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機械人形は人の夢を見るか?  作者: 砂漠鯨
第一章 ~人形は異世界に降り立つ~
9/9

- 人形は報酬を手に入れる -

本日3話目となりますので、注意してください





 冒険者ギルドでギルドカードを発行する。

 一見簡単そうだが、実はコレにはある機能が備わっている。

 カードには一種の精霊が宿っており、資金やステータスやレベル、ランク等を管理してくれている。

 ただ、世にいる一流と呼ばれる冒険者でレベルが100になるかどうか。

 普通の人族の冒険者なら、引退するまでにおおよそ60まであがれば良い方だ。

 ちなみに、記録に残っている史上最高レベルは、「竜使い(ドラゴンテイマー)」だった転移者の210だ。

 彼は「勇者」にして、かつての魔王を討伐する際に異世界より召喚された。

 そして、この世界にいる最強の生物である「ドラゴン」を使役し、竜の結界をもちいて魔王を討伐してそのむくろを封印した。

 だが、その時に致命傷を受けて死亡したと伝えられている。

 その後、彼の真似まねをして、竜を使役しようとした者が後を絶たなかったが、ことごとく、竜に返り討ちにあっている。

 つまり、レベルは210までは確実に上がるのだ。


 ステータスは自身の身体能力を数値化した物である。

 自己鍛錬をすれば上がり、なまければ落ちていく。

 判別しやすい物だが、その数値はただの目安にしかならない。

 数値が高くとも技術が無ければ意味は無いし、逆に数値が低くとも技術が高ければ脅威になる。


 そして資金。

 必要時以外にお金を持ち歩く必要が無いように、各ギルドで自由に引き出せる。

 引き出す際に多少の手数料は取られるが、それでも大金を持ち歩く事が無い為、気が楽だ。

 そして、ギルドと提携ていけいしている店舗は、ギルドカードでの支払いが可能だ。

 もちろん、残高をちゃんと管理していないと大変な事になるが。


 ギルドカードの精霊は、持ち主以外では機能を発揮しない。

 別人が持っても、ただの紙切れにしかならず、持ち主は手数料を払って再発行する事が出来る。

 再発行の際、自動で精霊が移動して新しいカードが使えるようになる。

 ただし、何度も何度も無くしていると、再発行の際に掛かる手数料が増える。


 そしてランク。

 受けた依頼毎にポイントが設けられており、それが加算されてランクが上がっていく。

 ただ、採取依頼だけでランクが上がるのは最初のGランクだけで、Fランクからは討伐依頼もやらなければランクは上がらない。

 逆に高ランクでも採取依頼を受けなければならない。

 もっとも、高ランクの採取依頼はそれに見合った難易度の採取なんだが・・・

 おおよそだが、F、D、B、Sランクで壁がある。

 つまり、ランクが2つ上がると大体そこで止まるか、先に進むかが決まる。

 個人の資質にもよるが、人族の冒険者はCまで行けば良い方だ。

 そう考えると、AとかSランクの奴等は半ば、化け物染みた力を持っているのだ。

 そして、Sより上になると「二ツ名」と呼ばれる称号で呼ばれるようになる。



 受付で彼のギルドカードを発行する為の手続きを進める。

 まずは彼自身がギルドに危険行為をしない事を確認する。

 これは、彼に対して攻撃等をしなければ敵対する事は無い。

 だが、ある所で問題があった。


 名前。


 ギルドカードには、所有者の名前を書く欄がある。

 この部分は絶対に記入しなければならないのだが、彼には記号やら番号はあっても名前は無い。

 彼自身に決めさせようとしたのだが、彼はこれを拒否。

 仕方ないので、受付と記入用紙を見ながら考え込んでいる所だ。


「えぬえっくす・・・じーだっけ?」


 私の言葉に彼が頷く。

 えぬえっくす・・・

 これの良い略し方・・・

 エクス・・・いや、これだと何のひねりもない。


 ギルドに掛けられている時計を見上げる。

 既に時間は夕になり、もうすぐ夜になる。

 確か、時計もある意味じゃ彼と同じ機械なんだよね。


「・・・ネクス=ギア・・・」


 最初に考えた「エクス」に頭文字の「N」を組み合わせ、機械には必ず使われている「歯車ギア」を付けてみた。

 コレで良いんじゃないかな?


「本機はそう言う名称では・・・」


「名前がないとカード作れないし、あなたに決めさせようにも拒否したんだから、コレで決まりにしときなさい」


 私の言葉で、彼は渋々と言った感じで了承した。

 そして、彼のギルドカードが完成した。


_____________


 名前:ネクス=ギア

 種族:****

 ランク:G

 レベル:****


 ステータス 

 STR *****

 VIT *****

 DEX *****

 AGI *****

 INT *****

 LUK *****


 能力

 *****

_____________



 種族はともかく、レベルとステータスが数値化されていない。

 つまり、彼にはレベルやステータス、能力という概念がいねんが無い。

 これは初めてのケースだ。

 この世界に来る際、異世界人は必ず何かしらの能力を持ってやってくる。

 だが、彼の今までの言動を思い出して、ある意味納得できた。


 彼は自身を機械であり、心は無いと言っていた。

 つまり、壁に掛かっている時計と同じだ。

 時計には種族も無ければレベルも無いし、能力もない。

 ただ、与えられた機能である時を刻む事しか出来ない。

 だから、彼にはそう言った概念がいねんが無い。


 しかし、そう考えると彼が可哀想に思えた。

 それは逆に言えば、これ以上成長出来ないという事だ。

 レベルが上がれば、それは自身が成長出来たと実感出来る。

 だが、彼にはレベルが無いから、成長する事は無い。

 彼自身は任務を遂行するのが普通だと言っていたが・・・



 取り敢えず、ギルドカードは発行できたので、ギルドにある一室を借りる事にする。

 と言っても、彼のサイズと重量に耐えられる部屋なんてないので、解体室を使わせて貰う事にした。

 彼(いわ)く、睡眠や食事は不要なので、別に雨風をしのげる場所ならどこでも良いらしい。

 部屋に入るとリペアボット達が机の上で、弾丸の材料である鉄材と火薬をせっせと食べては弾丸を作っている。


「それじゃ、また明日にね」


「明日は何を?」


「ギルドマスターに報酬を貰った後、文字の勉強?」


 彼は喋る事は出来るが、文字はまだ書けない。

 学習すれば書ける様になるらしいので、マントやグレートソードが出来るまで勉強するのも良いだろう。

 もし、早く終われば森の調査を手伝って欲しいし。

 それに、魔獣の事も勉強する必要があるだろう。


 この世界には、人族やエルフ族以外にも多種にわたる種族がいる。

 中には、どう見ても魔獣にしか見えない種族もいる。

 それを彼が知らずにいたら、出会い頭に攻撃して大問題になるだろう。

 文字と魔獣については必ず覚えなければならない。


 彼とリペアボットを部屋に残し、私は一人宿に戻った。



 そして、一夜明けて次の日。

 朝食に軽くパンを食べて、ギルドに向かう。

 だが、冒険者ギルドの方が騒がしい。

 何事か見てみると、平原の月のメンバーが集まって何か騒いでいる。


「どうかしたの?」


 その近くで野次馬になっている町民に話を聞く。

 町民の話では、クランマスターであるカドルがクランの運営資金を持ち出して行方をくらませてしまい、冒険者ギルドに税を支払えなくなってしまったらしい。

 それで、支払いを待って欲しいと交渉しているようだが、ギルドはそこら辺は厳格げんかくだ。

 どんなに有名な冒険者やクランであっても、依怙贔屓えこひいきはしない。

 それがたとえ、この町唯一の大型クランであってもだ。


 過去に別の町で、ギルド長と大型クランのクランマスターが親族で、かなりの依怙贔屓えこひいきをしてしまった事がある。

 結果、町に他の冒険者が寄り付かなくなり、魔獣大発生スタンピードで滅んでしまった。

 それを教訓にし、中央ギルドは各ギルドに依怙贔屓えこひいきせず、平等に扱うように指示を出し徹底した。

 ギルド長と近しい親族が経営しているクランについてはギルド長を異動し、とにかく平等に扱える体制にしてきた。

 だが、中には隠れて癒着ゆちゃくしている所もあるので、たまに抜き打ちで検査や査察ささつが入る。


 平原の月はギルドと癒着ゆちゃくこそしていないが、クランマスターがかなり横暴おうぼうだったので調査対象になっていた。

 そのクランマスターが、クランの運営資金を持ち出して行方を眩ました。

 これはクランにとって非常にまずい事になる。


 取り敢えず、私には関係ない事なので人でごった返している表からギルドの裏に回って裏口から中に入る。

 中に入ると、平原の月のメンバーが受付で話し合っている。

 どうやら、構成員の大半は外で待ち、代表者だけで話し合いを進めているようだ。

 それを横目に見ながら、階段を上がってギルドマスターの部屋に向かう。


「失礼します」


 扉をノックしてから開けると、書類整理をしているギルドマスターの姿がある。

 その隣では、サブマスターが同じように書類整理の真っ最中。


「すまんの、この書類だけ片付けさせて欲しいんだの」


 ギルドマスターの言葉を受けて、サブマスターが私の方に椅子を勧めてくる。

 大人しく勧められた椅子に座り、ギルドマスターを待つ。

 しばらくして、ギルドマスターがペンを置き溜息を吐く。


「少々待たせてしまったの」


「大丈夫です、それよりも下は大丈夫なんですか?」


「まぁ問題は無いじゃの」


 ギルドマスターが席を立ち、彼の待つ解体室に向かう。

 その後に付いて行き、解体室に入ると一瞬熱気を感じた。

 どうやら、彼から発する熱で解体室の温度が若干上がっているようだ。

 その彼はと言うと、片膝立ちの状態で、部屋の奥に座っている。


「おはよう」


「・・・おはようございます」


 挨拶すると、彼がかしこまるように返事を返してきた。


「ホホホ、それじゃ早速じゃが良いかの?」


 ギルドマスターが懐から紙を取り出す。

 ゴブリンの大群とキングを倒した特別報酬の話だろう。


「まず、ゴブリンじゃがあそこまで大量にいると細かい数がわからんでの、まとめて銀貨で100枚じゃの」


 銀貨100枚とはかなり高額だ。


「次にキングじゃがの、調査の結果アレは変異種であると確認されたでの」


 変異種。

 稀に誕生する個体の中でのレア種。

 ゴブリンで言えばレッドやブルーといった色違いと言えばわかりやすいだろう。

 そう言ったレア種は、全てが強力な個体になる。

 今回のキングはそのレア種だったらしい。


 彼はあっさり倒してたけどなぁ・・・


「普通のキングなら銀貨30枚という所じゃがの、変異種であるから銀貨50枚に増やすでの」


 そう言うと、受付嬢の一人が袋を持ってやってくる。

 それを机に置くと、ジャラリと音がする事から、中身はすべて銀貨なのだろう。


「そして、肝心の討伐報酬なんじゃがの・・・こっちは銀貨で200枚になるんだの」


 つまり、合計で銀貨350枚。

 昨日注文したマントや剣の代金を払っても、まったく問題が無い金額だ。

 寧ろ、買い足しても良い。

 袋から銀貨を取り出し、数を数えて間違いが無い事を確認する。


「報酬はすべて・・・」


「ちょっと待って、流石に全部は無理よ」


 彼が前の時の様に、報酬全額で弾丸の素材を買おうとしているのを慌てて止めた。

 私が止めた事に彼が此方を向く。


「今回の報酬全部で材料を買うつもりかもしれないけど、この町にはそこまで材料は無いわよ」


「ホホホ、流石に銀貨350枚分となると、町中の鉄製品集めても足らんでの」


 私の説明にギルドマスターが同意する。

 寧ろ、まだ作る気なのか。


「では、どうすれば?」


「取り敢えず、ギルドに登録したから税を払って鉱山都市に行くなりしてからね」


 鉱山都市なら大量に買い付けが出来る。

 だが、彼の通るルートだと寄る事は無いのだが・・・


「では、税の支払いと後はチャージして置けば良いのか?」


「そういう事」


 他にも、マントや剣の代金があるので多少は手元に残した方が良い。

 ギルドマスターにその事を伝え、受付嬢が銀貨30枚だけを残し、残りを持って退室する。

 そして、それを彼が素材用の道具袋マジックバッグに入れるのを確認し、ギルドマスターも部屋から出て行った。


「さて、それじゃ昨日言った通り、文字の勉強しましょうか」


「了解した、学習モード起動」


 こうして、この日から彼の勉強が始まる。

 もっとも、1日で文字はマスターしてしまったのだが・・・




しかし、気分転換の方が筆が進むのは何故なのか


此方を読んで頂き有難うございます








宜しければ、下の☆☆☆☆☆を★★★★★にして頂けると、作者のやる気がUPします

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