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戦慄のメロディ  作者: 風間 絆


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7/8

黒い影の正体

社葬もつつがなく終わり、いつも通りの日常が戻ってきた。

いつもと同じ時間に家を出て、いつもの電車に乗る。



ちょっと前まではストレスだらけで、嫌な人が消えるとかいう動画に救われてたっけ



オレの一番嫌いなヤツがこの世から消えてくれた。

それならもうあの動画には用がない。

スマホを開いて履歴を削除しようもするも…


「あれ?」

何度タッチしても反応しない。

「バグったのか?」

他のツールが動くか確認してみると、大丈夫だ。問題なく使える。


「あっ」

そこで気付いた。未確認の連絡が溜まっていた。

通知をオフにしていたから気づかなったのだ。

葬儀とかでバタバタしてたし。

「これは…」

数日前の日付、あのオバハンからのメッセージ。

時間を見ると早朝、事故の少し前。

死んだ人間からの最後の言葉、未読で消そうかとも思ったが、もうこれ以上何を言われることもないので開いてみた。


こんな朝早くに何言ってるんだろう

また難くせつけて暴言書かれてるんかな


その勘繰りとは裏腹にあった言葉は

『大前頑張れよ。お前には期待してるからついキツく当たっていたが、昨日辞令が出て明日から急遽欠員が出た他県の支店に異動することになった。今日も出社後すぐ本社に行くので、もう話すこともないだろうからここで伝えておく』




はっ?


えっ?



異動…


他県…遠くに…



嘘だろ…


オレのこと期待してるって…


頑張れよって…


今さら何だよそれ…




別に会うこともなくなるなら


オレお前に死んでほしいなんて願うことなかったじゃん…


おまけに認めてもらってたなんて…



嘘だウソだそんなの!


ただのきれいごとだろ??



いや待て


アイツの最期の言葉


「お…ま…え…が…」


あれは


お前がやったのか?


かと思っていたが


もしかしたら


「大前頑張れよ」


今わの際に出る言葉が真実ではないとは考えにくい。



だとしたら


だとしたら


オレはとんでもない愚か者で


取り返しのつかないことをしてしまったのかもしれない。


オレに100%の敵意がないのなら


別に呪い殺すまでしなくてもよかった


どうしようどうしようどうしよう




「あーーーーーっ!!」


バカだオレはっ


恨みと憎しみで、歪んだものの見方しかできていなかった。


呪いなんかで殺人罪にはそりゃあならないけれど、今さらながら良心の呵責に苛まれた。


もしアイツが死んだのがあの曲のせいだとしたら…

オレがそれを望んだからだとしたら…



「あぁ、あぁ、うわぁぁぁぁぁー」



脳裏に浮かぶ、アイツの事故後の姿。


あの曲が頭の中でエンドレスに流れ続ける。


まるでオレの悪しき願いを称賛するかのように。



立証はできないけれど


もし本当にあの動画とオレの願いのせいでアイツが死んだのなら…


オレは殺人者だ


「そんな自分嫌いだ…もう消えてしまいたい…」




ピコン




すると突然、スマホが反応した。


勝手に動画サイトが開き、あの音楽が流れ始める。




やめろ


やめてくれ



心地よかった音色が、今や恐怖でしかない。


静かな湖畔の映像


一旦真っ黒になったあの画面が、元通りの美しい風景に変わっている。


水面に波紋が広がり、水の中から何かが出てきた。


人のようなかたちの黒い影。


それが煙のように画面から浮かび上がる。



「マッテタヨ」



くぐもった、男か女かもわからない機械のような声。



やめろ


やめてくれ



ピアノの戦慄がどんどん音を大きくして、頭の中でぐるぐるまわる。



「来ないで…くれ…」



黒いフードとマントの下から表れた、大きな鎌。


なんか見たことある


西洋の絵画とかで見る…この姿は…死神??



「ウラミ…ニクシミ…サツイ…ニンゲンノフノカンジョウ、ダイコウブツ…オオキクフクラムホド…ワタシノチカラモオオキクナル…」



この動画…


嫌いな人がふたりづつ消えていくんだったっけ


あのオバハンはオレにとってラスボスだった


あの時点で消えたやつは奇数だった


それが倒された今


最後に消えるのは


まさか…自分が嫌いと言ってしまった


オレ自身…?




ドンッ



キキキキキーーーーーッ




えっ



たしかに、何かに背中を押された。



入ってきた電車のライト


最期に目に焼きついたのは、眩い光

耳に遺ったのは、急ブレーキ音

頭の中で巡っていたあの動画のピアノ曲は、終演に差し掛かっていた。



結局、人を呪わば穴2つなんだね。


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