父と子②
一人称の書き方ってほんとに難しい(☍﹏⁰)
(父さんの遠征を黙って見守るのか?父さんが遠征に出てしまうと死んでしまうかもしれないのに?)
(多分ここでの選択肢は、この町に残るか僕が代わりに遠征に出るかだろう)
(ハッピーエンドを目指すなら僕が代わりに行くことが正解なんだろうけど・・・)
僕は鈍く痛む腕に手を当てた。
(僕はこの本の世界をクリアしたい。冒険したいという単純な好奇心もあるけど、この物語をクリアすることで僕は4つ目のロードが使えるようになる)
(その力を使って月乃の意識世界をクリアしようと、僕は竜馬と約束したんだ。だからほんとはここで引きたくはなかった)
(でも、この本の世界は、危険だ。今までの世界とは明らかに違う)
(この世界に来て、ものの数時間で魔物とかいう狼に腕を噛まれるなんて誰が想像出来た?遠征に出るということは、そういった危険と常に隣り合わせだ。そんなの、命がいくつあっても足りないよ)
(・・・この冒険を続けて行けるのか?そうだよ、無理なら別の本の世界を冒険すればいいんだよ。なにも、この本の世界にこだわる必要なんてないんだ)
(それよりも、今はまず栞の玉を探さないと。見つけないことには現実に戻れない)
(もしも、見つけるまでに死んでしまったら・・・。やっぱり僕は遠征には出れない。危険すぎる)
「ハルよ、どうした?・・・ごほん!ごほんごほん!」
「領主様!一度お休みになられてはどうですか!?」
「構わん。それに今はハルと話しておるのだ。休んでなどいられるか」
「し、しかしながら領主様!この後も予定が」
「分かっておる。私なら大丈・・・ごほん!ごほんごほん!ごほんごほん!」
「お父上!」
「父さん!」
また、ハルの父さんと父が重なる。
(父の哀しみを・・・繰り返してはいけない)
(父を失った時、僕にはなにも出来なかった。でも、今の僕はあの時とは違う。僕の行動で、父さんを救うことが出来る)
僕は大きく深呼吸した。
(本の世界をクリアすると、僕が転移していたその人物は僕が転移する前の元の状態に戻る。僕がしてきた行動が、あたかもその人物が自分自身で選択して行動してきたかのように、全ての経験がその人物に帰属する)
(だから、僕がここで父さんを救うことは、ハルがハルに戻った時、ハルは父さんを失わなくて済むということだ)
(ハルに僕と同じ哀しみを背負わせてはいけないんだ。大切な人を失うことは、とても辛いことだから・・・)
◇◇◇
・・・僕が小学生になる少し前。
「父!もうすぐ入学式だよ。ねえ!新しい友達はどうやったら出来るの!」
「好きなように接してみなさい」
「だめだったら?」
「それでだめなら、どうしたら良かったのかを考えてみなさい」
「考える?」
「そうだよ。なんでだめだったんだろうって考えて、それからまた好きなように接してみなさい。そうすると、いつの間にか向こうも好きなように接してくれるんだ」
「わかった!好きなようにしてみる!」
「いいかい?仲良くしたいって気持ちは伝わるんだ。だから、一緒に好きなことをやるために、まずは自分の好きなように接するんだよ」
「そしたら友達が出来るの?」
「もちろんそうだよ。だから、もしもこの先迷うことがあれば、まずは好きなようにしてみなさい。きっとすべてが上手くいくから」
◇◇◇
「・・・やってみるよ、父。僕の好きなように、やってみるよ」
「ハル?」
(・・・そう。今の僕はハルだ。だから、ハルの父さんは僕の父さんだ。僕は、父さんを救いたい)
「父さん、僕が行くよ。政府の特命は僕がやるよ!」
「いかんぞハル!危険だ。先の魔物襲撃による負傷や記憶喪失で満身創痍であろう?それにハルは七曜の加護を受けてはおらん。ここは親の私に任せておれば良いのだ。ハルよ、それは無用の心配なのだよ」
「違うんだ、父さん」
「違う、とな?」
(ここに来るまでに、ロイから前のハルは周りに対してかなり反発してたと聞いてる。それは、ハルの部屋を見て容易に想像出来た。それなのに、僕を見る父さんの目は、紛れもなく昔父が僕に向けていた優しい目だった)
「僕は、僕のしたいようにする。僕は父さんが大事なんだ。だから父さんを守るために、僕が遠征する」
(僕が父にしてあげたかったことを、父さんにすることで叶えられる。これは自分の問題としてやらなくちゃいけないんだ)
「しかし・・・」
「領主様、信じましょうよ、息子様を。これまでのように、今も信じてあげましょうよ」
「領主様。このロイ、使用人として最後まで息子様にお供し、特命を経て無事に帰すことをここに誓います」
「マリーン、ロイまでもそこまで申すのか。・・・ふう、私の負けだ」
「父さん、ありがとう。僕、必ず成し遂げてくるよ」
「ハルよ、そなたを使節団長に任命する。出発は明朝。護衛の者に特命の内容を伝えておるのでな、今日はゆっくりと休むがよい。ああそれと、長旅になる故、出発の準備を怠るでないぞ」
◇◇◇
領主とマリーンは、話を終えて大広間から出ていく僕とロイを見送った。
「息子様、かわりましたな」
「見違える程にかわった。これほどまでに成長していたとは、正直驚いておる。・・・これまでにいろいろとあったが、信じてきて良かった。本当に良かった」
「これほどの愛を感じられて、きっと息子様は幸せですよ」
「ああ、そうだと良いな。・・・ハルよ、必ず生きて戻れよ」
「もちろんですよ」
領主の言葉に、マリーンがそう答えた。
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