エピソード12 「嘘偽りの魔女、ノウナ」
ノウナ...僕はずっとその言葉に聞き覚えがあった
「何処かで聞いたことがあるのだけどなぁ...」
そういえばノウナの本名聞いてなかったな...
というか、そもそもノウナっていう名前も本当か怪しいな...
そう思いながら、ふと"勇者の本"のほうへと目をやった
「勇者の本も手放さないといけなくなるかなぁ...」
ノウナとのダンジョン攻略だけでも、
生活キツキツだったからなぁ...
「ノウナ...勇者の本...」
「ッ!思い出した!そういえば勇者の本に書いてあったはずだ!」
僕は急いで勇者の本を手に取り、ノウナの言葉が書いてあるページを探した
「見つけた!えぇと..."嘘偽りの魔女"...どんな話だっけ」
僕はどんな話だったか思い出すため、本を最初から読み直した
「町外れの家で生まれたノウナは、貧しく、畑仕事ばかりの生活をしていた。
だが、15歳になったノウナがスキルを授かり時、見たこともない量の光に包まれ、ノウナを照らすように輝いた後、表示されたスキルは...
「大魔道師」!
S級スキルの最強レアスキル、大魔道師だったのだ。
そして、ノウナの大魔道師の噂は広まり、"最年少の魔女"と呼ばれ、一躍有名人となった。
その力は噂だけではなく、たった数ヶ月で、ダンジョン30階層を突破してしまった。
その背景には、国の人々からの期待、そして両親への負担を減らしたいという思いがあった。
しかし、そんな時期、両親が不治の病にかかってしまったのだ。
ノウナは「大魔道師」なんて肩書きを捨て、両親の看病に精一杯になっていた、そして、いろんな病院、医者の元へと掛けよったが...全て駄目だった。
どんな薬草や回復魔法、ポーションでも効果はなく、両親の未来は絶望的。そんな時、希望の光が差し込んだ。
名医と名乗るとある"医者"に...
ノウナは藁にもすがる思いで懇願した。
「お母さん、お父さんを、両親を助けてください!
お金ならたくさん出します!お願いします!」
そうやってノウナは必死に自分に出来ることを行った。
全財産も出し、名誉までも渡した。しかし、返ってきた言葉は希望を絶望へと変える一言だった。
「いままで"支援"ありがと笑、もう関わることはないから笑」
ノウナは頭が真っ白になった、意味が理解できず、聞き返す。
「りょ、両親は治せないのですか...?」
「は?笑、当たり前じゃん笑、不治の病って言ってんだろ」
この言葉でノウナの何かが切れた、みんなから期待される重圧、両親の不治の病の不安、裏切られた絶望、その全てが合わさって"殺意"に変わった。
「許さない...!みんな...不幸になればいいんだ...!」
「そうだ...みんな不幸になれば私だけが不幸じゃなくなる...!」
「みんな殺しちゃえばいいんだ...!」
溢れてくる殺意に体をコントロールできず、ノウナは、大魔道師のスキルを使って最初に裏切った悪人を狙った。
「ストームサンダー...!」
「ゴゴゴ...!」
「なっ!?お前ッ!もしかしてスキルを使いやがったのか!?」
「許さないから...嘘付いたこと...!」
「ク、クソッ!お前、なにやってんのか分かるか!?
人に向かってスキルを使うってことは人を殺そうとしてるってことだぞ!?」
「ストーム、チャージ完了。」
「お、おいッ!悪かった!金は返す!地位も返すから!
頼むッ!や、やめてくれ!」
「ストーム最大、ストームサンダー!」
「ドッガーン!!」
「ぐわぁぁぁ!!!...」
「ふ、ふふ...やってやったわ...あの嘘付き野郎を殺してやった...!」
「このまま、皆殺しちゃえばいい...!殺せばいい!」
「あは!あはははははは!あははははは!」
降り注ぐ大量の雨の中、悲観で悲哀に満ちた少女は
笑うことでしか悲しみや喜びを表現できず、狂気で暴走した狂人へと変えてしまった。
狂人へと変わったノウナは人間の首都ハウセルへと向かいながら破壊と殺しを続ける。
破壊した建物は328軒以上、殺した人間は2140人以上。 最年少の魔女と呼ばれた少女の姿は、そこにはもうなかった。
そんな少女のことを"災厄の魔女"と呼ぶ者もいれば、 嘘で裏切られたという噂から"嘘偽りの魔女"と呼ぶ者もいた。しかし、そんな暴走を黙って見過ごす国ではなかった。
"嘘偽りの魔女"に送り込まれたのは..."勇者カノトス"
「大魔道師」と「勇者」の最強スキル対決、だが、暴走したノウナに冷静な判断なんてできなく、勇者に押される一方。
そんな状況に勇者が語り掛ける。
「やぁ!初めましてノウナ!少し前、最強の魔法使いが出たって有名になってたけど、こんなことをする人だったのかい?」
「...うるさい、あなたに何が分かるの...?」
「確かに僕は何も分からない。それでも、街を破壊しているのは間違いだと分かるさ!」
「親も金も地位も全て奪われた悲しみを、あなたは間違いだと言えるの!?」
「全て奪われたかもしれない、何もかも消えたかもしれない、それでも、進み続けるしかないんだよ、本物の勇者は、どんなに辛くても、どんなに苦しくても、心が折れようと、最後には立ち上がって抗うんだ!」
「どんな道だろうと、どんな事があっても、勇者は進むんだ!前へ!前へと!」
「私は勇者じゃない!!」
「勇者じゃなくてもいい、どんな人間でも勇者になれる!
どんな悪人でも、種族が違っていていも、進み続け、
自分が英雄のように民を守れる善人へと進むんだ!」
「それが勇者だ!」
「うるさい、うるさい!うるさい!!」
「全て...消えろ!消えてしまえ!!」
「メテオ!!!」
「なっ!魔力が無いのに、そんなに高出力の魔法を使っては体が持たないぞ!」
「私ごと全て消し去る!こんなひねくれた世界を!」
「これだけはしたくなかったけど...仕方がない...」
「また、民を守れないのか...」
「私の魔法で全て灰になれ!」
「ライトニングヒットソード!」
その刹那、先に一撃が通ったのは...勇者カノトスだった
「グサッ...」
ノウナの腹に刺さった一撃は、肉を貫いていた。
貫かれたノウナはスキルが解除され、その場に倒れこむ。倒れこむノウナを支え、勇者は話す。
「ノウナ、君のことを救えなくて僕は勇者失格だよ」
「君の境遇を知っていれば...君と友達だったら...
守れた未来はあったな...」
「勇...者様...救って...くれて...ありがとうございます...」
「ノウナ!...僕は...救ってなんか無いよ...守れなかったよ...人一人の未来すらも...」
「私...怒りに任せて...皆を...ひどい目にあわせちゃった...」
「だから...これでいいの...あり...がとう...勇者...様...」
そう言ったノウナは最後に少しはにかんだ顔で、赤い夕日がよく見える場所で息を引き取った。
勇者は英雄と称えられたが、その賛美は全て嫌味にしか聞こえなかった。
悪と善では善が正義と思われがちだが、どちらも正義と 正義のぶつかり合いでしかないことが、この話で物語っている。」
...小さい頃は全然理解できなかったけど...こんな悲しくて
報われない話だったんだな...
でも、この話を読んで少し分かったことがある。
ほぼ憶測でしかないが、あの謎の少女がノウナと名乗っていたのは、この物語と自分の境遇が似ているからではないかと思う。
物語では両親が不治の病と書かれていたが、実際には不治の病である可能性は低い。
なぜなら、不治の病であればあの物語からただお金を稼ぐだけじゃ助からないことが分かるだろうし、昔よりも医療技術は上がっている。
この予想がもし当たっているとするならば、謎の少女は勇者の物語のノウナを自分と照らし合わせて、自分と境遇が似ていることからノウナと名乗っていることになる。
だとしたら、僕はどうすればいいんだろう...?




