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気が強い高嶺の花は夢の中では僕の恋人  作者: nite
夢と現実の彼女の話

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積極性も消極性もどっちも必要

 現実では今までで一番いい雰囲気の僕たちだけど、夢の中ではいつも通りの雰囲気である。


「夢宇!」

「キュン!」


 ひうりがボールを投げて、夢宇と遊んでいる。夢宇は犬のようにボールを咥えて戻ってくるので、ひうりも楽しいみたいだ。


「また夢宇に助けられたのね」

「そうなんだよ。僕の悩みに気付いてアドバイスをくれるんだ」


 アドバイスというか、ただの鳴き声だけど。

 でも、夢宇の鳴き声は脳内に直接響くので、冷静になれるのだ。パニックになったとき、夢宇の声を聴くだけで精神が整うとはいいことだと思う。


「私たちの問題ってあとは何が残ってるのかしら?」

「ひうりの家族問題かな」

「それくらいか…どうしましょうね」


 ひうりはそんなことを言うが、言ってしまえば、僕がひうりに家族問題を知っていることを伝えれば終わるのだ。

 勿論家族問題が解決するわけではないので、それだけで終わりというわけではないのだけど、僕が働きかけることもできるだろう。


「でも、結局家族問題はどうにもならないんじゃない?」

「まあそうなんだけど…」


 今のひうりを助け出すことは難しい。

 少なくとも、今の僕にはなんの力もないので無理だ。


「せめて僕が大学生になるまで待ってくれない?」

「…もうっ、仕方ないわね」


 大学生になればもう少し余裕ができるのだ。

 一人で色々できるようになるわけだし、ひうりのことを精神以外の部分から支えることも可能なはずである。


「それまでは私のことをちゃんと支えてね」

「もちろん。誓うよ」


 少し王子様のような姿勢になって、ひうりの手を取る。

 僕には似合わない恰好ではあるけれど、ひうりはこれがお気に入りらしい。お姫様願望があるだけのことはある。


「現実で私に教えてくれたら終わりなのよね?」

「それで現実のひうりが恋人になってくれるかは分からないけどね」

「なるわよ。大丈夫、私も一樹くんを求めてるんだから」


 ひうりが確信を持ってそんなことを言う。

 一度ひうりに告白を断られているせいで、少し逃げ腰になっているのかもしれない。あれだけひうりから言われていたので、ひうりの言葉を信用できなくなっている可能性もある。


「キュン!」

「夢宇もそう思うわよね。大丈夫だって」


 夢宇と会話するひうり。夢宇は僕よりもひうりに懐いている。


「なら早く教えなさいよ」

「それにも問題があってさ、現実のひうりの夢に対する認識を歪めちゃうかもしれなくて…」


 現実のひうりからすれば、夢は科学的なもので証明できるものとなっている。

 宇迦さんからも言われているので、この夢の世界が空想のものではなくて非科学的なものであると分かっているのだけど、それがひうりの認識を歪めてしまうかもしれない。


「でもりんりんに言ったんでしょ?なら大丈夫じゃない?」

「林さんは第三者だからいいけど…ひうりの場合は実際にここに来るわけじゃん。夢に対する認識が変わっても大丈夫かなぁって」

「心配しないでも大丈夫よ。もしものときはこっちから働きかければいいんだし」


 ひうりは、どうやらさっさと現実で恋人になりたいらしく、僕が懸念事項を上げても大丈夫だと言ってくる。

 僕が心配しすぎなのだろうか。宇迦さんから、この空間は不安定なものだと言われているし、何かイレギュラーが起きたらここが消えてしまう可能性もあるんだけど…


 宇迦さんは、この空間の安定のために夢宇を預けてくれた。そのため、この空間を消失させるようなことがあれば宇迦さんにも申し訳ないというかなんというか…


「そろそろ朝ね…今日、言うのよ」

「え、今日なの!?」

「当たり前じゃない。クリスマスまでに現実での恋人度を上げとかないと、クリスマスデートができないわよ」

「そんな恋愛ゲームみたいな指標を言われても…」


……


 学校に登校したら、僕の机の近くにひうりがいた。

 昨日とは打って変わって、男子たちは平然としているし、廊下に集まっているのも見られない。


「おはよう、佐倉さん」

「ちゃんと名前で呼んで」

「…おはよう、ひうり」

「ええ、おはよう」


 夢で恋人になったときも、こんなやり取りはしていないはずだ。


 まるで恋人になったかのような雰囲気だが、周囲の男子は平然としている。昨日は散々騒いでいたというのに、一体どうしたのだろうか。


「よう、一樹」

「おはよう忠。なんか男子たちが…」

「気にするな。こっちは俺に任せておけ」


 昨日はあれだけ騒いでいた忠も、通常運転に戻っている。

 まだ夢を見ているのだろうか。それとも、並行世界にでも迷い込んでしまったのだろうか。


 忠はひうりに目もくれず男子の輪の中に入って行った。なんかもうここまで来ると怖い。


「ひうり、何か知ってる?」

「え?私は知らないわ。男子たちが妙に見てくることが少なくて楽でいいわね」


 ひうりは日常的に視線に晒されることに慣れているので、目線などあってもなくてもあまり変わらないのだろう。通常運転だ。


「ひうり、ちょっと放課後に話したいことがあるから残ってもらってもいい?」

「話…告白じゃないわよね?」


 小声でそんなことを尋ねてくるひうり。

 事情を説明したあとにまた告白するつもりだから、告白ではないと言い切れないんだけど…


「楽しみにしといて」

「もったいぶっちゃって…」


 ひうりはくすりと笑った。

面白いと思ったら評価や感想をお願いします。体調が完全復活じゃなくて投稿間隔が空いてます(´・ω・`)

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