即効性
翌朝。
「あー、なんかスッキリしたっ」
快眠作用もあるのだろうか、久しぶりに短時間でも熟睡できた感があった。
今までは憂鬱な朝、食欲もあまりなかったが、今朝は満足に食べれそうだ。
買い置きのバナナと冷凍庫に閉まっておいた食パンをトースターでカリッと焼き、お湯を注ぐだけのスープなんかも用意して。
いつもは食べないことも多いのに、今日は一丁前の朝食のできあがり。
テレビの占いランキング、オレは…
「おっ、1位だって」
普段は占いなんてあまり気にしていないが、やはり上位というのは気分がいいもので。
ルンルン気分で出勤した。
「おはようございま…」
おや?
なんだか事務所が騒がしい。
「どうかしたんですか?」
「それが…本多さんと脇田さんが体調不良で休むって連絡あって。ふたりとも症状も似てるからコロナとかじゃなきゃいいけど、って話をしてたんです」
「えっ?」
経理事務の子が心配そうに言う。
「一応病院に行って検査してもらうようには伝えましたが…しばらくは用心したほうがいいですね」
本多さんは事務の若い子。
脇田さんは新しいマネージャー。
どちらも僕が昨日腹を立てて、いなくなればいいのにって思った人だ!
「うそだろ…?」
いや、まさか
単なる偶然だろう、こんなの。
しかし
ストレスの原因であるふたりがいないだけで、オレの心理的負担は軽減され、スムーズに仕事がはかどった。
来店してくるのもいいお客様ばかりで売上も伸び、その日は久々に楽しく仕事を終えることができ、軽い足取りで家路についた。
「まさかあの曲のおかげってことはないよな…」
こんなのたまたまだよ、たまたま。
きっと星座占いの運気がよかったからだ。
それでも今までとは違う何かを実感できたオレは、今夜もBGMにその曲をかけ流した。
寝る前には少し動画の映像も眺めた。
静かな湖面に雨粒が落ち、波紋が広がる。
「水の音って落ち着くよな…」
生き物が太古の昔、進化する前に水の中にいた記憶だろうか。
それとも母の胎内のやすらぎからだろうか。
その夜、深い夢の中で、何かが水の中に沈んでいくのをみたような気がした。
水生生物のように、自ら入っていったのか。
それとも、水中に巣食う生き物に捕獲されて引きづられてしまったのか。
わからないまま時は過ぎ…
朝目覚めた時には、どんな夢をみていたか忘れてしまっていた。




