油断
「連携、というものを意識したほうが良い」
少年たちの攻撃をいなしながら、
黒騎士は説教口調で告げる。
「今のお前たちは
一対一を四回繰り返しているだけだ。
四人いるにもかかわらず
それぞれが個人で戦っている。
なまじ能力が高いために
今まではそれで勝てたのかもしれんが、
それでは上位の魔族、
まして魔王様に勝つことはできん」
「ご高説、
痛み入るよ」
苦々しく顔をしかめ
詐欺師が放った真空波は、
黒騎士に軽くかわされる。
呪文の詠唱に入った令嬢は
黒騎士が振るった大剣の風圧で
体を崩された。
黒騎士の追撃を阻止するため
少年が割って入る。
しかしその動きは予期され、
大剣の柄頭で強かに胸を打ちすえられて
少年は膝をついた。
黒騎士は大剣を振りかぶる。
踊り子が横から少年に飛びつき
押し倒したことで、
かろうじて大剣は空を切った。
「フォローが遅い。
魔法使いに詠唱の時間を与えるのは
前衛の役目だ、少年」
少年は憎らしげに
黒騎士を見上げる。
詐欺師も
踊り子も
令嬢も、
疲労の色を濃く示している。
少年は立ち上がり、
黒騎士に向かって正眼に構えた。
大剣で自らの肩をトントンと叩き、
黒騎士は少年を見据える。
「必殺の一撃を叩きこむことが
戦いだと勘違いしていないか?
剣技も魔法も
勝利に至るための手段に過ぎぬ。
四人のうちの誰かが
届けばよいのだ。
仲間の意図を読み取れ。
己の役割を見定めよ。
さすればその刃、
必ずや敵を貫こうぞ」
少年がふっと息を強く吐き、
三人が集中を始める。
黒騎士がやや落胆した様子を示した。
少年が地面を蹴り、
黒騎士に斬りかかる。
黒騎士が大剣を振りかぶった。
令嬢が手をかざし、
黒騎士の右肘が凍り付いた。
「ぬっ!?」
氷は瞬時に融解したが、
その一瞬は黒騎士の斬撃をわずかに遅らせる。
少年は空を切る大剣をかいくぐり、
黒騎士の懐に飛び込んだ。
黒騎士は人にあり得ぬ剛力で大剣を翻し、
柄頭で少年の側頭部を狙う。
少年はさらに身を低くし、
詐欺師の巻き起こした風が少年の背を押した。
「なんと!」
股下を潜り抜けた少年が黒騎士の背後を取る。
振り向こうとした黒騎士の足元で
小さな爆発が起きた。
軸足を掬われ、
黒騎士の身体が傾いだ。
「いかん!」
体勢を崩された黒騎士の目に
上段に剣を構えた少年の姿が映る。
身をよじる黒騎士を少年の鋭い斬撃が襲い、
ごとり、と重い音を立てて
黒騎士の右腕が床に落ちた。
左手で右肩を押さえ、
膝をついた黒騎士が少年を見上げる。
「……油断の、し過ぎだ」
荒く息を吐きながら
黒騎士の眉間に剣の切っ先を向ける少年に、
「……返す言葉もないわ」
黒騎士はバツの悪そうにつぶやいた。




