謝罪しかできないときは、誠心誠意謝罪するべき
剥離骨折とコロナのダブルアタックを受けたので少し投稿間隔があきます
「ごめん!本当にごめんなさい!」
「大丈夫だから、謝らないで」
夢の中にて、僕はひうりの謝罪を受けていた。
あれだけ言ったのに、ひうりが僕の告白を断ったからである。
「一樹くんのことを想いすぎた結果なの!」
「分かってるよ」
夢宇は僕の膝の上にいる。先ほど具現化させたアイスクリームを食べ終えて、膝の上で寝ているのだ。
夢宇には助けられたから、この状況に怒ることもできない。
「はぁ、まさか告白を断るとは私も思わなかったわ」
「一応本人なんだよね?」
「…なんとなーく、一樹くんを巻き込みたくないなぁって思ってたのはそうなんだけど、いざ告白されたら受け入れると思ったのよ」
どうやら、夢のひうりは現実のひうりの判断がわかっていたらしい。断る可能性があるなら、先に言っておいてほしいものだ。
「だめね…ここの私は一樹くんのことがちょうどよく好きだから、告白されても受け入れるんだけど、現実の私はまだ一樹くんのことを想うばかりで、自分のことを大切にできてないみたい」
「なんだか現実のひうりと夢のひうりは別人みたいだね」
「そりゃ別人よ。だって、この私は一樹くんとほとんどの秘密を共有してるのよ?判断が変わることもあるわ」
夢のひうりは、僕に家族のこととかを既に話している。だから、家族のことで悩むとかがないのだ。現実のひうりが断ったのは、家族の問題があるからであり、それが夢のひうりとの結論の相違を生み出したのだろう。
申し訳なさそうなひうりに、どう声をかけるべきかわからないな…
「うーん、明日の…というか朝のひうりは大丈夫かな」
「え?そうねぇ…もしかしたら逃げるかもしれないけど、ちゃんと話しかけてくれない?だって、一樹くんのことが好きだって気持ちはあるんだから。好きな人とは話したいわ」
衝撃が強すぎて忘れていたが、現実のひうりからも僕が好きだって言葉をもらったのだ。本来それは喜ばしいことであり、嬉しいことなんだけど。
少なくとも、これでひうりともう少し深い話ができると思う。ひうりからは拒絶されたけど、家族の話をして溝を埋めなければいけない。
「…その、よければ抱きしめてくれない?」
「ん?いいよ」
膝の上の夢宇を起こさないように、僕はひうりを抱きしめる。すると、慌てたように
「私じゃないわよ!現実の私!」
「あ、ごめん」
僕はひうりから離れようと…したら、ひうりが抱きしめてきた。
「その、私も抱きしめてほしいわ」
「うん」
優しくひうりを抱きしめる。
現実の出来事のせいで夢のひうりも混乱していたのだ。落ち着けるように、優しく抱きしめる。
「ん、ありがとう。やっぱりハグって落ち着くわね」
ひうりから離れる。
僕が動きすぎたせいで、夢宇が起きてしまい、こちらを睨んだ。動くなということらしい。
「ごめんなさいね、夢宇。一樹くんを助けてくれたんでしょう?」
「いっぱい助けられたよ」
夢宇は、僕が正常じゃなくなったときに鳴いてくれるのだ。そのおかげで、無駄に複雑にならないようになっている気もする。
夢宇にも、夢宇を預けてくれた宇迦さんにも感謝しないといけない。どこかで宇迦さんを祀ってる神社に行った方がいいかな。
「はぁ、夢宇にも助けてもらったのに恋人になれなかったなんて…」
「まあまあ」
「両想いなのに恋人になれないなんて、切ないじゃない」
ここでは既に恋人だけど、現実でも両想いであるのだ。しかし現実では恋人ではなくて…ひうりの家族のせいで複雑なことになっている。
まさか存在するだけで邪魔だなんて思わなかったな…
「因みに、現実のひうりに僕に対して家族のことを言うように誘導するとかは…」
「残念ながら無理よ。前は普通に親愛度が足りなかったから無理だったんだけど、今は好きだから言わせようとしてもだめ!って思っちゃうみたい」
ひうりの思考誘導は、ただの誘導なので、現実のひうりの意に反することはできないのだ。現実のひうりが意識していることであればあるほど、思考誘導は難しくなる。
「やっぱり僕から言わないとだめかな」
「かもしれないわね…」
……
朝起きたら、スマホにメッセージが来ていた。
『中野くんに告白されて、断っちゃった。どうしよう』
ええええ!?
告白されたの!?彼氏くん、とうとう告白したんだね!?しかも断った!?なんでええええ!?
待て、落ち着こう。ひうが彼氏くんを好きなのは明らかなので、絶対に何かあるはずなのだ。
『なんで断っちゃったの?』
『家族のこと、知ってほしくなくて…』
あちゃー。想いすぎちゃったか。
ひうの家族はちょっとあれなので、好きな相手に知ってほしくなかったらしい。でもそれはそれで付き合えばいいのに…
『ひうは、彼氏くんのこと好きなんだよね?』
私は試しにそう訊いてみた。既読はついたけど、返信が来ない。悩んでるのかな。
仕方ないので、朝ごはんを食べる前に私が制服に着替えたところで、やっと返信が来た。
『うん』
かわいいなあああ!どうせスマホの向こう側では真っ赤な顔なんだろうなー。
こんなひうちゃんに愛してもらえるなんて、彼氏くんは幸せ者ですなー。
『好きって伝えた?』
『伝えた』
『ならいつも通りで大丈夫だと思うよ』
彼氏くん、あれでいて動じない強さがあるからなぁ。
私がしみじみと思いながら、朝ごはんを食べるために自室を出ようとしたとき、追加のメッセージが来ていた。
『告白を断ったのに、彼氏くんって呼び方は…』
あー…少し気まずいかな。
でも、彼氏くんからはひうを幸せにしてもらうって言質取ってるしなぁ…
『きっと将来の彼氏になるから大丈夫!』
『どういうことよ』
それでメッセージは途切れた。まあ、これで大丈夫かな。
それにしても告白を断っちゃうのかぁ…あんなに彼氏くんのことが好きなのに、家族のせいで断るなんて…
あれ、でも彼氏くんってひうの家族事情を知ってた気がするんだけど。あれあれ~?
「また彼氏くんを呼び出さないといけないかな」
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