15-3. デザートの後には牛乳を飲んで、水もたくさん飲みなさい
この物語はフィクションです。
作中の人物・団体などの名称は全て架空のものであり、
特定の事件・事象とも一切関係はありません。
「市場調査はバッチリなのじゃ。そろそろ親方にも途中経過を報告しにいかねばな」
「そのうち鍛冶修行に戻るの?」
「まだまだ調査は続けるのじゃ。鍛冶の腕前は合格点をもらっとるし、儂が満足するまではの」
インラーンはまだしばらく冒険に付き合ってくれるようだ。
サトウが安心していると、調理を終えたミルフィーユが夕飯を運んできた。
茹でた鶏むね肉、温野菜サラダ、茹で卵が大きな器に盛られている。
いつものメニューだが、今日は食後にチョコレートとコーヒーが出るらしい。
「最初はヘルシー過ぎだと思ったけど慣れたら美味いんだよな」
「ふふ、今日のサラダはホウレンソウ、キャベツ、ブロッコリーだからね。結石に気をつけるんだよ。デザートの後には牛乳を飲んで、水もたくさん飲みなさい」
「結石じゃと。これは老人虐待なのじゃ」
「水たくさん飲んだら大丈夫らしいじゃん」
「大丈夫でないこともある!最近の若モンは結石の恐ろしさを知らんのじゃ」
「トップオブトップ教の教義ではその痛みを味わってこそ益荒男だとあるよ」
それってトップさんが結石で苦しんだことがあるから、信徒も道連れにしようとしてるんじゃねーの。と言いかけてサトウは口を閉ざす。
そんなこんなで三人でベッドに腰掛け、各々ここ数日の出来事を報告しながら夕飯を食べ進めていく。
食事が終わり、食器洗い当番のサトウが席を立つと、彼が離席している間に残った二人が話を始めた。
「それで。お主ほどの者が取り逃すとは、相手はどんな魔物だったのじゃ」
「今回の討伐依頼のことか。いや、相手は魔物ではないんだ」
「ほう?」
「例の隣町で目撃されたという日本人の討伐だよ」
二年前に転移してきたとされる透明化スキル持ちの日本人。
隣町で目撃された彼は冒険者ギルドから「捕縛・最悪の場合討伐」対象になっている。
「強いのか?」
「透明化スキル意外は普通の人間だったね。身体的な強さは、良くてもDランク冒険者というところだろう」
「中の下か。腕っぷしに自信のある一般人程度の強さじゃな」
「強さより、透明になるのが厄介だったよ。だが接触した際に言葉を交わしてね。おかげで彼の明日の居場所も検討がついた」
「それも含めギルドで情報共有しておったのじゃな」
「ああ。そして情報提供者の所属するこのパーティーに指名依頼も入っている。明日こそ捕まえてやるさ」
それまでの物騒な会話は全て、食器を洗っていたサトウにも聞こえていた。
「え、明日。日本人と会うの?俺、バレないかな」
サトウは今の自分の服装を見る。度重なる冒険でかなりボロボロだ。
だが異世界転移初日から新調していない。つまり高校の制服なのである。
結石だけは勘弁してほしいです。
女でも男でも、できるときはできるそうですからね。
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