02 レイドボス、陥落 〈後編〉
「はぁっ!っはっ!」
悪夢から目覚めたように、タイヨウは息を切らせている。
「〈三途の海〉が見えた……。〈リバースセルフ〉積んでてよかったぁ……!」
彼女は自らの身体に〈自動蘇生呪文〉をかけていたらしい。
タイヨウはヨダレをたらし寝ぼけまなこで、あたりをキョロキョロと見渡した。
そして少女〈天泣ノ蒼龍〉と目を合わせた。
「ギャア!」
タイヨウは叫び、逃げるように床を転げまわった。
「起きたか……よかった……」
〈天泣ノ蒼龍〉は安堵の表情を浮かべ、タイヨウに近づく。
「はわわわわぁ!許してぇ!何でもするから……!」
腰の抜けたタイヨウは目を見開き、口をガタガタ揺らしながら命乞いの言葉を唱え始めた。
「何でもする?」
「ファンが許す範囲で……」
「ファン……?まぁいい、質問に答えてもらおうか」
「はい。なんなりと……」
◆
少女二人は闘技場の観客席まで移動して、横並びに座った。
石造りの、崩れかけた席だ。細かい石の破片が散らばっており、座り心地は悪い。
タイヨウは〈天泣ノ蒼龍〉から二メートルほど距離をとろうとした。
が、〈天泣ノ蒼龍〉は負けじと距離をつめた。
両者の距離は三センチ。
タイヨウの顔はひきつっていたが、両手人差し指をほほに当て、「アイドルスマイル!」とひとこと叫び、ぎこちない笑顔で表情を固め直した。
プルプルと全身が震えている。
〈天泣ノ蒼龍〉はタイヨウの顔・身体をジロジロとなめ回し、フードをめくったり、金属鎧をガンガン叩いたりした。
タイヨウはモモの上に手を重ねて、ジっと静止していた。
〈天泣ノ蒼龍〉の観察が終わると、静かな声でタイヨウに語りかけた。
「戦いに来わけではないようだな。装備が貧弱すぎる」
「すみません。へぃ。全部制作級です。へぃ……」
タイヨウの額から汗がしたたり落ちる。
「アイドル……といったな……。」
「へぃ……。アイドルやらせていただいとりやす……」
「なんだそのしゃべり方」
「敬語」
「……下手くそ。聞くに耐えん。やめよ」
「へぃ」
「しかし、アイドルな……。本当にそんな職業があるのか?」
「あるなんてもんじゃないわ!大人気!」
タイヨウの切り替えの早さに戸惑いながらも、〈天泣の蒼龍〉は質問をつづける。
「そうなのか……?」
「特に今年に入ってからの勢いはすごいわ!冒険者はそろいもそろって美男美女だから!来たばっかりの頃だと声が地球時代のままっていう問題があったけど、年末くらいになるとみんな見た目通りに声変わり。ちょっと見た目が気にいらなければ量産型の〈外見再決定ポーション〉飲めばいいし?そしたらもう、女がイケメンアイドルになるわ、男が美少女アイドルになるわ。とにかく大量発生よ!世はまさに〈アイドル戦国時代〉って感じ!」
「戦うのか?」
「〈戦争〉よ!みんなトップアイドルをめざしてがんばってるの!」
「冒険者同士の〈戦争〉か」
「冒険者だけじゃないわ。大地人だって参戦してる。強敵よ」
「……じゃあ……ドラゴンのアイドルも……?」
「いるいる!知らんけど!」
「本当か……?」
「いないなら、〈てんにゃくのあおりゅう〉様がやればいいんじゃない?」
「てんきゅ……〈レイン〉でよい」
「やらないの?かわいいのに。歌うまかったよ」
〈天泣の蒼龍〉は動揺した。
はたして生まれてから何年経ったかは忘れたが、確実に今初めて言われた言葉だった。
「そ、そうか……?」
少女レインは顔を隠すように、タイヨウから、中央の台へと目線を移し、スカートをギュっと握った。
「いや、しかし、我にはここで冒険者を待ち受けるという使命が……」
「ここで待ってても、誰も来ないと思うけど……」
「やっぱりそうか!?」
「そうね。セルデシアでも私たちくらいじゃない?」
「なぜ、お主らはここに来たのだ?」
「いまレインが見てる台、つまり"お立ち台”が目当てよ」
「あれ目当てか……あれにそんな価値があるのか」
「最初から言ってるでしょ。あの上で歌って踊ると、サブ職〈アイドル〉のレベルが上がるのよ。あそこで踊らせてもらうだけで、私たちは満足なの。ね、お願い。踊らせて!」
タイヨウはパンと手を合わせ、祈った。
「なるほどな。確かに、前にも〈そういう奴ら〉が来たことがある。しかし、言いにくいことだが……」
「だが?」
タイヨウは姿勢そのままに顔だけを上げた。
「だが、そいつらは全員が踊り終えた後も、我との戦闘をつづけていた」
「え、なんで?」
「我を倒さねば扉が開かないからな」
レインは入口の扉を指さした。
入室時に開いた両開きの金属扉は、既に堅く閉ざされていた。
「つまり、レインを倒さないと、この部屋から出れないってこと?」
「たぶんな」
「〈帰還呪文〉を使ってもダメ?」
「レイド戦中は使えない」
「……そうだっけ。あぁ〈帰還呪文〉だとミナミに行っちゃうかぁ……、明日のイズモの町でライブあるしなぁ」
「とにかくお主らは、我が戦った中でも文句なし、装備も戦術もダメダメ。我を倒すのは無理。あきらめて出直して来るのだ」
「私には時間がないのよ!!」
タイヨウは泣きながら、レインの両肩に手をかけブンブンとゆすった。
レインはおもむろに手を挙げる。
バケツをひっくり返したような雨が降った。
頭が冷え、我に帰ったタイヨウはレインのももに倒れ込み泣き出した。
「あの者たち、あの者たちって……。そりゃ〈キラキラ☆十二星〉に比べたら私なんてさ……ザコだけどさ……」
「〈キラキラ☆十二星〉?」
レインはそのワードに妙な引っかかりを覚えた。
「知らないの?さっき言ってた〈そういう奴ら〉の正式名称よ。伝説のアイドル冒険者グループ」
レインの脳裏に、再び〈華やかな冒険者集団〉の姿が浮かんだ。
ボヤボヤしているが、さっきよりは鮮明に浮かんだ気がした。
「そこの〈お立ち台〉で歌って踊って、〈銀河系アイドル〉になったっていう……。ほら、赤黒チェックのブレザーに、スカートはいて、ネクタイ締めて……」
〈華やかな冒険者集団〉の姿が、どんどんと鮮明いなっていく。
「くわしく聞いてもいいか?」
レインはタイヨウに言った。
◆
「あぁ!ピンク髪の!」
「そう!"てとらちゃん"ね」
タイヨウは〈キラキラ☆十二星〉について話してくれた。
十二人の伝説的アイドル。
〈精霊山〉や〈時の眠る島〉など、列島のあらゆる場所に置かれたお立ち台を次々と攻略していった猛者たちだ。
アイドルたちはレイドエリア〈アラガミ闘技場遺跡〉に置かれたお立ち台をクリアすべく、ユニット〈キラキラ☆十二星〉を結成。
十二人の親衛隊とともに見事お立ち台をクリアし、サブ職〈アイドル〉の最高の称号〈銀河系アイドル〉を手にしたという。
「レインはどの娘が好き?」
「一番右端の……」
「〈腕時計〉ちゃん?」
「そういう名前だった!かわいいよな!」
タイヨウはメンバー一人一人について語ってくれた。
抜群のカリスマ性とMCセンスを誇るリーダー〈てとら〉。
キレのあるダンスが話題になった〈腕時計〉。
後にリアルアイドルデビューをした〈かしりん@(*^-^*)ゞテヘヘ〉
「この曲は知ってる?
代打バッター代打バッター代打バッターイエス!♪」
「何だその曲!?」
タイヨウは曲についても教えてくれた。
我が知らない曲もたくさんあった。
「他にもないのか!もっと別の曲!」
「じゃあこれなんかどう?〜〜♪」
タイヨウは一番のお気に入り曲だという、〈Last☆Shine〉を披露してくれた。
〈キラキラ☆十二星〉の解散曲らしい。
「そうか、あの者らは解散してしまったのか……」
「もともとレイド用に組まれたユニットだったしね。私ね、あの人たちみたいになりたいって思ってアイドル始めたのよ」
「タイヨウは歌がうまいからな!きっとなれるぞ!」
「ありがとう。レインだってうまいじゃん。」
「え!?…………あぁ……うん……」
「さっき歌ってたの〈キラキラ☆十二星〉の〈みつけて☆シャイニングスター〉でしょ?レインの歌も聴かせてほしいな」
「えぇ…………うん……」
レインは席から立ち上がりどぎまぎしながらも、歌い出した。
窓を開けば♪
夜空広がる♪
ココロドキドキ♪
ヨゾラキラキラ♪
どこにあるの♪
わたしのシャイニングスター♪
さぁ!教えてホロスコープ……!♪
見られている緊張感と恥ずかしさから、か細い声しかでなかった。
こんなはずはない。
もっとうまく歌えるのにという気持ちが強まる。
しかしその気持ちが強まるほど、反比例するように、レインの声は小さくなっていった。
今夜はどしゃぶり♪
窓は閉じたまま♪
ココロドキドキ♪
ヨゾっ……ベッドゴロゴロ……♪
歌詞を間違えた……。
レインは頭が真っ白になった。
レインが歌を中断しようとした
シャイニングスター!♪
声の主は、タイヨウだった。
そして彼女はレインに目配せをする。
レインはそれを見て、うなずいた。
そして二人は同時に手を挙げ、叫んだ。
さぁ!教えてホロスコープ!♪♪
歌は三番に入る。
カーテンからもれる一筋の光♪♪
まぶたをこすり、窓を開ける♪♪
やっと見つけた♪♪
運命のシャイニングスター♪♪
その名はー♪♪
歌い終わり、レインは言いようの無い達成感に満たされた。
歌詞を全て知ることができたということももちろんある。
しかしそれ以上に、聞き手がいたこと、一緒に歌ってくれる者がいたことが、彼女の気持ちを大きく動かした。
もっともレインは、その気持ちの理由をうまく認識できていない。
ただただ、天井を仰ぎ見るだけであった。
◆
何時間が過ぎただろうか。
タイヨウが思い出したように叫んだ。
「マズい!そろそろ帰らないと!明日ライブに間に合わないわ!」
「帰るのか?」
レインは不安げな眼差しを注いだ。
「レインもライブに来てよ」
「無理だよ。我はレイドボスだ。ここからは出れないんだ。結界が張ってあるから」
「結界?結界なんて突きやぶりなさい!」
タイヨウはブンブンとシャドーパンチを繰り出しながら言った。
レインはうつむいたまま無言でいた。
ここで「無理言うな」と言葉を返せば、そのまま会話が終わってしまうような気がしたのだ。
レインは無意識的に口を開いた。
「タイヨウ、最後に一つだけ、いいか?」
「なに?」
正直、レインに話題は残っていなかった。
しかし時間を引き延ばしたい一心で、頭の中を必死に探った。
唯一見つかったのは、彼女が絶対に言うまいと思っていた話であった。
「その……お主はこう……、アイドルを育ててみたいな……とか思ったことはあるか?」
唐突な質問に少し戸惑った様子のタイヨウであったが、少し考えた上で口を開いた。
「あるわね」
タイヨウはそう言うと、ニっと口角をあげた。
「そ、そうか!…………」
しかし、その後の言葉が続かなかった。
真竜のプライドが、少女の決意を邪魔したのである。
「わ、我を……ア……ルに……する権利……じゃない……」
レインは声を出すのがやっとだった。
どういう言葉を使えば、自尊心を傷つけないのか、思案を重ねた。
「レイン!」
タイヨウはレインをジっと見つめた。
「な、なんだ!?」
「私のお願い。一つ聞いてくれない?」
「……?」
「今度またここに戦いに来ようと思ってんだけどさ、あのー……なんていうか……、その時はさ、……手加減してくれません?」
下卑た笑みを浮かべながらタイヨウは懇願した。
「冒険者のプライドはないのか!?」
「ないわよ!あるもんか!!いい!?アイドルってのはね!プライドをドブに捨てからスタートするのよ!」
タイヨウは逆ギレした。
が、すぐに我に帰り「ね、ね、お願い」と手を合わせ懇願を再開した。
レインは髪の毛をぐしゃぐしゃとかき乱す。
全てがバカらしくなった。
こんなやつに聞かれたって、何にも恥ずかしくはない。
「わかった……。じゃあ、こっちの願いも聞いてもらおうか」
「うん」
レインは息を深く吸い、タイヨウの手を強く握った。
「我をアイドルにしてくれ!お願いだ!」
◆
その直後のことである。
二人の間にポップアップが出現した。
----------------------------------------------------------------
クエスト「〈天泣ノ蒼龍〉をアイドルにせよ!」が発生しました。
受注しますか?
▶︎はい
いいえ
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タイヨウは思わず吹き出した。
「わざわざ書面で確認する!?」
レインとしても突然のことで、状況を理解できなかった。
不安な気持ちを押し殺そうと、タイヨウの手をより強く握った。
「や、約束だぞ!」
「わかった!痛いって!手を離して!このままだと選択できないから!」
レインはそっと手を離した。
タイヨウは、やれやれといった表情で右手を上げ、勢いよく「はい」をタップした。
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クエスト「〈天泣ノ蒼龍〉をアイドルにせよ!」を受注しました。
----------------------------------------------------------------
と表示される。
さらにつづけてー
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新たに〈天泣ノ蒼龍〉が仲間に加わりました!
----------------------------------------------------------------
と表示された。
「へぇー面白いわね。ドラゴンが仲間入りだって!」
タイヨウはポップアップを指さしながらレインの方を見た。
彼女は、床にうずくまっていた。
「レイン!?」
タイヨウはレインのもとにかけより背中をさすった。
レインは、肌に突き刺すような痛みを感じていた。
汗とホコリの混じった悪臭が、鼻腔の奥を刺激する。
さらに内蔵が小刻みに拡張と収縮を繰り返している。
感覚が、蘇る。
「寒い……臭い……お腹痛い……」
突如として、闘技場全体が大きく揺れ始めた。
タイヨウはうずくまるレインをかばいながら、あたりを見渡した。
そして入り口の扉が、金切り声を上げながら開いているのに気づいた。
「……?レイン、大丈夫!?」
タイヨウはレインに〈ヒール〉や〈キュア〉をかけた。
その効果もなく、彼女は息をするのもやっとの状態だったが、二、三分も経つと少しずつ落ち着きを取り戻していった。
そしてタイヨウに、食べ物をねだった。
タイヨウは〈お好みサンドイッチ〉を手渡す。
レインはそれをひと飲みした。
サンドイッチとは名ばかりの、ふやけた味のない煎餅であった。
「ふぅ……はぁ……あっ……味のあるやつはないのか……?」
レインは言った。
タイヨウからは「今は持ち合わせてない」と言われた。
彼女は心底残念な気持ちになった。
その後〈野菜ポトフ〉などをいくつか腹にいれると、ようやく息切れもおさまってきた。
「大丈夫?」
タイヨウは不安げにレインの顔をのぞき込み、ハンカチを彼女に手渡した。
「問題ない」
レインは受け取ったハンカチで、目や鼻を拭った。
「本当に?」
「大丈夫だと言ってるだろう!」
さっきまでの自身の醜態を隠すように、レインは強がった。
「なんかよく分からないけど、扉が開いたのよね」
「なぜ……?……タイヨウ、帰るのか?」
「そうね。またいつ扉が閉じるか分からないし」
タイヨウはそう言うと扉をまたいで中央闘技場から退出した。
背中がどんどんと小さくなっていく。
レインは扉の手前まで歩みを進めた。
あと一歩踏み出せば……。
しかし、我はレイドボス。
出れないんだ。
前方のタイヨウが、闇に呑まれていく。
もうしばらく会えないかと思うと胸がしめつけられる思いだった。
レインは、自身の鼓動が早まるのを感じた。
「タイヨウ!また来てくれるよな!?」
レインは叫ぶ。
するとタイヨウの歩みが止まった。
返事は無かったが、彼女はバっと振り返ると、レインの目の前まで走ってきた。
そして彼女の手をつかみ、大声で言った。
「レイン!やっぱり、一緒に行こうよ!」
レインは、自身の胸が大きく波打つのを感じた。
「無理だって……結界が……」
レインは引っ張るその腕に抵抗した。
「一人でこのダンジョン帰るの無理!怖い!」
そう言うとタイヨウは両手で彼女の腕を引っ張った。
タイヨウの真意を知ったレインは拍子抜けするとともに、少しの怒りを感じた。
「レイン、一緒に来て!それか今ここで私を殺して!そしたら入口までサクっと戻れるから!」
タイヨウは強く引っ張る。
「どっちもできるかぁ!」
レインも負けじと引っ張り返す。
「"仲間"でしょ!!??」
「結界があるんだよ!出れない!」
「うるさい!ぶち破れ!」
膠着状態の中で、口論は続いた。
ふと、レインの頭の中で一つの疑問が生じた。
なんで抵抗しているんだろう?
冒険者に力負けするのがイヤだから?
結界にぶち当たってブザマ晒すのが恥ずかしいから?
本当は、一緒に行きたいはずなのに。
そう思った刹那、レインの全身から、力が抜けていった。
「ギャ!」
いきなり力を抜いたことで、前方へと投げ出された。
彼女の下にはタイヨウがいた。
そしてその下には、通路の床があった。
「なんだ、やっぱ出れるじゃない!」
「えぇ?うぇえ?」
タイヨウは立ち上がると、戸惑い、ワタワタしているレインに再び手を差し伸べた。
「じゃ、一緒に行きましょ!」
レインは無言でうなずくと、彼女の手を、強く握った。
「…………。行けるとこまでは……ついて行くよ」
◆
ヤマセとイタチは〈アラガミ闘技場遺跡〉の入口前で野営を敷き、タイヨウの帰りを待っていた。
「やっぱ閉じこめられてるんスかねえ」
イタチはそわそわした様子で言う。
「そうじゃないですか?」
ヤマセはぶっきらぼうに返した。
「ちょっと探しに行ってくるっス」
イタチは中へ入っていった。
「あいかわらず短絡的だなあ。一人で行ってもモンスターにエサになるだけなのに」
ヤマセは〈お好みサンドイッチ〉をほおばりながら独り言を言った。
すると数秒後、イタチの悲鳴を上げながら帰ってきた。
ほれみたことかと思いイタチを見る。
「ドッドドドドドラドドドラ!」
イタチは〈アラガミ闘技場遺跡〉の入口を指さした。
「なんですか?ドラ?」
ヤマセは彼女が指さす方向を見た。
タイヨウが〈アラガミ闘技場遺跡〉の入り口から出てきた。
こっちに向かって大きく手を振っている。
「みんな待たせてごめん!ちょっといろいろあって…」
ヤマセは反射的に立ち上がり、カバンから急いでメモ帳とペンを取り出した。
「タイヨウさん、それ……」
「ヤマセP!イタチ!紹介するわ!新しい仲間よ!」
「アイドル候補生のレインだ!これから、よろしくな!」