主
魔物は去り、
夜が明ける。
監視の魔物がいなくなったことを
町の人々はすでに察しているようだった。
それは魔物からの解放を意味すると同時に、
支配者の庇護を失ったことをも意味する。
人々は一様に
不安と安堵の入り混じった
複雑な表情を浮かべていた。
町の代表を名乗った壮年の男は
人々を集め事情を説明する。
魔物の支配を退けたことの是非、
これからの不安、
様々な意見が交錯し、
会場は混乱を極めた。
「魔物たちと共に生きていくべきではなかったのか?」
そんな発言に複雑な思いを抱えながら、
少年たちは代表の男と共に人々を
なだめ、
説得し、
協力を仰いで、
この町の未来を構築すべく奔走する。
人々が徐々に
支配される側から脱却し、
未来の当事者としての
自覚を持ち始めたとき、
千の兵を率いて
領主がこの町に帰還する。
「歓喜を以て迎えよ!
お前たちの主が今、
帰って来たぞ!」
傷一つないきらびやかな鎧に身を包み、
領主は門前で声を上げた。
報せを受けた代表の男が
言葉を失う。
ようやく、
ようやく立ち上がりかけたこの町が、
再びこの愚かな領主に膝を折るのか。
唇を噛む代表の男に
令嬢は冷静に告げた。
「千の兵に抗する力を
この町は持ちません。
門を開けましょう」
固く目をつむり、
代表の男は絞り出すように
開門を命じた。




