貴船町⑥
引き続き主人公パートですლ(╹◡╹ლ)
強い主人公を書きたいはずなんだけどなあ。
フードの女はエレベーターから黒蝶と一緒に出てきた2人の男を注意深く観察した。
(ここで出会えるなんて好都合だわ。恐らくあの黒蝶の持ち主が今回の魔物の転送に関係しているのだわ。あの黒蝶が例の栞かもしれないし、絶対に捕まえなくっちゃいけないわね。栞を使ったのは黒髪の子か金髪の子か、一体どちらかしら?)
彼らは壁沿いを歩いて入口に着くと守門の少年と話し始めた。
フードの女は彼らの視界に入らない様に、屯している避難民の間を縫って入口に近づく。
(・・・待って。別の誰かが栞を使った可能性も考えられるわね。それでいてその誰かは上の階に残っているケース。そう、あの子達が偶然に乗り合わせだけ。うーん、どうしようかしら)
フードの女は入口に近い場所で避難民に溶け込み様子をうかがう。
2人は話を終えたのか守門と別れて去っていった。
(でもエレベーターはひっきりなしに動いているわ。仮にあの子達が栞の所有者ではなくても、黒蝶と一緒に出てきたんだから真の所有者とはきっと関係があるはずだわ。それよりも今は棟内に溢れた人達の中からいるかも分からないその人を探すよりもあの子達を追った方が有益だわね)
彼らを追う為に中央棟から出たフードの女は、メインストリートを東に走る2人の姿を確認すると追跡を始めた。
◇◇◇
中央棟を後にした僕たちはアカデミーを目指して東に向かっていた。
「アカデミーは東棟の中にある。このまま真っ直ぐ行けば着くはずだ」
無人の街並みを小走りで抜けていく。
そしてメインストリートの交差点に差し掛かった。
その時、突如交差点の真ん中に水色の魔方陣が大きく展開された。
「なんだ?なにが起きた!?」
「罠だ!気をつけろハル!」
水色の魔方陣はその陣内にて水流のうねりを作り出し、僕たちを容易に飲み込んだ。
竜巻のような急流の中、僕もロイも成す術はなくただ魔方陣の中をぐるぐると回った。
(ぐっ、必死にもがいても水の中から抜け出せない!このままだと息が・・・)
身体に掛かる水圧で自由がきかない。
(残る手段はもう・・・)
上がどの方向なのかの判断も付かないままに、僕は目をつむり右手に意識を集中する。
そして右手の感覚を頼りにポケットに手を入れた。
栞の玉を掴み、そして心で唱える。
(リセット!)
目の前が真っ暗になった。
・・・
気が付くと僕は小舟に乗っていた。
風も無く、波も無い。
どこまでも続く薄暗い空間。
「さっきの重圧はほんとに危なかった。大きな洗濯機に落ちたかと思ったよ」
僕は手に持っている栞の玉を見つめる。
「これでリセット出来なかったら絶対に死んでたよ。ほんと栞の玉が流されなくて良かった。それにしても魔物がいないところで死にそうになるなんてな、初見殺しすぎるよほんとに」
そう言って僕は小舟を漕ぎ始める。
薄暗い空間に3つの光る玉が浮いており、僕は寝そべる人の横に立つ3人の姿が映し出された玉のもとに向かった。
「棟の倉庫部屋からか。念のためにセーブしておいて良かった。・・・そういえば魔物って魔方陣なんて使ってくるのか?ロイは罠だって言ってたけど。それに町は綺麗だったし魔物の被害は無かったような」
僕は光る玉の前で考える。
しかし、これといっていい答えは出なかった。
「とにかく今はコアを手に入れるためにアカデミーを目指そう」
僕は光る玉に手をあてがう。
玉は輝きを強め、僕の視界は真っ白に染まった。
・・・
「ハル、これからが本番だ。でも、相手は魔物だから気を抜くと死ぬかもしれない。状況が悪くなったら迷わず引けよ、分かったか?」
「わかったよロイ」
「よし。それじゃあハル、行くか!」
僕は頷く。
ロイは倉庫部屋の取っ手を回す。
開いたドアから、二匹の黒い蝶が飛び立っていった。
会話ベースのほうが感情も読み取ったりできるし、そっちの方がいいかなって思い始めてきました。
会話量を増やすかもしれませんლ(╹◡╹ლ)
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