第二十一羽:これまでとこれから
二年ぶりのレスト・パーチへ
お昼過ぎ。レスト・パーチに帰り着くと、私とニックは躊躇うリタを強引に入り口から押し込んだ。
リタはお店に入ると、ばつが悪そうに"ただいま"とだけ呟いた。
まず駆け寄って来たのはおばあさん。リタを抱きしめるおばあさんの目には大粒の涙が浮かんでいる。おじいさんはリタの背中をポンと叩くと、直ぐにカウンターの奥に戻ってしまったけれど、しばらく天を仰いでいた……二人ともどれだけ不安だったろう。
家族の再会が済むと、次はお客さんからの手痛い歓迎が待っていた。リタはこれでもかと言うほど揉みくちゃにされていく。私も人の事は言えないけど、みなさん、落ち着いて……。よく見ると部屋に置き去りにしてしまったサクラさんも、お客さんと一緒にになって騒いでいる。謝らなくてはいけないけれど、今はそっとしておこう……
その間に私はおじいさんとおばあさんの元へ向かう。二人にも謝らなくてはいけない。
「あの、勝手に抜け出してごめんなさい……」
「……良いんだよ。こっちこそ、ありがとう」
おじいさんが言うと、おばあさんも同意するように頷いてくれる。
私は何も……でも、二人の表情を見ていると、今回に限っては動いて良かったと思う。
ようやく解放されたリタは、ふらふらとカウンター席に倒れ込む。
「いや~、酷いと思わないかい。ちょっと命の危険を感じたかな……」
「はは、みんなも心配していたんだよ」
「ありがとう、ありがとう。痛いほど身にしみたよ。次からちゃんと連絡するからお手柔らかに頼む」
アトラスさんと何か話していたニックもいそいそとカウンターへやって来る。
「悪い、こいつ迎えに行ったので休憩時間過ぎちまった。移動しながら食える物、用意してくんねぇ?」
「あ、うん。分かった!」
おばあさんのパンを幾つか詰める。ニックには本当にいつも迷惑掛けてるなぁ。
「はい。ごめんね、付き合わせて」
「いいよ。じゃあ、また来る」
リタと二人で見送る。
「ふむ。見ない間にずいぶん立派になったね」
「うん。いつも助けてもらってばっかり。この前もウィーノに追いかけられた時に護ってくれたし。ウィーノも大きくなったよ。なんでも自分が平和を護るんだって、張り切ってる」
「それはまた、あんな子供がねぇ。頼もしい限りだ」
そう言えば、あの時……
「研究所に潜入するって言ってたけど、無茶しないといいけどな」
「研究所に? それは……危険だな……」
「危険?」
リタは頷く。
「研究所にはシキミドリの情報がある。ずっとひた隠しにされている複製方法や、開示されていない極秘情報も。一部の人達の間では、研究所がシキミドリによる利益を独占するためとも言われているんだ。たぶんそう言う良くない噂を聞いて思いついたんだろうけど、下手に突くと拘束されると思う」
拘束? 追い返される程度だと思っていた……
「研究には色々ある。知らない方が良いような事もやっている。実験とかね……。研究所も自分達の立場を守るために拘束くらいしたっておかしくない」
実験……何だか嫌な予感がする。聞くのが怖い。
「でも、そうか。いつかそうやって疑問を持つ者が声を挙げる事で、ちょっとでも研究所の体制が変われば良いね。ウィーノには期待しておこうじゃないか」
「うん。そうだね」
シキミドリの複製方法だけでも情報が出回れば、助かる人は多いはずだ。あの小さなウィーノがそこまで考えているかは分からないけど、きっと何か大きな事をやってくれる。そう思う。
「ところで、家に用事って何だったの? お母さん達と何か話してたみたいだけど」
「あぁ、許可を貰いにね」
「許可? 何の?」
リタはゆっくりと言った。
「ねぇ、メグル。今度の旅、一緒に来ないかい?」
次回予告
「私にはやりたいこと、やらなきゃいけないことがあるの……!」
※完結まで固定となります
完結まで3話




