一生このままでもいいとすら思えた。

向かいに座る佐倉君も何も言わず窓の外を見ていた。

私達は同じものを見ていた。

でもきっと佐倉君の目には違うものが見えているんじゃないかと思う。

彼の視線で見た世界はどんな風に見えるんだろう、少し見てみたいと思った。

電車が着く。

改札を出て降りてゆけば少し物憂げな青い色、雲が集まってゆく。

確かに雨は降るのかもしれない。

私達は並んで歩く。

ああ、今日が終わってしまう。


「あのね、佐倉君、除霊のことなんだけど」


「ああ」


「もしセイラちゃんが悪霊化しちゃったらね」


「なっちゃん」


「佐倉君が小型化して私に頂戴」


「は?」


「あのね、だからね。小型化したセイラちゃんが欲しいの」


「嫌、悪霊」


「だって意思の疎通はできるんでしょ?小型化したら人間をバリバリ食べるなんてできないじゃない?」


「その前にあんたがもう寝たきりになってると思うぞ」


「それはこれから考えるよ。私やっぱりセイラちゃんとずっと一緒にいたい」


「なっちゃん♡」


「だからそうなったら小型化して。できればシルバニアファミリーくらいの大きさで」


「むちゃくちゃ言うなあんた」


「うん。ごめんね。どっちかって言うと今日希望もらっちゃったよ。佐倉君の能力で」


佐倉君はやれやれといった顔をする。

無表情なのに何となくわかる、不思議。


「化け物になるぞ。こんなに綺麗なのに。それでもいいのか?」


「どんなだってセイラちゃんなら可愛いよ。小さくなったらもっと可愛いよ」


「セイラさんはそれでいいのか?その姿自慢だろう?」


「別にどうってことないわよ。なっちゃんの傍にいられない方が地獄でしょう?」


「どんな姿になっても一緒にいて欲しいって結構残酷なこと言ってると思うが」


「そんななっちゃんも大好きなの。私の存在する理由なの。問題ないわ。ノープロブレム!!一生ついていくし、離れないわ」


「その前に睡眠問題が深刻だろ。間違いなく働けなくなるぞ」


「稼ぎのいい旦那を捕まえたらいいのよ。簡単でしょ。なっちゃんならできるわ。世界一可愛いもの」


「それはないけど、何とかなるんじゃないかなぁ」


「なっちゃん前向き」


「後ろ向いてもしょうがないからね」


「それはそうだな。まあそのことは追々。今結論出さなくてもいいだろ」


「あら、変わったわねあんた。今すぐじょれいーって剣幕だったのに」


「というか、単純に眠い」


「もうさっさと帰りなさいよ。すっとこどっこい」


「うん。お家帰ってちゃんと寝て」


「家まで送って」


「いいわよ。私がいるんだから」


「うん。それにスーパー寄ってくから」


「じゃあスーパーまで」


「何てしつこいの」


「佐倉君お家どっちなの?」


「駅の向こう」


「もうここでいいよ。今日は楽しかったよ。連れて行ってくれてありがとう」


「思ってた以上に地味だっただろ。無理しなくていい」


「そんなことないよ。出かけられて嬉しかった。電車から見る景色が綺麗で寝ちゃうの勿体なかったもん。歩いているだけで知らない街って面白いんだね。知らなかった。ありがとう」


「なっちゃんはお世辞なんて言わないわよ。言う必要ないし」


「じゃあまた見たいと思うか?」


「うん」


「そうか」


「うん、じゃあね。ゆっくり休んで」


「ああ、またな」


「じゃあねイケオ。ちゃんと食べてしっかり寝なさいよ」


「ああ」


「じゃあ、またね、バイバイ」


私は信号を渡り手を振った。

今までもこんな風に手を振り誰かを見送ったことがあったのだろうか。

また私は彼に手を振ることができるのだろうか。

夜になると雨は降り続けて、この雨が今日という一日を全て洗い流してしまって明日に何も持っていけないんじゃないかと思い、目を瞑るのを少しだけ躊躇した。





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