86. 暗き森の野営と、辺境の街での休息
いつもお読み頂き、ありがとうございます!
リアルがバタバタしておりまして、気づけば1ヶ月ぶりの投稿になってしまいました。お待たせしてすみません!
今後もしばらくは不定期更新が続いてしまうと思いますが、少しずつでも彼らの旅の続きを書いていきます。
これからも本作にお付き合いいただけると嬉しいです。
引き続きよろしくお願いします!
鬱蒼とした『暗き森』に夜の帳が下りる頃、俺たちは街道沿いの少し開けた場所を見つけて野営の準備を始めていた。
『銀の箱舟』の横に簡易的なオーニング(日よけ)を広げ、手早く焚き火の準備をする。少し離れた場所では、公爵家の騎士たちが手際よく豪華なテントを設営していた。
「レンジ様! 私にも夕食のお手伝いをさせてください!」
「おっ、助かるよ。じゃあ、この野菜を洗ってくれるか? 水はそこのタンクから出してくれ」
「はいっ! 任せてください!」
袖をまくり上げて張り切るセリアに簡単な作業を頼みつつ、俺はスキレットで肉を焼き始めた。ジュージューと食欲をそそる音と香ばしい匂いが森の空気に漂う。
「(……ふむ。今日の肉はなかなかの焼き加減だな。我が最初に味見をしてやろう)」
どこからともなく現れたクオンが、一番良いポジションにお座りをして黄金の尻尾を揺らす。
『フン! 我を差し置いて味見とは片腹痛い! だが、その肉の焼ける匂いに免じて、この私が直々に毒見をしてやろう……さあ、早く一番大きい肉を我の皿に盛るのだ!』
偉そうな念話が脳内に響くが、足元を見れば、銀河の毛並みを持つコスモが目をキラキラさせながら前足をパタパタとさせている。その後ろでは、ルナとエメもお行儀よくお座りをしてご飯を待っていた。
「はいはい、順番な。お前らの分はちゃんと別に用意してあるから」
もふもふ達専用の皿に肉と野菜をバランスよく盛り付けてやると、邪神も伝説の魔獣も関係なく、全員が夢中になってご飯に食らいついた。
「……ううっ、いい匂いがするぜぇ……」
「腹減った……」
少し離れた太い木には、ぐるぐる巻きに縛られた盗賊たちが情けない顔でこちらを見ている。公爵の命令で水と最低限の固いパンしか与えられていない彼らにとって、この野営は拷問に近いだろう。
「お、お嬢様! そろそろお戻りください! 公爵閣下が胃を痛めて倒れそうです!」
血相を変えた公爵家の騎士が、セリアを迎えにやってきた。
「もう、お父様は大げさなんだから。それじゃあレンジ様、また明日!」
パタパタと公爵のテントへ戻っていくセリアを見送る。
その横では、いつの間にか完璧な執事の所作で後片付けをこなすヴォルガラが、優雅な手つきで食後の紅茶を差し出してきた。
「レンジ様、食後のティータイムになさいますか?」
「……お前、古代竜のくせにほんと執事キャラが定着したよな」
「ふふ。案外、性に合っているのですよ」
そんな軽口を交わしつつ、俺たちは賑やかな夕食のひとときを楽しんだ。
翌朝。
魔獣の襲撃もなく無事に夜を越した俺たちは、再び車と馬車を走らせ、ようやく『暗き森』を抜けた。
視界が開けた先に見えてきたのは、高い石壁に囲まれた辺境の街だ。
「まずはあのゴミどもを衛兵に引き渡さねばな。おい、門を開けさせろ!」
ギリアム公爵の乗る豪華な馬車と、精鋭騎士団の紋章を見た街の門番たちは、一瞬で顔面を蒼白にして直立不動の姿勢をとった。
「こ、公爵閣下!? な、なぜこのような辺境に……はっ! すぐにお通ししろ!」
街の衛兵所は、大物貴族の突然の訪問と、彼らが引き連れてきた薄汚い盗賊団の集団に大パニックとなった。
騎士団長が衛兵の隊長に事の顛末を説明し、盗賊たちをあっさりと引き渡す。盗賊たちは王都からの追手と街の衛兵の板挟みになり、完全に絶望した顔で地下牢へと連行されていった。
厄介払いが済んだところで、俺たちは街の中央広場にある大きな宿屋の前に『銀の箱舟』を停めた。
「ふう、ようやく一息つけるな」
運転席から降りて大きく伸びをする。森のジメジメとした空気とは違い、街の活気ある空気が心地よい。
「レンジ様! せっかくですから、少し街を見て回りませんか? あそこの屋台、すごくいい匂いがします!」
セリアが目を輝かせながら俺の袖を引く。公爵の監視の目は相変わらず鋭いが、長旅の疲れを癒やすにはちょうどいい時間だ。
「そうだな。少し休憩したら、行ってみようか」
「(……おいレンジ、我にもその屋台の肉を買ってこい)」
クオンの呆れたような念話を聞き流しつつ、俺たちは辺境の街での短い休息を満喫することにした。
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