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ゴブリンの巣窟調査 その1

「ここだよね?」


森に入り、敵を出来る限り避けながら目的地周辺へとたどり着いた。ここまでの道中はゴブリンに加え成人男性並の大きさの蜘蛛など、苦手な人は苦手だろう敵が現れている。


そして彼女の前には地下へと続く薄暗い自然の洞窟が見えていた。松明など明かりとなるものは用意していないため、戦闘になると苦労することになるだろう。


「街まで遠いし……行くしかない、かな」


少し不安になりながらも彼女は洞窟へと入る。中は僅かに光るキノコがまばらに生えているため、完全に真っ暗と言う訳ではなさそうだ。


しかし乱雑に積まれた木材や、少し大きめの岩がところどころにあるため死角は多い。周りを見渡しながら探索していると、前方に一つの影が見えた。


「ゴブリンだろうけど……まだわたしに気づいてない?」


小声でそう呟いてしまうも、影が振り返ることはない。加えて周りには屈めば身を隠せそうな場所があった。足元には小石も落ちている。


(ダメだったら戦わないと……)


少し不安になりつつも小石を拾い忍び足で岩の影に隠れて、影より右奥へと投げた。


「グギャ……?」


狙いは少しズレたが、ゴブリンは首を傾げ小石が落ちた場所へと首を傾げながら向かった。今が側を通るチャンスだろう。


(気づきませんように……ふぅ……)


そして物陰や死角を利用して、こっそり通り抜けることに成功した。なおここで見つかると増援を送られ、不利な戦闘になってしまう。


巣窟探査ではステルスか、見つかっても正面突破する力を求められる。しかし数が多く運が悪いとボス級の敵も出てくるため、基本的にはステルス行動が推奨されているのだ。


「こっそりと行動しないとダメなクエスト……頑張らないとね」


そしてこのクエストの流れを理解した彼女は、やる気を入れ直してまた奥へと進んで行く。少し歩くとまたゴブリンが見張りをしている箇所が幾つかあったが、危なげなく無事に通過していく。


順調に進んでいると、壁際に積まれた木材の隙間から小さい横穴があることに気づいた。


「どこに通じてるんだろう? 行ってみようかな」


木材を少しづつどかして、四つん這いでその横穴へと入っていく。小さく見える出口は開けた空間へと続いているようだ。


横穴を出るとそこは見えていた通り開けた空間だが、中央には中には狼らしき小さい白い動物が木で作られた粗悪な檻に入れられていた。


「グギャッ? グギャグギャ!」


「グギャッ!!」


「あっ見つかっちゃった?!」


さらにそこを守るように居たゴブリンが二匹、彼女に襲いかかってきたのだ。


「ま、『マジックアロー』! 『アルカナセット』!」


「グギッ……」


急いで初級魔法を発動させ、剣を持っているゴブリンを怯ませる。その隙にアルカナ魔法の準備を取り掛かる。


もう一体のゴブリンは弓持ちだが、矢を構えるのに慣れていないのか少し時間がかかっていた。


「『アルカナセット・愚者』『アルカナセット・魔術師』からの、『魔泥の銅杯』!」


彼女の方が先に準備が終わり、行動速度低下の泥が撒き散らされる。


「グ……」


「グギャッ……」


「『マジッククリエイト・石』」


そしてゴブリンたちは石は押し潰され、戦闘が終わった。


「増援はなさそうで良かったけど……この子を檻から出さないと」


「わぅっ……」


元気がなさそうな鳴き声をあげるのを見て、木の檻から出そうとするのだった。

読んで頂きありがとうございます。大変遅れてしまい申し訳ないです。

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