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使える魔法はセーブとロードとリセットです。  作者: ちさめす
小説世界 白城町編
12/45

父と子①

思い出話についてはサクッと済ませたいので、会話形式をやめました。


◇◇◇


白城はくじょうと呼ばれるこのお城は、白岩石はくがんせきという鉱石をレンガのように積み上げて・・・」


「なあサンマ~。ティッシュ詰めやらせてよ」


「急にどないしてん?暇なんか?」


「暇になった」


「いやいや、サモやんの話はちゃんとき聞いとけって!ワイら補習組は次のテストで落ちると落第やで!?」


「白城と同じ造りの外壁には魔除けの包囲陣が展開されており・・・」


「それでも飽~き~た~もーん!」


「かーっ!飽きたってなんやねん!よう聞けトウマ、次も赤点とってみ?かろうじて繋がってる首の皮も引きちぎれるで!?」


「貴様ら!うるさいぞ!」


「すんません!・・・ほらトウマ、ちゃんと話聞こうや」


「ちぇっ、つまんないのー!・・・あれ?ロイ?ロイじゃん!久しぶり~!」


「トウマじゃないか!サンマも久しぶり!」


「かーっ!ロイやん!おのれ元気にしてたんか!?」


「元気にしてたよ。・・・先生、お久しぶりです」


「久しぶりだな、ロイにハル」


「えっと、お、お久しぶりです」


「おいトウマ!聞いたか!?今ハルって!?」


「聞いた聞いた!でも、噂とは全然違うくない?」


「確かにほんまやな。ほな別人か?」


「もしかして・・・白城町に住んでるハルって人は実は2人いるのかも!」


「なんやて!?ほならもう1人のハルってのがでかっ腹の・・・」


「貴様らうるさいぞ!無駄口を叩いていないでさっきの話をちゃんとメモする!テストに出すぞ」


「し、してますがな!・・・なあロイ聞いてくれよ。さっきまで魔物で大騒ぎやったのに、落ち着いたと思うたらすぐに補習これやで!?切り上げて帰らんあいつは普通やないって!」


「サンマ、聞こえているぞ」


「ひぃぃ!?」


「はは・・・じゃ、じゃあ俺達は授業の邪魔になりそうなのでこれで失礼します」


「そうだな。ロイ、事情は聞いているから私からはなにも言わんが、君の練度は評価しているんだ。いつでもいい、アカデミーには必ず戻って来い」


「分かりました」


「ロイ!?なあロイ置いていかんといてえや~!?」


「たまにはアカデミーに顔出してよ!みんな戻って来るの楽しみにしてるんだから!」


「そうだな。それじゃあ近いうちにお邪魔するよ」


僕達は、3人と別れて大広間に向かった。


◇◇◇


「ところで、レイリンの姿が見えないがどこに行ったか知っているか?」


「レイリンならここに来る前からいなくなってまっせ、サモや・・・サモエド先生」


「またか。・・・それじゃ授業を続ける」


「かーっ!なんでやねん!なんでレイリンだけいつも特別待遇やねん!」


「授業聞いとかないとまた怒られるよ?」


「トウマにだけは言われとうないわ」


「・・・それから何百年と続く歴史の中で、治安、政治、観光、どれをとっても素晴らしい成果を・・・」


◇◇◇


「・・・今朝もハルとお父上は口喧嘩をしていたんだ。その後に、狼が襲撃してきたことでお父上はハルの身を案じて、やっとハルが帰ってきたかと思えば、怪我で気を失っているときたもんだ。おまけに記憶喪失ともなれば、そのショックは計り知れないよ。事実、報告の際に同席していた奥様は今も休んでおられる」


「とても大事に思ってくれてるんだね」


「そうだ。お父上も奥様もハルの事を本当に大事に思っている。だから、元気な顔を見せて安心させてやりなよ」


「分かった」


(父さんの気持ちか・・・)


僕は歩きながら、父のことを思い出していた。


◇◇◇


・・・僕には父がいた。


母と3人で幸せに暮らしていた。


父はとても優しかった。


父の転勤もあり、僕が小学校に入学した当初、友達はいなかった。


父は毎日仕事で忙しいはずなのに、PTAでお菓子を配る許可まで取って、月に何度か友達を作るためのパーティを開いてくれた。


クラスの子にも、親にも、先生にも父は尊敬されて、父のおかげですぐにたくさんの友達が出来た。


僕の為に父はいつも頑張ってくれた。


僕は、そんな父が大好きだった。


ところが、僕が小学校に入った年の夏、父は交通事故で死んでしまった。


夏休みの間にも関わらず、たくさんの人が参列に来てくれた。


急な出来事で理解が追い付いていなかったのか、僕は葬式では涙が出なかった。


その日の夜、家で母が泣いているのを見た。


僕が後ろからそっと抱きしめると、母は振り返って僕のことを抱きしめ返した。


母の涙とふるえを感じた。


その時、初めて父がいなくなったのだと理解して、僕はたくさん泣いた。


母は言う。


父は幸せだったかな・・・一緒に暮らせて、幸せだったかな・・・。


僕は、母の言葉に答えられなかった。


ただ、泣くだけで、母に対してなにも答えてあげることが出来なかった・・・。


◇◇◇


「・・・着いたよ。ここにお父上がいらっしゃる」


大きな扉を開く。


「おお、ハルよ!無事でおったか」


凛とした白いひげの白髪の男は、とても温かみのある優しい眼差しを僕に向けていた。


「と、父さん。心配をお掛けしまして、申し訳ございません」


「ハル・・・。んん、ごほん。頭を上げなさい。ハルはなにも謝ることはないのだ。・・・怪我の具合はどうだ?気分は悪くないか。何かこう思うことがあればなんでも良い、申してみよ」


「だ、大丈夫です。僕はこの通り無事でございます。ご安心ください」


「左様か。本当に大事に至らず何よりだ」


「領主様、例の件を息子様に」


領主の横で、白服に緑の線が入った司祭のような格好の男が口を開いた。


「そうであったな。ハルよ、本当は回復してからこういった話をしたかったのだが、時を急ぐのでな。・・・ハルよ、私は政府より特命を預かっておる。遠征になるが故、しばしの間町を離れることになった。ハルにはその間、ここに残り先の魔物による襲撃事件の解明に努めてほしいのだ」


「領主様が町の外へお出になられるのは危険です!いつ魔物が現れてもおかしくない状況なのですよ!代わりの者ではダメでしょうか?必要とあらば私めがその任、務めさせて頂きます」


「ロイよ、そなたの仕事はハルに従事することだ。使用人としてのその責務を放棄させるわけにはいかん」


祭司は慌てた様子で僕を見た。


「心配しなくとも良い。もちろん、遠征には護衛を付ける予定だ」


「ですが領主様!」


「ロイ様のお気持ちも十分に伝わっております。しかしながら、代々領主家の血筋は14歳を迎えた際、解呪の儀を経て七曜しちようの加護をその身に受けます。その血と名誉にかけて、今回も特命は遂行せねばならぬのです」


「その通りだ。ロイよ、留守の間、ハルを任せた・・・ごほん、ごほんごほん」


「大丈夫ですか、領主様!」


「・・・ハル、お父上はここのところ激務で全く休めてはいないんだ。そのせいで持病も悪化してお身体を崩されている。とても、遠征出来る状態じゃない」


「そんな・・・」


目の前で身体を崩すハルの父さんと、優しかった父が重なる。


「ごほん、ごほんごほん。・・・取り乱してすまない。出発は明朝に発つ予定だ。私が不在中の国政については全てこの祭司マリーンに任せてある故、なにも問題はない。先の魔物襲撃の件についてもマリーンから話を聞くがよい」


はい、と言えなかった。


「・・・よいな?ハルよ」

面白いと感じて下されば評価をお願いします!

すごい励みになりますლ(╹◡╹ლ)

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