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デストロイエンジェル  作者: 零時桜
第八章『喪失、そして』
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第八章『喪失、そして』 ‐ Ⅳ

 執行兵三人が準備した夕食を摂り、具体的な作戦を立てると、僕たち四人は夜の帳が降りきった外へと歩を進めた。時刻は日付が変わるか変わらないか程度、辺りに人影はないに等しい。ミオリの疑いを晴らすために向かいマンニット型と戦い、そしてクレインとホノカが激しい戦闘を繰り広げたあの公園へと向かう。


「クレイン、生徒会長はどんな武器を使うんだ?」


 昨日の戦闘を目撃していないホノカ。既に日本刀型のヴァリアヴル・ウェポン、サトラを生成し、準備は万端だ。


「そうね……ホノカとは趣向が似ているかもしれないわ」


「なんだ、それは。勿体ぶらずに教えればいいものを」


 昨夜の戦闘でササコ先輩の一振りにより行動不能にされたことを今でも根に持っているのか、クレインの反応は芳しくない。そんな彼女に変わって僕が答える。


「ホノカ、僕が教えるよ。ササコ先輩の武器は、杖みたいな見た目で、君たちの武器や僕らの携帯の交信を妨害する効果があるみたいなんだ」


「なるほど、それでミオリや食料さんにあれほど連絡をしても通じなかったわけですか。ようやく合点がいきました」


 弓型のヴァリアヴル・ウェポン、ネブラを生成したヒメノが、少々驚いたような口調で声を漏らした。最初からその特性を知っていれば、現場にもっと早く向かうことができた。だが、今となっては後の祭りだ。


「それは分かったが、その杖と私にどんな共通点があるんだ?」


 先ほどのクレインの言葉が気になるのだろう、ホノカが首を傾げたので、それに関しても僕が答える。


「えっと……実はあの武器は、杖と見せかけた仕込み刀なんだ」


「仕込み刀? ということは、二段構えの武器だということか。その情報を知らずに斬りかかっていたら危なかったな。タカト、感謝する」


 まさしく昨日の夜、ササコ先輩の一撃を受けたクレインはホノカの台詞にぴくんと反応した。


「ふん……まあせいぜい気を付けなさい、ホノカ。生徒会長は強いわ。逆に、どうしてあそこで私に手を下さなかったのかが疑問なくらい。鎌女の台詞の件もあるし、まだまだ分からないことが多いわ」


 ササコ先輩が、ルーシャさんと何かしらの接点を持っていたこと。同期だからと言ってしまえばそれまでだが、それ以上に深い繋がりを、執行兵の世界を知らない僕でさえ感じた。謎は深まるばかりで、やはり先輩から直接話を聞くしかないのだろう。


 しばらく公園を中心に捜索を重ねたが、ディカリアの面々もヒドゥンも見つけることは出来なかった。


「成果なし、ですか。あれほど意気込んだのに悔しいですね」


「こういう日もある。ヒメノは悔しいだろうが、逆に喜ぶべきだ。このままヒドゥンもディカリアも現れなければ、それが一番なんだがな」


「そう、ですね……ですが、彼らは必ずやってきます。食料さんの命を狙って、必ず――」


 何かを唱えるように言うヒメノ。そんな彼女の言葉は、思わぬ予言となって、僕に降りかかる。




 ――暗闇の中で、何かが光った。僕の正面には、クレインも、ホノカも、ヒメノもいない。つまり、遮るものは、何もない。


 その何かを認識した瞬間、僕の右肩を鋭い痛みが襲った。


「え……?」


 遅れて、着ていたシャツを赤く染め上げていく鮮血に気づく。目を向けると、ヒメノのものよりも太く短い矢のようなものが、深々と突き刺さっていた。


「っぐ、あああッ!!」


「タカト!?」


 僕の声に気づいた瞬間、すかさず地面に膝を突いた僕に肩を貸してくれるクレイン。ホノカとヒメノも目を見開く。自分が何者かに矢で射られたという事実。しかし、それを認識できるほど頭が追い付いていない。右手が、体中が、震えている。


「い、ッ……! ご、ごめん、クレイン……」


「矢、なの? ヒドゥンじゃないわ、ディカリアの連中!」


「待て、まずはタカトを安全な場所に――」


 サトラを左手に持ち替えて、近くの遊具の影まで僕の肩を持ってくれたホノカ。幸い急所は外れているようで、零れる血もそれほど多くはない。ただ、自分が狙われていることを改めて実感して、僕の頭の中は混乱を極めていた。


「ありがとう、ホノカ……ッ、気を付けて、君たちも狙われるかも――」


「今は自分の心配をするんだ、君が死んだら全てが終わってしまう。我々も、人間の世界も……クレイン、ヒメノ! 気を付けろ、敵は近くにいるぞ!」


「言われなくても分かってるわッ!」


 遊具の影から頭半分だけ出し、クレインとヒメノの動向を注視する。既に各々の武器を構え、臨戦態勢に入るふたり。ホノカは僕を守るよう、辺りを警戒する。暗闇の中、公園の外灯だけが全ての頼り。このまま敵が現れない可能性もあったが、遠くの木陰から姿を現したのは、先日邂逅したあの少女だった。

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