黒騎士
すでに日は落ち、
町は一見、
静寂に包まれている。
しかし耳をすませば、
そこかしこに人ではない気配を
感じることができた。
闇に紛れ、
魔物が住人を
監視しているのだろう。
少年たちは気取られぬよう
慎重に領主の館へと向かう。
それは町の北側で
高い塀に囲まれていた。
「こういう時こそ
役に立たせなきゃな」
詐欺師が軽く手を振ると、
少年たちの周囲に風が逆巻き、
ふわりとその身体を持ち上げて
塀を越えた。
「使いこなせているようですね」
いささかの驚きと共に
令嬢が言った。
自慢げに詐欺師が笑った。
少年たちが降り立ったのは
館と塀の間にあるわずかな隙間。
踊り子が手近な窓を焼き破り、
四人は館に侵入する。
館の中は暗く、
人の姿も魔物の姿も見当たらない。
少年たちは誰にも遭遇することなく
執務室の前まで到達した。
中からは
何者かの気配がする。
カリカリと何かを擦るような音が
かすかに聞こえた。
少年たちは扉を開ける。
部屋の灯りが目に飛び込み、
少年たちは眩しげに目を細めた。
「……珍しい客が来たか」
低く落ち着いた声が
少年たちを出迎える。
全身を黒の鎧で包み、
兜で顔を隠した騎士が、
机に向かい書類に目を通していた。
書類に目を落としたまま、
黒騎士は言う。
「少しの間
待っていただけるか?
この書類を片付けておきたいのだ」
書類にペンを走らせる黒騎士の姿を、
少年たちは呆気にとられた表情で
見つめていた。




