愛情を向けるには
ベルが難しい表情をしながら、うーんと唸っていた。セインとのやり取りの中で、いろいろな状況を考えているようだった。
「仮にリーリヤ様の失踪が、エリーゼ嬢に非がある場合、どうなるのですか?」
「……そうだね、考えられることは、侯爵令嬢の誘拐による罪があるだろう。エリーゼ嬢は、学生の間なら、未成年として扱われるから、罰を受けるのは男爵家となる」
「えっ? 男爵家がですか?」
「もちろんだよ。未成年が何かことを起こすことは難しい、親の指示で動いたとなるんだ」
「……なるほど」
ベルが、これまでの経緯や状況の整理をしながら聞いているようで、何度も頷く。
「学園卒業間際だから、判断能力がエリーゼ嬢にもあると、僕は考える。もし、仮にエリーゼ嬢がリーリヤ嬢の失踪事件に関わっているなら、男爵と同罪となる方向で話を進めるように手を打つことになるけどね」
「その場合、妥当な処罰としては、どうなりますか?」
「爵位返還と財産没収あたりに落ち着くだろう。リーリヤ嬢が見つかって、証言をしたらだよ。虚偽の証言と謗られることもあるから、そのあたりは慎重にならざるを得ない。
でも、僕は、リーリヤ嬢が出てきてくれるなら、徹底的に調査をしてエリーゼ嬢ともにアンダルトも含め、公爵家にも責任を取らせるべきだと考えているよ」
「……セイン殿下」
いつもとは違い、好戦的に話をするセインに私もベルも驚いた。
……リーリヤは、私は、そこまでセイン殿下のお心に影響を与えたのですか? 私に、そこまで価値があるのですか?
アンダルトに『つまらない女』と言われたことが、胸にずっと引っかかっていた。長い時間を連れ添ってきたアンダルトが言うのだから本当にそうなのだろうと思っていた。
それなのに、セインは褒めてくれる。「リーリヤ嬢は……」と。とても心地よかった。無くしていた自信を少しずつ取り戻せて来ている気さえする。
「何はともあれ、リーリヤ嬢本人が、学園卒業までに出てきてくれないと……ね?」
ベルに笑いかけるセイン。
卒業までというのは、自身の婚約のこともあるからだろう。婚約者を差し置いて、私の手助けをすることはできない。
「……アンダルト様とは、」
「いろんなことが絡み合っているから、まだ、どうなるかはわからないけど、昨日言ったように、縁は切れたと思ってくれて構わない」
「アンダルト様とリーリヤ様との婚約が、再度決まることがあるならば、そのときはどうなさるのですか?」
「関係を見直さないといけないね。でも、そんなことはさせない。アンダルトよりいい伴侶を見つけるよう、全力でリーリヤ嬢を諭すよ!」
……セイン殿下、とても良い表情ですけど、今の私にはとても辛い言葉です。だって、私は……。
胸の前で、キュッと手を組み、見つめていたセインから視線を落とし俯いた。
私はやはり、セインのことを異性として好きになったようだ。他の誰かにセインの隣を渡したくない……そんなことまで考えるようになっていた。私自身にとても驚いたが、ここまで、大事にされていることを知れば、セインへ愛情を向けるには、時間が掛からなかった。
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