第27話 デートをするのじゃ!
「デートをするのじゃ!」
シアは人の姿になって早々、そんな事を言い出した。
いや、わからなくもないよ?
一度死んだのにまた人の姿で生きられるようになったんだからさ。
こういう人っぽい事したいよね?
けどさ、娘がいるんだから人妻って事でしょ?
…ダメじゃね? 旦那さん生きてるのか知らないけど。
「あぁ、なんじゃ…旦那がおるとかそういう事なら気にせんでよいぞ? そもそも居らんしな」
「そうだよね、やめといた方がいい…はい? 旦那さんいないの?」
「うむ、娘といっても拾い子でな。ある日、近くの村が襲われたと聞いて向かった先で見つけたのじゃ。名は、イヴといってな…妾と種族も違う。じゃが、例え妾の本当の娘でなかろうと種族が違おうと妾にとっては愛おしく大事な娘なのじゃ」
「そう、なら近いうちに会いに行かないといけないわね!」
カレンの言葉に悠真も頷いた。
そして悠真はただ一人、家族として接してくれていた妹の存在を思い出していた。
真弥…元気にしてるかな?
いや、この世界にいるかもしれないんだったな…
いつか会えるといいけど…
「そんな寂しそうな顔してどうしたの?」
あ、顔に出てたかな?
「いやさ、俺も家族の事を思い出しちゃってさ」
「…そう」
カレンはそう言うと他に何も聞いてくることはなかった。
あれ?
俺がこの世界の人間じゃないとか話したっけ?
「…何も聞かないの?」
「聞いて欲しかったの?」
「いや、そういうわけじゃないけど…俺が何者なのかとか気にならないのかなって」
「寂しそうな顔してたし聞かない方がいいかなって…べ、別にあんたが心配とかそういうわけじゃないから!」
(素直じゃないなぁ)
悠真は心の中でそんな事を思いながら笑うのだった。
「まぁ、なんじゃ。気にはなるがお主の話したくなった時にでも聞かせてくれるとよい」
「みんな、ありがとう」
………
……
…
しんみりとしてしまっていたが俺とシアは
買い物に来ていた。
まぁ、冒頭でシアが言っていたデートだ。
デートとはいえカレンを置いて行くのも心配だったので一応来るか聞いてみたら、
「私はいい。今日はシアに付き合ってあげて」
と、言われた。
まぁ、そういう事でシアと買い物に来ているわけだが…
「悠真! あれはなんじゃ? いい匂いがするのぅ! のぅ、なんて言う食べ物なのじゃ?」
さっきからこのはしゃぎ様なのだ…
久々だし、この国も初めてかもしれないから仕方ないかもだけどさ…
近いんだよ…腕を組んだりしてくるから胸が当たって正直それどころではない…
それに甘い匂いもして…うわぁぁぁぁぁ…
「…ま……うま……聞いておるのか悠真」
「ふぁい! な、何?」
いかんいかん! シアの胸の感触と甘い匂いに釣られていた! しっかりしないと!
「じゃからあの美味しそうな匂いの食べ物は何というのじゃと聞いておるのじゃ!」
「あ、あーあれね! あれは串焼きと言って肉とか野菜を串に刺して塩やタレで味付けしたものを焼いてあるんだよ!」
「なるほど…悠真! 妾はその串焼きとやらが食べたいのじゃ!」
「わ、そんな引っ張るなって」
(む、胸が腕に当たってるからぁぁぁ!)
悠真の心中も知らずシアは悠真の腕を組みながら屋台へと引っ張って行った。
「ふむ、意外と種類があるのじゃのぅ…どれにするか迷うのじゃ…悠真はどれにするのじゃ?」
「俺は…このモモドリの串焼きにしようかな。シアはどれにする?」
「んー妾は…んー悩むのぅ…」
そうなんだよなぁ…思ったより種類が多くて悩むんだよなぁ…
お、決めたっぽいな。
「決めたのじゃ! 妾はこのウオドリの串焼きにするのじゃ!」
「お! お姉ちゃん良いのを選んだね! ウオドリの串焼きは当店のおすすめだよ! それでお二人さん味付けはどうするよ? 塩とタレがあるよ! 塩は素材の味を生かしたシンプルな味付けでタレは当店自慢のオリジナルだよ!」
また迷うなぁ…素材の味を生かした味付けも美味しそうだし、タレは自慢のオリジナルかぁ…
このおっちゃんも人が悪いなぁ。
そんな言い方されたら迷うに決まってるしさ。
んーよし!
「じゃ、俺はタレで! シアはどうする?」
「んー妾は…塩にするのじゃ!」
「あいよ! お代は2つで300円だ!」
悠真はお金を渡し串焼きを貰い、まいどありーという声を聞きながら店を離れるであった。
「じゃ、食べよっか!」
「うむ!」
「いただきます!」
悠真はモモドリの串焼きを一口食べると…
「うまっ!」
うまい!
だけどモモドリ…うん、まんま焼き鳥のももだね。
だけど肉のジューシーさがまったく違う。
なんだこれ! 噛めば噛むほど肉の旨みや油が出てきて本当にうまい!
そしてタレだ! この肉によく合っていてうまい!
例えるならそうだな、日本にいた時の焼き鳥のタレがちょっとスパイシーになっていると言えばわかるかな?
最初はタレの味なんだけど後から来るピリッとした味がなんともクセになる!
「そんなにうまいのかえ!? では、妾も食べるかのぅ!」
シアも悠真に続き串焼きを一口食べると…
「なんだこれは!? うまいのぅ! ほれ悠真も一口食べてみよ!」
「えぇっ!? お、俺はいいよ!」
「…妾のでは嫌か?」
シアは涙を薄っすらと浮かべながらそんなことを言ってくる。
それはずるいって…
断れないじゃないか…
「じ、じゃあ一口貰うよ…」
「うむ、では…あーんじゃ!」
悠真は恥ずかしながらも「あーん」と言い口にする。
「どうじゃ? 妾の味するかのぅ?」
「ぶふぅ!」
「ははは、冗談じゃ! まったく面白い反応してくれるのぅ主人様よ! ふふ、はははは!」
どうやらツボにハマったようだ…
まったくこっちはマジで焦ったっていうのに…
まぁ何はともあれウオドリの串焼きはうまい!
何がうまいかというと食感が鶏肉と魚を一緒に食べているかの様だ。
鶏肉は鶏肉、魚は魚、別々でいいではないかと思うかもしれないが、食べればわかるのだ!
見た目は鶏肉で口に含むと魚の肉の様に身が解れて一口に二度の食感が楽しめる!
味も最初は鶏肉の味なのだが、後からくる魚の旨味がまた良い!
しかもシアが頼んだのは幸いにも塩である為、シンプルな味付けで素材の味がよく出ている!
「これうまいなシア!」
「うむ、最高じゃ!」
瞬く間に食べ終えた二人は次のお店に向かうのだった。
何件か店を回るうちに気になる店を見つけた。
「ん? あの店は何だ?」
「そうじゃのぅ…スライム印の水飴…と書いてあるのぅ」
スライムと聞いた瞬間、悠真はかつて討伐したスライムを思い浮かべて若干冷や汗を流した。
でも、水飴と聞いて気になるのも事実な為、一度見てみるとことにした。
「いらっしゃい! このスライム印の水飴はみんなに大人気のスライムを再現して作ったお菓子で甘くて美味しいよ!」
ん? 今なんて言った?
みんなに大人気…?
あんな気持ち悪い魔物が? みんな大丈夫?
「悠真よ、妾は食べてみたいぞ!」
シアがそういうので一つ買うことにし店を去ろうと悠真が歩き出そうとすると通行人とぶつかってしまった。
「あ、すいません」
「いえいえ、こちらも不注意でした」
幸いにも通行人は悪い人ではなく、揉め事にはならなかった。
だが、悠真は少し嫌な気を感じていた。
最近会ったことがあるような感じがしていた。
通行人は30台後半くらいの男で白衣を着せたら似合いそうな感じだ。
男は「では」と言いすぐにどっかいってしまったが悠真の嫌な感じだけはわからずじまいであった。
まぁ、こんな感じでその後もデートを続けるが、あまりカレンを待たせるのも悪いと思い宿に帰るのであった。
………
……
…
その頃、一人の男が先日悠真とカレンがガルムキングを倒したヴァルの森にいた。
「ふむ、あの男の子が私のガルムキングを倒したのですか…まぁいいでしょう」
そしていきなり目の前に現れたガルムキングに似ているがもっと黒色のガルムキングを撫でながら男は話す。
「さて、そろそろ始めましょうか…全てはあの御方の為、手始めにこの国を滅ぼしましょうか」
この国に魔の手が迫っているのであった。
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