寒冷化してほしい
世界も日本も温暖化が進んでいた。
予想を超えるスピードで温暖化が進んだ原因は、人口増加と経済成長による二酸化炭素の増加である。
科学技術の進歩で解決しようとしたが、未だ為せずにいる。
昔、地球の温度が下がり、恐竜が絶滅したことがあった。
諸説あるが、隕石が落ちたことが原因と考えられている。
2100年、現在、誰もが思った。
温度が下がってほしいと、その願いは災厄の形で聞き届けられた。
隕石が落ちてきたのだ。
そのとき、桜は凍った。
人類は桜(日常)を取り戻せるのだろうか。
2099年3月
桜が開花を始めた。
付近の草は生い茂っている。
今日は夏日らしく、夕日が傾いているのに気温は30度を超える。
陽炎が地面から出ていた。
高校生が部活の帰りに、自動販売機に寄りながら、話をしていた。
「はぁー。暑いぜ。ポカリスエットが美味い」
ポカリスエットを美味しそうに飲む悟(さとる)。
「確かに美味いね。こんなに暑いなら」
海人(かいと)は自動販売機でアクエリアスを買い、いつものように美味しそうに飲んでいた。
「桜が開花し始めてこの暑さ。体力奪われるぜ」
筋肉から滴る汗をタオルで拭く。
「今年の夏も暑そうだね。何人熱中症で倒れるかな」
顔が曇りがち心配そうになる海人。
「いつもと同じ5人やろ」
悟は軽快に返してタオルを絞る。
「寒冷化してほしいな」
「寒冷化してほしい気持ちは皆さん思ってるぜ。でも、無理やろ」
「現実的に無理やね」
「なんで言ったんや、海人」
「気持ちが出たんよ。そういえば、昔、気候生存戦略が出されたの知ってる」
「知らん」
「えっ、政治経済の授業で習わんかった」
「教室、クーラー効いてて、気持ちよくて寝落ちしてしまったところや。なんや」
「簡単に言うと、どんな気候でも生き抜けるように政策を行なったこと」
悟はびっくりした後、だるそうな顔に戻った。
「それで、この暑さがなんとかなればいいのに」
「やっぱ、どんな対策を打っても、気候は変わらないよね」
「無駄やったことにかわりはない」
「でも、都市の海岸線は変わってないよ」
「マジ、有能やん」
悟は自虐的に笑う。
「お疲れ、海人」
「お疲れ、悟」
海人は、悟と部活が同じでテニス部に所属している。
ダブルスでは、一緒に組み、県大会では上位8位になったことがある仲良しペアだ。
いつものように雑談をし、帰途に着いた。