第4話
今日もよろしくお願いします。
ロアの村 ー 村長宅
お婆と別れて明は式典の準備をする為に村長の家に来ていた。
村長の家では、村の女性達が祭りで出す料理の下準備などを忙しなくこなし、家の一角で式典の準備をしている明は着々と近付く時刻にいつも以上にオタオタしていた。
「ああ。どうしよう。今頃になって緊張してきたよー」
「明も今日ばかりは緊張する見たいだね」
ははっと笑って部屋に入って来たのは、椎だった。
「おはよう。椎。…だって、初物よ?新鮮の中の新鮮なのよ?」
「…何言ってんの?」
「何って新鮮な野菜達を食べれるのよ?緊張するに決まってるわ!」
「………」
「あー早く式典始まらないかなぁ」
「…緊張の種類が違うんだね……」
流石に緊張していると思い激励を兼ねて見に来た椎だったが、いつも通りの明を見て呆れるしかない椎であった。
さて、あれから明の支度も整い村の人達が待つ広場に向かった。
明の姿は、実りの色であるオランジ色を主体とする袴姿でシャラシャラと煌びやかな装飾が明の魅力を引き立たせていた。
明の姿を目にした村の人達は、皆一様に頬を染めて惚けている。
しかし、お婆だけはこの時起こっていた出来事に気付いていた。
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side お婆
アタシは今とんでも無いものを目にしていた。
普通に考えれば、おかしいでは済まない。
それは収穫祭の時期には本来咲かない筈の魔力草が咲いているからだ。
この世界には魔力というものがあるが、その魔力は有限で草木から摂取し魔石や魔法薬になる。
この世界に広まっている魔道具はその魔石が原動力となっているし、重症の怪我なども直す薬も魔力草から作られて居る。
そんな魔力草が生えるのは夏。そしてこの収穫祭が行われる時期は秋。この事を考えるとこの異常が分かるだろう。
その異変の原因はすぐに判明した。
アタシの養い子明が、式典で踊る恵の舞を踊り始めてからだ。
明が右手を挙げると魔草が緑に光、左を挙げると食物が色味を増した。
村の連中は明の舞に魅了され気付いていない様だが、明らかにこの異常の原因は明だ。
(明を初めて見た時から、何か訳ありなのは分かっておったが……まさか明がねえ……)
アタシは明の舞う姿と笑顔を見ながら、そんなに遠く無い未来で明との別れが近い事を予感していた。
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