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デストロイエンジェル  作者: 零時桜
第八章『喪失、そして』
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第八章『喪失、そして』 ‐ Ⅴ

「やっほー! タカトくんとその取り巻きの執行兵ちゃんたち。タカトくぅん、痛かったかな? マジカル・キララちゃんのトリプタは!」




 怪しげな笑みと、揺れる金色のツインテール。手には、クレインたちのものと同じ輝きを放つ、ボウガンのようなヴァリアヴル・ウェポン。


 ディカリアの構成員、キララの姿がそこにあった。




「あなたは、あのときの……?」


 最初に声を上げたのはクレインだった。それもそのはず、夏祭りのあの日、他校のブースで行われていたライブ。その主役こそ、今目の前にいるキララだったからだ。僕にいきなり射かかった後だというのに、キララは普段通りの口調で、クレインに向かって話しかける。


「そこのルーシャによく似た子、キララのこと覚えてるのー? ありがと! 改めまして、マジカル・キララちゃんでーす! でも残念、今日はライブじゃなくて、タカトくんの命をもらいに来たんだー!」


 新たな矢を、手にしたボウガンへと装填する。彼女の狙いは、あくまでも僕だ。ホノカに制され、僅かに出していた頭も遊具へ隠す。


「タカトの命を? 笑わせてくれるわ。飛び道具を持ったところで、あなたひとりに何ができるというの?」


「んー、ルーシャもそうだったけどさー、どうして目の前のことしか見えてないのかな? その辺は姉妹なの? あぁ、でもそっちの子も気づいてないみたいだし、後輩ちゃんたちはこういうレベルってことだよねー! あのヒトヨを殺したって聞いたからどんなに強いかと思ったけど、大したことないのかも――ね?」


 会話しか聞こえてこないが、キララの言葉から彼女以外の存在がいるのはほぼ確定事項だ。右肩の痛みは当然無視できるものではないが、僕も辺りに目を配らせる。


 ササコ先輩か、もしくは、アミナが直接来ているか。既に囲まれている可能性もある。


「タカト、安心しろ。奴らは私が斬る。お前はここで――」


 サトラを左手に持ちつつ、僕を安心させるように言葉を掛けるホノカ。彼女たちにばかり頼っている状況ではないが、この怪我では何もできない。こくりと頷こうとした僕の視界に、何か黒いものが飛び込んでくる。


「ッ、ホノカ、後ろ!」


「何っ!?」


 僕の上げた声を頼りに、すぐに後ろに向き直りサトラを振るうホノカ。鈍い金属音の残響。ホノカに向かって刃を振り上げた何者かは、攻撃が防がれるやいなや、高いジャンプで素早く距離を取りキララの近くへと着地する。


 ――異質な存在だった。間違いなく、ヒドゥンが放つ光。禍々しくも、何処か美しさを感じる。


 特筆すべきは、それが人型だということ。漆黒に染まった身体の中、怪しげな相貌だけがギラリと光っている。手には歪曲した剣のようなものを携えており、その全てが黒い影のように染まっていた。


 当然、クレインとヒメノも臨戦態勢のままその存在を見据えた。そんな姿をさも面白そうに笑うのは、ボウガンに矢を番えたキララだ。


「あは、ようやくお出ましだねー。ヒドゥン、コハク型。キララも見るのは初めてだけど、ヘンな獣の型よりはよっぽど強そうだよね?」


「コハク型? 聞いたことがない……新しいヒドゥンの型なのか?」


「あったりー! コハク型はね、他のヒドゥンとは違って、自分の意志を持って行動するんだよ。目的はもちろん、タカトくんを殺すこと。そのために、まずは邪魔な後輩ちゃんたちを殺しにかかったってところかなー」


 ただ本能のままに襲い掛かるグルタ型などとは違う。表情も見えず、まるで本物の影の人間を相手にしているようだ。


 しかし。そんなコハク型にも、もちろん弱点はある様子だった。未だに矢の突き刺さった肩口を抑えながら、ぼんやりと見えるその弱点を、彼女たちに向け放つ。


「みんな、コハク型の弱点は左胸だ!」


 そう。人間でいうところの心臓部分が、明らかに光を帯びていた。ヒメノが弓矢で狙撃できれば、被害を抑えられるはず。


「分かった。私が奴と斬り結ぶ間に、ヒメノに仕留めてもらおう……タカトはここにいろ。すぐに終わらせて戻って来る」


 頼もしいホノカの声。彼女はすぐにコハク型の前へと躍り出ようとする。しかし、それを許さなかったのはキララだった。


「はぁ……本当に前しか見えてないんだね。キララ、興ざめかも」


 振り上げられたサトラはコハク型へは届かない。キララがボウガンの矢を数発、ホノカに向け発射したからだ。


「く、ッ!」


「あはっ、タカトくんの頭を狙い撃ちするのも時間の問題かなー!」


 遊具の影からうかがう限り、ホノカは被弾していない様子だ。しかし、強力な飛び道具に阻まれ攻めどきを失っている。それは、クレインも同様だ。キララは位置取りを細かく変えつつ、ホノカとクレインを牽制するように矢を放つ。この状況ではヒメノも思うように照準が絞れない。


 一方のコハク型は、ジッと一点を見つめるように動かない。僕の首を刎ねる算段を練っているのか、と背筋が凍る。


「……埒が明かないわね。ヒメノ、あのお子様からよ。奴の動きを止めれば、少しは状況が打開できるはず」


「ええ、やれるだけやってみますが、思ったよりも素早いですね。これでは、当たるか当たらないか――」


 クレインとヒメノの会話が聞こえたが、そこで何故かキララの動きが止まった。


 新しい矢を番え、クレインに鏃を向ける。


「お子様? 後輩ちゃんの分際で生意気……キララ、怒ったかも」


 先程までとは違う低めの声。言葉通り、怒涛の攻撃がクレインに浴びせられた。ボウガンの性質上、銃のように矢を連射することはできないが、何本かの矢を一度に撃ち出すことで広い範囲への同時攻撃を可能にしている。弾幕を張られている状況、クレインも矢を弾きながら応戦した。


「はっ、勝手に怒ってなさい。でも、アミナの情報は吐いてもらわないと。鎌女は吐く前に死んだけど」


「アミナの情報? 何言っちゃってるのかなー、そんなの教えるはずないじゃん。ルーシャの仇討ちのつもり? やめておいた方がいいと思うけどね、クレインちゃんじゃアミナには敵わないから」


 尚も飛来する無数の矢は無慈悲にクレインを狙う。彼女は矢をアマトで往なしつつ、ホノカとヒメノに合図をした。


「ご忠告、感謝するわ。でも、そんな戯言を真に受けてる場合じゃないの。それに、私ひとりじゃない。ホノカ、ヒメノ!」


「言われなくてもッ……!」


 キララの攻撃がクレインに集中している今が好機だ。地面を蹴るホノカ。目標はもちろん、コハク型。


 ホノカとコハク型が刃を交えるとほぼ同時に、ヒメノのヴァリアヴル・ウェポン、ネブラから矢が放たれる。こちらの狙いは、キララだ。

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