63.森の中の探索 ② ダンジョン森狼と可愛いで溢れる
動きたくても動けない。
亀が転がされたような格好で、アヤコは森の中でしばらくいることになったが、森狼の出現が状況を変わった。
すぐに反応した二人は、起き上がってアヤコの前に立つ。
てけてけうさぎは、保護を求めるようにアヤコに一斉に張り付いた。
ユーキとルーチェの出す覇気に気圧され、森狼はじりじりと下がっていくが、退こうとはしない。
アヤコはそのことに違和感を覚えた。
道中の森狼はすぐに従順になって去って行ったが、この森狼たちは引きそうにない。ということは、深淵の森の狼ではないということ。では、一体どこから…。
ジィーと森狼を見ていると画面に鑑定が出てきた。
ダンジョン森狼
ダンジョン内の生存競争に負け、ダンジョンからあふれ出た狼。
ただ今森狼と縄張り争い中。
ダンジョンで負けた?
えーと、それって大丈夫なの?大丈夫じゃないよね?
それともダンジョンの常識が違う?
これは確認しないとまずい。
襲われない前提の探索や帰りの旅が揺らぐのは、アヤコの心労具合が違う。一度街の中に戻って、情報を集めないと。
「ユーキ、ルーチェ目の前の狼はばあばのいうこと聞かない子だから、気をつけて」
「わるいやつ」
「やっつける!」
二人の蹴りだけで3匹いたダンジョン森狼は、塵のように消えた。
後に残されたのは、薄汚れた毛皮2枚と見たこともないような小さな魔石。城壁の中で並ぶ屋台で見た、屑石という名で売られている魔石だった。
「使い道は確か、ランプの明かりを持続させたり、剣を磨いたり、錬金の素材と多岐にわたるってやつだったかしら」
「そうですよ」
突然背後から声を掛けられ、心臓がバクバクするアヤコ。
それを感じたのかすぐに男は誤った。
「すまない。脅かすつもりはなかった」
声を聞いてすぐに誰か分かったアヤコ。
心臓はすぐに落ち着きを取り戻したが、上がった体温はすぐに引かない。汗を拭きながら振り返り、呆れたように言った。
それ以上に驚いたのはてけてけうさぎ達。アヤコに隠れるように必死にしがみついた。
「森の中で声を掛けるなら、気配を消さないでください。てけてけうさぎが驚くでしょ」
「ああ、そうだな。すまなかった」
アヤコも驚いたが、それ以上にてけてけうさぎが怯えてしまっている。
可愛いものを怖がらせるとは、本当にけしからん。
大丈夫よといいながら、ユーキとルーチェもてけてけうさぎを撫でて、落ち着かせる。
「次回からお願いします。―――それにしても、どうしてここに?」
アレクのパーティー『ピオニール(開拓者)』たちと一緒に来ているが、シュゲもいないし護衛ではなさそうだ。
「薬草を取りに出ていた子供たちが、森の浅いところで森狼がいたというので、森の中を探索していた」
「やっぱりこの辺りで森狼に会うのは、稀なんですね」
「そうだ。森狼を餌付け出来るほどなので、アヤコさん達のことは心配していないが、ちょっと異常を感じたので一度城内へ戻ってくれ」
「わかりました。子供たちは残念がると思いますが仕方ありません。ダンジョンが絡んでいるのでしょうから、戻ります」
アヤコの言葉にアレクは一瞬何を言ってるんだと顔を顰めた。だが、アヤコの持っている森狼の皮を見て、まさか…と息を呑んだ。
「それはここで?」
「ええ、二人が倒しました。ダンジョン森狼3匹を」
「「ダンジョン森狼!!」」
どうやら本当に緊急事態らしい。
パーティーメンバーで対策を話し合い始めたので、アヤコはしがみついて離れないてけてけうさぎをどうするか考えていた。数えてはいないが、見た限り数十羽いると思われる。数匹なら抱えて戻れるが、抱えれる数ではない。
「「ばあば…」」
期待を込めた顔で見られてしまえば、連れて行かないという選択肢はない。今までも沢山保護してきたのだから今更だ。ただ、家の近くではないことだけが、対策に困る。いきなりこの場から転移で帰るということは出来ないし、かと言って連れて帰って貴族に絡まれたくはない。
これは移動ゲージというか、キャリーを幾つか作って、荷物を運んでいるように見せるしかない。生活魔法『キャリー』を掛ければ、楽に押せる。
「クリエイト」
以前はよく見ていた大型犬のキャリーを2つ
残念ながら、この世界にない軽いプラスチックではやはり作られない。出来るだけ軽くというイメージが伝わったのか、木材で出来たキャリーだった。
手押し車のように、タイヤも付いている。
中々いいんじゃない?
自画自賛しながら、この中にお入りとてけてけうさぎを誘導した。
始めは戸惑っていたものの、ジッと見ている冒険者の視線を感じて慌てて入って行った。
「「おおー」」
てけてけと入って行く姿は、凄く可愛い。
あの小さい丸いフォームにちょんとした尻尾。
絶対的な可愛さの塊。これは癒される…。
ユーキとルーチェと一緒に、可愛いねーとニコニコと中に入って行くのを見届けた。
「ぼくがおす!」
「わたしもおす!」
「じゃあ、2つあるから二人に任せようかな」
「「うん!!」」
最後の子が入ったのを確認して扉を閉め、後は運ぶだけ。
アヤコは二人の笑顔とかわいい子たちを見ているだけで、今日は森に来て良かったと思えた。
読んで頂きありがとうございました。
珍しく書けた。
次回はちょっと先かな?




