選択
いつもお読みくださりありがとうございます。
この15部は少し短めになっています。
というのも、次のパートから少し急転回するからです。
今回はその前座となりますが、少しネタを多めに入れてますので楽しんでもらえると嬉しいです。
もしも面白いと感じで下されば、是非とも評価の程よろしくお願いします!
迫りくる狼に僕は恐怖した。
昨日の出来事がフラッシュバックのように鮮明に脳裏に浮かぶ。
僕は動くことが出来ず、以前のようにただ狼を見つめることしか出来なかった。
その時。
「【バインドアップ】!!!」
駆けていた狼はその場で停止する。
狼の周りの空間は淡く光り続けており、足をバタつかせる狼の移動を制限していた。
「うおっ!?なんだなんだあ!全然進まねえじゃあねえか!一体どうなってんだ!おいイヌ!動け!」
淡い光の中でどれだけ動き続けても、狼は首輪の鈴を鳴らす事しか出来ないでいたが、それでもカワモリは早くガキどもを食い殺せと狼に命令し続ける。
「いっちょ出来上がり~!」
「さすがニマだね」
「えへへ~ありがとうイア!ねえハル様!私の活躍見てくれた!?」
「あ、ああ。さすがだね、ニマ」
狼を目の前にした時、僕は動けなかった。
この無力感は昨日も感じた。
それからイアと出会い、自分を変えると決めたのに何も出来なかった。
僕自身が成長して強くならないと何も解決しないと僕は学んだはずだ。
それなのに。
そう思っていたはずなのに、僕は何も出来なかった。
(思うだけじゃだめなんだ。行動しなくちゃいけないんだ)
僕は頭の中で何度もそう思った。
「それにしても名乗る盗賊ね~。多分例の盗賊では無いと思うけど、一旦拘束して話をしてみましょうか~」
「縛り上げは俺がやるよ」
ロイは狼の背後からよじ登りカワモリを引きずり下ろすと、彼を後ろ手で縛った。
「さて、カワモリさん。どうして俺たちを狙ったんだ?」
「くそっ!そんなことよりこの縄を外せ!俺は盗賊だぞ!カワモリだぞ!」
僕はイアと目を合わせた。
同じようにニマはホルマと目を合わせていた。
(何を言っているんだ?)
「縄は外さない。俺の質問に答えたら場合によっては解放しよう」
「ロイ、解放はまずいんじゃないのか?」
ロイは僕の元へ来て耳打ちをする。
「本当に解放する訳じゃない。そう言った方が聞き取りが上手くいくこともあるんだ」
「何で俺がガキどもの言うことを聞かないといけねえんだよ!俺は44歳だぞ!年上は敬えとお母さんから教えてもらっているだろう!分かったらさっさとこの縄を解きやがれってんだよ!」
(この人は一体何を言っているんだ・・・!)
「私たちをアカデミーの生徒だと思ってたのなら魔法の一つや二つは警戒するでしょ~。即捕縛の時点でこの人は例の盗賊とは無関係だと思うよ~」
「その線は俺も無いと思うけど、躾けた魔物のことが気になるんだ」
「確かにね~。それは聞いておきたいね~」
「カワモリさん、魔物の躾はどうやったんだ?言っちゃ悪いが、お前さんにその実力があるとは思えないんだ」
「誰が答えるかよ!ああ!?いいのかあおいい!?いい加減に縄を解かないとバンすっぞ!なあおいイヌ!早く俺を助けろ!イヌ!」
縛った縄を無理やり解こうとするカワモリの元へニマがゆっくりと近づいた。
「おい半ハゲ!あんたわがままなんだよ!下手にでりゃ調子乗りやがって!窒息させてやろうか~~~!?」
「落ち着けってニマ!」
「無理無理無理~!この半ハゲの態度スーパーむムカつくんですけど~!」
拳で今にもカワモリを殴ろうとするニマの肩を掴んでロイはなだめようとする。
しかし、ハゲと言われて興奮したのか、カワモリはニマを睨みながら暴言を吐き続けた。
罵声を受けたニマはプッツンと呟き、その場にしゃがみ込んで両手で土を集め始めた。
「ふふふ・・・」
「目が完全にやる気になってるよ。ロイ、止めなくていいの?」
「こればかりはもう、カワモリさんの自業自得としか言えないな。黙って見守ろうイア」
ニマは両手に山盛りの土を持ったままカワモリに近づく。
「おいガキ!その土で何しようってん・・・ぐ、ぐごごごご」
ニマは後ろ手に縛られたまま座らされているカワモリの前に立ち、口元に山盛りの土を押し付けた。
「な、何をする、ぐ、ぐごごごご」
「悪い事したらごめんなさいって言わんかい~~~!」
「ご、ごめんなさ、ぐ、ぐごごごご」
「何に謝ってるか言わんかい~~~!」
「お、襲い掛かってごめ、ぐ、ごごごご」
「もうしませんって反省せんかい~~~!」
「も、もうしません、ぐ、ぐごごごご」
「なんでどう見ても狼の魔物にイヌって名付けてるんや~~~!」
「え!?ご、ごめんなさ、ぐ、ぐごごごご」
「あんた盗賊なのになんで鈴の首輪着けさせてるんや~~~!」
「ご、ごめ、ぐ、ぐごごごご」
「あんたなんでそんな髪型・・・」
「ニマ、もうそれぐらいにしておこうか。彼はもう限界だ」
徐々に力尽きていくカワモリとは反対に、どんどん勢いが加速していくニマをロイが止める。
フッと正気に戻ったニマがカワモリから離れると、カワモリはゆっくりと倒れた。
「ニ、ニマ、やりすぎちゃったね~」
そう言うイアにニマは目を向ける。
ニマの目には、イアは完全に引いている様に映った。
(や、やってしまったあああ!こんなのハル様も絶対に引いてるじゃんか~~~!)
涙を流し始めたニマにイアは大丈夫?と声を掛ける。
「ニマって喜怒哀楽が激しい子なんだね」
「俺からしたらいつも通りニマは忙しくしてるよ」
「とりあえず~、その人と話をするには目が覚めるまで待つしかないね~。私は先に進みたいんだけど、どうかな~」
「この人だけなら何とか運べそうだけど、魔物はさすがに運べないな」
カワモリがペットにしているイヌと呼ばれる狼は宙に留まりながらも暴れている。
目が合う度にこちらへ牙を向け威嚇する様子から仲良くなれる可能性は0だろうと思った。
「バインドアップはもう1時間も持たないよ」
「それにしても魔物を飼うなんて聞いたことが無い。人を襲う以上、安全を考慮すれば生かしておくこことは出来ないな」
「ロイの言っていることは分かるよ。でもね、懐いていたから魔物だけど魔物じゃないと思うの。まずはこの人と話をしてからではダメなのかな?」
「盗賊に良い人はいないと思うけどね~。それにその人、性格にも難がありそうだし~。魔物を処分するならむしろ今かもね~」
「でもねホルマ、この人が起きた時にペットが居なかったらね、この人は哀しむと思うの。それにね、もしも魔物と心を通わせることが出来るのなら、絶対に殺さない方がいいと思うの。だって可哀そうだよ」
「も~じゃあどうするの~」
「それをね、一緒に考えようよ!」
力強くホルマを説得するイアとは対照的に、ホルマは両手で頭を抱えている。
「困惑するホルマ先輩を見たのは初めてかもしれない」
「昔からホルマはイアに対して何故だか強く言えないんだよ」
「ねえ、ハルはどう思う?何か良い方法はないかな?」
特命の為に先を急ぐホルマの気持ちも分かる。
イアの、守れるものは守りたいという慈しむ気持ちも理解出来る。
魔物の躾について鍵を握るカワモリは気を失っており、いつ目を覚ますか分からない。
彼のペットであるイヌという魔物の拘束時間も1時間を切っている。
ホルマの気持ちか、イアの気持ちか。
僕は、その選択を考える。
あるいは・・・。
そして。
「そうだな・・・」
実は・・・というお話が2つあります。
①【オーバーラップWEB小説大賞】に応募するために、今日明日でもう1部(か2部)書かないといけません。
がんばって書きますので、仕上がりましたら是非ともお読みくださいませ!ლ(╹◡╹ლ)
応募資格
9月30日の23:59までに本文が、50,000文字以上必須。
この15部投稿時点での本文は・・・約45,500文字
足りない文字数・・・約 4,500文字
(※この15部だけの文字数・・・約 2,800文字)
②短編小説を1つ書き上げました。
コメディをテーマにしています。笑える短編小説を目指して書いたのでお時間があれば是非お
読みくださいませ。
リンク→【人狼しよう】https://ncode.syosetu.com/n0936hw/
(面白かったら、是非とも評価頂けると嬉しいです・・・!)




