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気が強い高嶺の花は夢の中では僕の恋人  作者: nite
夢と現実の彼女の話

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ここまで来たら隠す必要はないのでは?

 登校したら、僕の座席にひうりがいた。

 昨日のあれがあったから、気まずくてこっちには来れないかなと思っていたので、少しばかり意外である。


「おはよう」

「…ええ、おはよう」


 見た感じはいつも通り…だけど、やはり気まずいみたい。いつもより言葉に覇気がない。


「おい一樹っ」

「ぐえ」


 その時、僕は襟を捕まれ後ろに引っ張られた。勢いが強すぎて、変な声が出る。

 僕を引っ張ったのは、お馴染みの忠である。忠は僕を教室の外まで引っ張り、ひうりが見えない位置まで来た。随分と焦った様子だ。


「一樹、姫に何をしたっ!」

「なにって…」


 告白したけど、流石にそれは言えないなぁ…忠なら秘密にしてくれるだろうけど、この学校はどこで誰が聞いているのか分からないから。


「朝から姫があんなに乙女モードなんだぞ!?」

「乙女モード?」


 教室を覗いてみるけれど、忠の言う乙女モードとやらが何かは分からない。気まずそうだけど、乙女らしいとは言えないと思う。


「よくわからないよ」

「お前には分からないんだな…俺たちの絶望感が…」


 えぇ…?

 ひうりが誰かに恋したのがわかるから、絶望しているということだろう。誰かっていうと、まあ僕なんだけど。 

 僕の座席で忠の言う乙女モードになっているから、なんとなく察している人が多いということか。


「何したんだよ…まじで…金曜日はあんなんじゃなかっただろ…?」

「うーん?」


 いつもと様子が違うのは、僕が告白したからで間違いないだろう。

 ただ、ひうりが恋をした表情をしている理由はよく分からない。もしかして、今まで僕のことを異性として意識していなかったのだろうか?

 そうだとしたら、ちょっとショックだなぁ…


「僕には分からないよ」

「裏切者!」


 忠に色々言われるけれど、気にしない。そもそも、僕は裏切ってない。

 忠を振り払い、僕は教室の中に入る。僕はまだ荷物を置いていないのだ。


「えっと、中野くん…」

「なに?」


 僕が荷物を置くと、ひうりが話しかけてきた。


「……」

「佐倉さん?」


 僕が呼びかけても、ひうりは俯いたままで、何も言わない。

 その様子を、周囲の男子は敏感に察知して注目している。


「……一樹くん…」

「え?」


 その瞬間、僕の視点は回転して、気がついたら教室の外にいた。そして、僕は多くの男子と涙を流している忠に囲まれた。

 とうとう僕は袋叩きにあうのだろうか。


「一樹ぃ…お前はぁ…」

「忠…」

「本当は殴りたいけど、それをすると姫に怒られるからしないが…」


 先生に怒られる、じゃないんだ。学校だし、先生に気を付ける方がいいと思うんだけど。


「くそおぉ!」


 忠は走って行った。それに合わせて、何人かの男子も走って行った。


 残りの男子は、僕を睨んでいるから、本当に殴られるかもしれないな…

 って思っていたら、どんどん人がいなくなって、最終的に誰もいなくなった。え、何だったの今の。


「えっと、大丈夫?中野くん」

「佐々くん」


 呆然としている僕を見ているのは、今登校してきた佐々くんだ。


「もしかして、昨日のデートはうまくいったの?」

「うまくいった…のかな…?」


 告白は断られたけれど、問題さえなんとかなれば付き合うことができるはずだ。

 ひうりからも好意を伝えられたし、失敗とは言えないような気もする。


「大丈夫、一樹くん…?」


 さらに、教室からひうりが顔を出した。その呼び方はデフォルトにするつもりだろうか。


「…佐倉さんの呼び方、変わったんだね」

「…そうみたい」


 呼び方に関しては、少し佐々くんもびっくりしている。


 まさか人の前で堂々と名前呼びをするとは僕も思っていなかったので、どうしても驚いてしまう。他人の前では恥ずかしいのではなかったのだろうか。


「僕も呼び方を変えた方がいいのかな…?」

「そうしてちょうだい。私はそっちの方が嬉しいわ」


 まるで吹っ切れたようにそう言うひうり。

 昨日は少し重い空気で別れたというのに、どうして急にこんなことになったのだろうか。


「ひうり、ちょっと来て」

「何かしら?」


 ひうりを連れて教室に戻る。

 教室内は、ほとんど男子がいなくなっていた。きっと今頃他のクラスや学年の男子に対して、ひうりの反応を広めていることだろう。きっと次の休み時間にはこの教室に、男子が殺到すること間違いなしだ。


 男子がいなくなった代わりに、女子の視線がこちらに集まっている。流石に、ひうりのこの変化に興味を持たざるを得ないのだろう。

 いつも通り注目を集めながら僕はひうりに話しかける。


「ひうり、急にどうしたの」

「いいじゃない別に。恋人じゃなくても、もっと仲良くなる分には」


 恋人ではなくても、ちょっと特別な関係になるのはいいらしい。ひうりの中での判断基準がいまいちよくわかっていない。

 とはいえ、もっと仲良くなる分には僕にとってもいいことだし、それはいいんだけど…


「それならメッセージとかで言ってくれると嬉しいかな…ああなるから」


 先ほどの男子たちの様相を思い出しながら、そう伝える。僕にとっても驚きなことだったので、男子たちの対応ができなかったのだ。


「それは…勇気が出なかったんだもの…」


 いつもと違って、女の子らしい反応をするひうり。なんで急にそんなかわいいムーブをするんですか…


「ともかく、これからはもっと仲良く、ね?」

「う、うん…」


 それだけ言ってひうりは教室を出て行った。


 男子たちは先生に怒られるまで教室に戻ってこなかった。

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