ここまで来てドタキャン!?
こんな感じで進んでいければよいな……
温かい目で読んでください。
誤字脱字の指摘、感想は大歓迎です。
「では、待ち合わせてからはアイマスクとヘッドホンをして移動します。その前に金属探知機でボディチェックをするので金属類は外しておいてください」
それでも良いというので、五条院女史と待ち合わせる。
俺が海から近い草原で待っていると黒いアウディが半分草原に入って停まり、後席から五条院涼花が降りてくる。五条院を降ろすと車は来た道を戻っていった。彼女は下着が透けそうな薄いワンピースで、約束どおりアクセサリーもつけていない。
「スマホや通信機器の類は持っていませんね?」
「ええ、約束は守ります」
念のため、金属探知機でボディチェックをする。極小マイクロチップなどの追跡装置が仕込まれていたら確認できないな。
「では、あちらへ行きましょう」
岩場へ向かう。そこには小型船が停泊しており、それに乗りこみ座席に座らせる。
彼女にアイマスクをさせ、「少し大人しくしていてください」とヘッドホンを装着する。
船を30分程走らせ無人島の入り江に入る。そこに停泊中の中型のクルーザーに彼女の手を引いて慎重に乗り込んだら30分程ジグザグに走り、彼女の方向感覚を狂わせたうえクルーザーを2時間ほど走らせ、俺の研究室がある島の隣にある島に到着した。
彼女のヘッドホンを外す。
「ここで降ります。ゆっくりと進んでください」
まだ、アイマスクは付けたままだ。慎重に進み、木に覆われた岩場の扉を開ける。
中へと進みエレベーターを降りる。その先の長い地下通路を進み、研究室のある島に移動する。厚い鋼鉄製の扉の先にあるエレベーターを上がり、指紋認証で扉を開け俺の研究室の前室へと案内した。
「アイマスクを外しても良いですよ」
「ふう~、意外と掛かりましたね」
通常なら依頼品が入った培養カプセルを相手先に持っていくのだが、今回は数多く作り選抜するので持ってはいけない。だから仕方なく彼女をここまで案内したのだ。
相手は世界規模の宗教団体だ。もしかしたら衛星で監視されていたかもしれないが、追跡できるのは隣の島までだろう。隣の島に何かあればここから逃げる時間はある。
「最後の確認ですが、見ても気分の良いものではありませんよ?やめるなら今のうちです」
「いいえ、私たちの教団の未来を切り開く希望ですから確認させていただきます」
彼女の決意は固いようだ、
研究室への扉を開く。
そこにはいくつもの培養カプセルがあり、それらに胎児がひとつずつ浮いている。イメージはホルマリン漬けの標本だ、あれよりは幾分血色がよいが……。この中でひとつだけが選ばれ、あとは廃棄処分となる。
五条院が研究室に一歩入り言葉を失い、顔色を悪くする。気丈にふるまい、カプセルをひとつづつ覗き込む。
「なぜ、こんなにもカプセルがあって、何が違うのですか?」
「これらは同じ遺伝情報を持っていても、成長などに微妙な差が出るものものなのです」
「この中に未来の開祖様がいらっしゃるのですね?」
「はい、この中から選ばれたひとつを納品します」
「残りはどうなるのですか?」
「廃棄処分となります」
「そうですか……」
研究室を出て、前室でソファに座り、お茶を勧める。
「だから言ったでしょう?気分の良いものではないと」
「いいえ、それは大丈夫ですが……」
「ほかに何かありましたか?」
彼女は茶菓子に手を付けず、お茶に手を伸ばす。
一口すすり、決意を固めたかのように俺を真っすぐに見つめ……
「金剛寺様、この依頼……」
この期に及んでキャンセルとかはごめんだぞ?
お読みいただきありがとうございました。