神刀に触れし者
青の公爵家が開発した認識魔法に抗う術は、完璧とは程遠く、また、それがあったとしても、反逆者となってしまった今、住人等が聞く耳を持ってくれるかと言えば、それは微妙なところであり、住民を危険に巻き込む可能性や、戦力でいえばこの四人が最高戦力なわけで、裏切り等、内側からの崩壊を恐れるのであれば、このまま、この四人で突破したほうが目立たなくていいだろうということになった。
とは言っても、王都に入る為には門をくぐらなければならず、この四人では顔が割れすぎている。
イザークの顔はバレていないだろうが、その巨体に全身を鎧でガチガチにしていれば、止められるのはまず間違いない。
と、いうことで、一人だけ助っ人を頼むことになり、ともあれその人は、俺も師匠も会ったことのある人物であった。
グレイスに付き従う数少ない兵士は拠点を守護する役目があり、俺の神刀に全員が触れたことから、ここから認識魔法にかかることは無いだろうが、スパイ等がいる可能性は無きにしも非ずである。
あのダンのことだ、何があってもおかしくないわけで、あらゆることを想定しておいても足りなそうである。
まぁ、だからといって何か備えられるかと言えば、特に思いつきもせず、俺らは行商人に化け、助っ人とともに王都を目指した。
荷馬車を改造し、二重の底を造り、その間に俺たちは入り込む。
青の公爵家の魔道具の効果で、外見と中身に誤差を生じさせないよう調節し、そして無事、王都へと侵入したのだった。
因みに、俺のトラックで四人全員を馬車の中で消すという方法も考えたのだが、これに関しては馬車の中に入口が固定されるものではなく、その空間に入口が固定されてしまう為、馬車が移動してしまうと俺らはその場に置き去りにされてしまうという事で使えなかった。
「グレイス様、つきやしたよ。」
そう言って、その助っ人は声を掛けてきた。
相変わらず、髭がもじゃもじゃのガッシリしたおっさん。
刀の仕組みを教えるとき、神刀が木刀だった時に振れていた人物。
師匠のお勧めの鍛冶職人で、大剣と俺の小太刀を造ってくれた人。
王国王都一の鍛冶職人―――バッカスさんその人だ。
この人は青の公爵家、グレイスの部下でもあり、そして王国兵士の武器も造っている。
王国の情勢を青の公爵家へ横流しするスパイであった。
師匠も俺も、そんなことは知る由もなくお世話になっていたのだが、まさか王都一の鍛冶職人がスパイなどと誰が想像するだろうか・・・
ともあれ、王国への新たな武器の納品が三日後である。
これを利用して俺らは城へと潜入する作戦を立てていた。
この人も認識魔法にかかっていなかったということをグレイスから聞いたからこそ、神刀で間違いないという判断材料になったわけだ。
「それとヒューグと坊主、新しい武器、必要だろうと思って造っておいたんだ。試してみてくれ。」
おっちゃんはそう言って大剣と、刀を俺らに見せてきた。
確かに、ギリアムを倒した後に貰ったこの小太刀も、師匠の大剣も、酷使しすぎてなかなかにボロボロにはなっていた。
そうして新しい武器を見てみれば、大剣は黒曜石のような感じでテカテカしており、淡く赤い光を放っている。刀は黒に近い紫色で、刃の部分は薄いピンクになっていた。
その見た目は中二心をくすぐるようで、見た目だけで言えば申し分なく、さらに感じ取れる迫力もすさまじいものがあった。
「おいおい・・・こりゃあなんだ?」
「なんかすごいってのは分かるんですけどね・・・」
「ワシも王都一の鍛冶師を名乗ってますからね!これくらいの仕事は軽くこなしてみせまさぁ・・・って、言いたいんだがな、これを打つのは苦労したんだ。グレイス様や、イザーク様、ルーシー嬢ちゃん達に話を聞きながら、二人に合うように打ったんだ。ぜひ、使ってやってくれ。」
大剣の名は、エッケザックス。刀の名前は雷切。
どちらもルーシーが付けたんだそうだが・・・まぁ、何も言うまい。
この武器の材料は青の公爵家に代々残されていた謎の鉱石と、ダンジョンの奥で見つかった資料と共にあった材料とを組み合わせているらしく、その頑丈さと切れ味は今までに無いほどだそうだ。
俺らが試し切りを行うと、言われた通り、神刀に並ぶほどの切れ味と、魔気の通しやすさであり、新たな武器は俺らのを入れて4つ、グレイスとイザークにも同様の武器がこしらえられていた。
なお、ルーシーとデブスとはまだ会っていない。二人はまだ学院を卒業していないし、いつも通り学院へと通い、気を伺っての参戦になるとのことで、これは事前の打ち合わせ通りになる。
俺としては参戦させず、する前に終わらせてしまいたいのだが・・・そう言ってもいられないかもしれない・・・。
そうして三日、俺らは武器の調整などをしつつ過ごし、潜入当日となった。
―――――
澄んだ青空の早朝、ガタガタと揺られながら王城へと向かう馬車が一台。
御者にいるのは、半年に一度は必ず王国へと来る王都一の鍛冶師。
その馬車には大量の武器が詰まれ、ガチャガチャと金属音が鳴っている。
それを見て、もう半年たったかと思う人はいるだろうが、これから王国の城を攻めいる等と、誰が思うだろうか。
そうして王城までその馬車が着くと、門番をしている兵士も、「御苦労」と声を掛け、積荷を改める。
半年に一度の行事であり、門番もなれたもので、さっと見渡して門を開ける。
「よし、いつもの所に置いておけ」と言えば、鍛冶師は「畏まりました」と返事をし、通り抜ける。
こんな簡単にと思うかもしれないが、半年に一度、必ずやっていたことであり、そして必ずいい品を届けていたのである。
長い年月をかけて信用を勝ち取り、そして、それがあったからこそ、こうやって簡単に侵入できたのである。
それは確かな腕と、一度も遅れずに納品してきた努力とがあってのものである。
一番の功労者は、この作戦を実行できた王都一の鍛冶師、バッカスだろう。
そうして俺らは、王都の門を潜り抜けた時と同様に、ぎゅうぎゅうになって四人は床と床の間に横になり、何の苦も無く、王国王城の武器庫へと侵入を果たしたのだった。
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