なにを食べてもいいって言われても……?
なんでも食べられるとしたら何を注文しますか?
前回と同じ部屋に入ると見覚えのある風景が広がっている。
27階は見晴らしが良い、ここは政府高官、要人用の施設なので下手なホテルよりもサービスが行き届いている。
今回、オーガさんはこの部屋の専属執事として対応してくれるとのことだったが、室内においてはカネルが細々としたことをやってくれるので、何かあれば電子端末で呼び出す旨を伝えた。
「かしこまりました。ご用の際は何なりとお申し付けください」
「ご主人様の身の回りはカネルがお世話するでふ」
なぜかカネルが対抗心を燃やしているようだ。
生まれたばかりのカネルに多くのスキルは身についていないが、オーガさんの立ち振る舞いを学んでくれれば良いと思う。
「明日ですが、閣下との会談は昼食後の14時から予定されおります。それまでは地下も含めてご自由にお過ごしください」
カネルがいるのに娼館には行かないって……。
(第1章エピソード6参照)
「本日のご夕食はシェフがこちらのお部屋でお作りして、出来立てを召し上がっていただきたいと思います。ご希望のメニューがあれば予め言っていただけたらなるべく対応させていただきます」
う~ん、そんなに世界のメニューを知っている訳ではないから、とりあえずは肉かな?
「じゃあ、本格和食の会席料理に黒毛和牛のステーキをつけてもらえますか? 夕食にお茶漬けの準備があると嬉しい」
「かしこまりました。明日のご朝食はいかがいたしましょう?」
「サラダを多めに、飲み物は種類があるといいな。何種類かのパンと厚切りパンのトーストと茸のオムレツとソーセージ、付け合わせは任せる、ガムシロップをジョッキで頼む」
「かしこまりました」
「それと、食事は3人前頼む。彼女は育ち盛りでね」
オーガさんは顔色一つ変えずに穏やかに微笑んだ。
食事の時間少し前にドアがノックされ、板前とシェフ、手伝いが素材を持って入ってきた。
板前は仕込みが済んだものを準備してきたようだ。シェフも肉以外に海鮮もちらほらと見える。
「金剛寺様のお召し上がりになりたいときに声をおかけください。そこから始めさせていただきます」
「では、30分後から始めてほしい」
「かしこまりました」
「カネル、キッチンに入れてもらって技術を学んできて欲しい」
「承知したでふ!」
イギリスの執事学校に行っても和食が教えてもらえるとは思えないから、今回は貴重な機会かもしれない。
俺も料理人の手際の良さには関心があり、見るのも好きなのでちょっと邪魔かもしれないがキッチンに入らせてもらう。
◆◆◆
料理人の手際は見事で、食べるのが楽しみになった。
会席料理の合間に目の前で鉄板焼きが出されるとのこと、これは楽しみだ!
飲み物はとりあえずウーロン茶かな? 鉄板焼きになったら炭酸水とジンジャーエールをオーダーした。
トウモロコシの茶碗蒸しに雲丹とイクラが乗った美しい前菜から始まり、出汁の効いた椀物が出されると鉄板焼きの準備が始まった。
通常、刺身の後に焼き物が出されるが、その代わりに鉄板焼きが出されるようだ。
口直しに一口サラダが出され、大きなロブスター、鮑のソテーが続き、メインは神戸牛のヒレ。
それぞれにあわせた絶妙なソースが掛かり、肉は適度にサシが入り表面がカリッとしながらも断面はロゼ色で柔らかい。
ちなみに、カネルにはサーロインも追加した。
鉄板焼きを堪能したところで会席料理に戻り、高野豆腐と野菜の炊き合わせが舌も心も和食に引き戻してくれる。
天ぷらも穴子を丸まる一本揚げたものを半分にカットして出してくれる。
蓮根の歯ごたえと原木椎茸の風味がお腹にやさしい。
見計らったかのように土鍋で炊きあがった白飯と香の物と赤だしがここは日本かと錯覚させる。
カネルは一つ一つを味わうように、かつかなりの速度で平らげてゆく。
もう、俺は満腹であとは甘味くらいしか入らない……。
カットスイカとシャインマスカットが添えられた杏仁豆腐だ、これはお腹に優しそうな配慮だな。
「「ごちそうさまでした」」
カネルと俺の声が揃う。
うん、本当に満腹でお茶漬けは入らないかもしれない……。
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