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14 2度目の婚約破棄

「セシル様の婚約者候補としてお迎えいただき、光栄に存じます」


 国王は、その日のうちにさっそく王国中の貴族を集め、セシルの婚約者のお披露目を行った。冒頭、美しく優雅なエリザベートの挨拶に、王宮の大広間は静まり返った。


 彼女は完璧だった。

 誰もが納得する気品と知性、そして王家に相応しい振る舞い。


 ……この方なら、セシルにふさわしい。


 私は心が冷えていくのを感じた。


「では、近日中に正式な婚約発表を――」


「ちょっと待った」


 セシルがすかさず口を挟んだ。


「俺、この婚約、納得してないんだけど」


 その言葉に、王妃が眉をひそめた。


「ですが、王家のためには――」

「俺の婚約なんだから、俺が決める。そもそも、当のエリザベートはどう思ってるんだ?」


 突然話を振られたエリザベートは、遠い目をして、わずかに微笑んだ。


「……私は、王家のために動くのが貴族の義務だと考えていますわ」

「ほら、納得してないじゃん」


 セシルが躍起になっているが、エリザベートはあくまで冷静だった。


 この方……何か隠してる?

 私はなんとなくそんな気がして、後日、直接エリザベートに話をすることにした。


 ***


「お話があると聞いて、驚きましたわ」


 リリアーナはエリザベートを屋敷に招いた。


「すみません、突然……。ですが、気になってしまって」


「何を、ですか?」


「……エリザベート様は、本当にセシルとの婚約を望んでいるのですか?」


 その問いに、エリザベートは少し目を伏せ、淡く微笑んだ。


「貴女が聡明な方だというのは聞いていましたが、さすがですわね」


 彼女は静かに息を吐く。


「実は、私には長年想いを寄せている方がいるのです。ですが、その方は王家に仕える身。私の家柄とは釣り合いません」


 身分違いの恋か……

 私は言葉を失う。


「家のために、この婚約を受けることに迷いはありませんでした。ですが、セシル様はどうやら別にお慕いしている方がいらっしゃるようですね?」


 ……セシルが?


「……セシル様が貴女をどう思っているか、貴女はまだお気づきでないのですか?」


「それは……」


「ふふ、表情を見れば分かりますわ」


 エリザベートは微笑むと、リリアーナの手をそっと握った。


「私は、政略結婚が全てではないと思っています。貴女が本当にセシル様をお慕いしているなら、この婚約を阻止してください」


「……え?」


「私は、心から愛する人と結ばれたい。そのためには、まず貴女に頑張っていただかないといけませんわ」


 その言葉に、私は息を呑んだ。

 私が、セシルの婚約を止める?


 でも、それはつまり――

 

 私は、自分の本心に向き合わなければならなかった。


 ***


 王宮で正式な婚約発表が行われる日。


「これより、第二王子セシル殿下と、ローゼンハイム侯爵令嬢エリザベートの婚約を――」


「待った」


 会場に響いたのは、セシルの声だった。


「俺、この婚約は受けられない」


「婚約はもう決まっているのよ。今さら何を言い出すの」


 王妃が非難し、会場が凍りつく。


「何度も言ったはずだ。俺の言葉を聞こうとしないから、この場で言うことになったんだろ。俺には心に決めた人がいる」


 心臓が止まりそうになる。

 心に決めた人……

 エリザベートの言葉を信じるなら、それは私だ。覚悟を決めろ、私。

 私は足を踏み出した。


「セシル!」


「リリアーナ……?」


「私――」

 

「俺は、リリアーナが好きだ」


 私の言葉を察して、遮るようにセシルが言った。会場内の全員が、私の次の言葉に注目する。


 しかし、静寂を破ったのは、意外な人物だった。


「貴方がそう言うなら」


 エリザベートだ。


「私は、この婚約を辞退します」


 彼女は凛とした表情で続ける。


「セシル様には、心から愛する方がいらっしゃる。私も、そういう結婚をしたいと思っていますわ」


 毅然とした言葉に、会場の空気が変わった。


「私も……」


 喉が渇く。

 でも、もう逃げない。


「私も、セシルが好きです」


 会場がざわめいた。震える手を握りしめ、続ける。


「エリザベート様、ありがとう」


 エリザベートが微笑む。

 私はまっすぐ、セシルを見つめた。


「セシル、私はあなたと生きていきたい」


 その言葉に、セシルは少し驚いたように目を見開いた。


 そして、すぐに――


「……こっちのセリフだよ」


 嬉しそうに笑うと、膝をつき、私の手をとった。


「リリアーナ・クラリス公爵令嬢。私と結婚していただけますか?」


「……はい!」


 その瞬間、大広間は拍手と歓声に包まれた。


 ***


 婚約発表が終わった後、私は真っ先にエリザベートに駆け寄った。


「エリザベート様、本当にありがとうございました……!」


「ふふ、私のためでもありますから」


 彼女は優雅に微笑む。


「おふたりから勇気をもらいました。私も、ずっと想っていたあの人に、勇気を出して気持ちを伝えに行こうと思います」


「応援しています!」


「ありがとう、リリアーナ様」


 エリザベートはそう言って微笑み、王宮を後にした。

次で最終話となります!

ここまでお付き合いいただいた皆さま、本当にありがとうございます。

最終話は本日(3月19日)夜に投稿予定です!

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