発端
新編スタートします!
特命の流れをさらっとまとめて書こうとしてましたが、バトル系をもう書きたくて書きたくて
書いちゃいました。
このパートと次のパートで、この編の流れが把握できるようにします(予定)
始まりは夜の日。
静まり返った住宅街の街灯は、走り抜ける一人の女を照らした。
女が走りすぎると、街灯はすぐに別の女の子を照らした。
「待ちなさ~い!」
「待てと言われて待つ人なんて見たことがないわよ!」
「待ちなさいって言ってるでしょ~こら~!」
忍び装束の女は、後ろから追いかけてくる女の子を振り切ろうと走り続けていた。
登れそうな柵を見つけた忍びの女は、その柵を足掛かりにして住宅の屋根に飛び上がると、屋根から屋根へと飛び移って行った。
「すばしっこい女だね~」
女の子は、屋根伝いに走る忍びの女を視界に捉えたまま、走りながら右手に意識を集中する。
すると、女の子の足首に着けてあるアンクレットの玉がピンク色に光り始めた。
そして女の子は、右手人差し指の先がピンク色に光ることを確認すると、その場に立ち止まって足元の地面にその指を当てる。
「ふうちゃんこの指と~まれ!」
指を当てた箇所を中心に直径1mほどのピンク色の魔方陣が地面上に描かれ、その魔方陣からピンク色の髪をした女の子がせり上がってきた。
女の子は自身と同じぐらいの背丈しかないそのピンク髪の子に後ろから乗っかかり、ふうちゃんご~ご~!と叫んだ。
ピンク髪の子は女の子が走るよりも2倍近い速さで走りだす。
忍びの女との距離を詰めたピンク髪の子は、足を曲げ地面を強く蹴り上げて高く飛んだ。
屋根に穴をあけながらも着地したピンク髪の子が後ろに振り返ると、先回りをされた忍びの女は立ち止まった。
「さあ、盗ったものを返しなさいよ~」
「返せと言われて返す人なんて見たことあるわけ?返すわけないじゃん!さあそこをどいてもらおうかしらね」
忍びの女は手のひらを合わせて力を込め始めた。
すると、合わせた手のひらから湯気のような煙が立ち込めた。
何かを感じ取った女の子はすぐさま行動に出た。
「返さないなら力ずくで返してもらいま~す!」
女の子は掴んだその手に力を込めると、それを合図にピンク髪の子は忍びの女目掛けて勢いよく飛び掛かる。
目前まで迫ったピンク髪の子は両手を広げて捕まえる構えをとる。
そして触れる直前、忍び装束の女は手を合わせたまま真上に飛んだ。
「ちょっとあんた!せっかちなの?少しは待ってもいいんじゃないの?」
「泥棒に猶予を与えるバカはいないよ~。ふうちゃん、ジャンプよ~!」
ピンク髪の子は上を向き、宙に舞う忍びの女へ向けて勢いよく飛び上がった。
忍びの女の合わせた両手のひらからは白い煙がもくもくと立ち込めている。
「火力はこれぐらいでいいかしら。さあ、焼け死ぬ時間だよ!」
勢いよく下から迫ってくる2人に忍びの女は手のひらを向ける。
射程圏内に入ったと確信した女は叫んだ。
「ドッカーン!」
空中で爆発が起きた。
静まり返った住宅街での突然の爆発音に、電灯を付けたり窓から爆発場所を覗く住民が何人も現れていた。
屋根の上に着地した忍びの女は相手の出方を伺う。
爆発に巻き込まれた2人はそれぞれ別の方向へ吹き飛ばされていた。
「爆発するなんて・・・このまま落ちるのはまずいわね~、ふうちゃん!」
女の子は意識を集中する。
すると、ピンク髪の子の目がピンク色に光る。
その途端、彼女は消えて女の子の目の前に現れた。
女の子はピンク髪の子に抱え込まれて着地し、落下の衝撃を回避した。
女の子は抱えてくれたピンク髪の子から屋根に降りて、目の前にいる忍びの女を睨みつける。
「あなた、ただの泥棒くノ一じゃなかったの。魔術を使うなんて一体誰なの?名乗りなさいよ~」
「質問で返すのはあまり好きじゃないんだけどね、名乗れと言われて名乗る人をあなたは見たことあるわけ?」
「だったら吐かせるしかないわね~。ふうちゃん、ご~!」
女の子は忍びの女に指先を向けると、彼女に標準を定めたピンク髪の子は飛び掛かった。
忍びの女もまた向かってくるピンク髪の子を迎え撃とうとする。
忍びの女は煙の出た手のひらで張り手のように突き出し、ピンク髪の子は張り手をかわしながら反撃で殴りにかかる。
しかし、忍びの女はその身でかわし更に反撃に出る。
お互いにそれぞれの構えで攻撃を繰り出すが、決定的なダメージは与えられずにいた。
「互角か。それなら・・・」
忍びの女は足元の屋根に張り手をする。
途端に爆発が起きる。
距離を置いて戦いを見守っていた女の子は、爆風を防ぐために両腕で顔を覆う。
爆風が耐えられる程度まで弱まると、女の子は敵を確認しようと目を向けるが、爆発後すぐに飛び出していた忍びの女は既に近くまで接近していた。
「あの子を倒さなくてもあんたを倒せば問題ないんでしょ?これで終わりね!」
張り手が女の子に迫る。
(くっ、間合いが取れない。避けられないならせめて・・・)
女の子は左手で張り手を受けた。
それと同時に身体を捻り、反対の手で忍びの女の腰に手を伸ばした。
再び爆発が起きる。
「手ごたえありだよ。もうその腕は使い物にならないと思うけどどうするの?まだ戦うの?」
粉塵がまだ舞う中、女の子は答える。
「遠慮しとくよ・・・さすがにもう戦えない~」
「そう、じゃあ逃がしてくれるのね」
「これを置いて逃げるの~?」
女の子は爆発の直前、忍びの女からかすめ取った腰袋を見せる。
「いつの間に!?ちょっとあんた!それ返しなさいよ!」
「質問で返すのは私もあまり好きじゃないんだけどね~、泥棒に返せと言われて返す人をあなたは見たことありますか~?」
忍びの女は女の子を睨んだ。
「はー。もう怒ったからね!あんたは死刑よ!」
忍びの女は駆け出した。
こちらに駆け寄る忍びの女を見据えながら女の子は考える。
(ダメージもそうだけどマナがもうすぐ切れちゃう~。魔術を使うなら捕らえるのは私じゃ手一杯だし、これも取り返せたから一旦下がろう~)
女の子は意識を集中する。
呼応するようにピンク髪の子が女の子の目の前にワープする。
ピンク髪の子は女の子を担いだ後、ものすごい速さで走りはじめ、忍びの女は彼女たちを見届けるほかなかった。
「くそっ失敗した。絶対に奪い返してやる」
◇◇◇
「・・・ということがありました~」
お城の大広間では、この町を統治している領主とそのサポートをしている祭司マリーンがホルマの報告を聞いていた。
「領主様、いかがいたしましょうか?」
「うーむ。各地に魔物が現れ始めておる原因が未だ判然とせん中、白城町にも魔物が出没してしまったのは気の致すところではあるが、救援要請を反故には出来ん。直ちに救援隊としてホロを向かわせよ」
「かしこまりました。ホロ様には諸々の件、私からお話しておきましょう」
「宜しく頼むぞ。そしてホルマよ、此度の任務ご苦労であった。何か申しておきたいことはあるかの?」
「はい領主様。忍び女を特定出来ましたら私に捕縛の任をお与えくださいませ~」
「そのようにしよう。特定が済めば連絡を入れよう。他にはあるか?」
「いいえ領主様。他は特にございません~」
「そうか。ならばもう下がって休みなさい。明日からの息子の護衛も宜しく頼むぞ」
「了解しました~」
ホルマは領主とマリーンに頭を下げ、大広間を後にした。
「領主様、白城町の守りはいかがいたしましょうか?」
「控えておるシールドレインは誰がおるのだ」
「息子様の遠征にイアとホルマ様が同行される予定ですので、ニマ様とハニア様の2名です」
「2人か・・・いささかの不安は残るが仕方がない。2人に町の護衛を伝えよ」
「かしこまりました。それと、包囲陣の展開は現状のままでよろしいでしょうか?」
「現状のままで構わん。ゲートをすり抜けた件については検討中だ」
「魔物がゲートをする抜けるなんて前代未聞です。町民の安全を確保するためにも早期の解決が望ましいかと思われます」
「分かってはおるが現状は何も浮かばぬ故、例の残滓結果を待ってみよう」
「かしこまりました。それと兄上様の件ですが・・・」
と、話し合いを進める中、大広間の扉がバン!と開く。
「失礼します!お父様じゃなくて領主様、大事な大事なお話がございます!今はお時間ありそうに見えますのでお邪魔させていただきますね!」
「これはこれは、ニマ様。いかがなされましたかな?」
「マリーンさんこんにちは!今日は領主様にお話しがあって来ました!」
「左様でございますか。ですが今は少し・・・」
「別に構わんよ。ニマよ、先程の魔物掃討の件はご苦労であった。何か話があるとな、申してみよ」
「ありがとうございます!話というのはですね・・・ごほん。領主様、いえハル様のお父様。私とハル様はこの度お付き合いをすることになりました!ですので明日のハル様の遠足、私も同行致します!」
「な、何い!?」
領主と祭司マリーンは驚いた顔をしてニマを見た。
面白いと感じていただけましたら是非とも評価をお願いします!
魔術と魔法はニュアンスが変わります。
(目玉焼きの黄身が魔法で白身が魔術な感じです)
ストーリーに混ぜて解説パートを作るので楽しみにしていてくださいね。