海神(わだつみ)の花嫁③
『あ、わたくしスサノヲ様の神使にして、この社の管理人のスッポと申します』
「すっぽん?」
あたしの前で丁寧にお辞儀をする亀さん。
甲羅といい、お顔をといい、どうみてもすっぽんである。
一説によればたんぱくな味わいで、あのフグにも似た味ともいう。
うん、それはおいしそう。じゅるり。
『スッポで……あの、人間のお嬢様、何故わたくしを見てヨダレを……?』
『ははっ、ミヤコは調停の巫女だからな!』
『なんと!』
「都子ちゃん……」
何か微妙に噛み合わない会話をするウカちゃんとスッポさん。そして残念そうな顔であたしを見る晶。
う、なんだか居た堪れない……
「そういえば、社の管理人っていってたけど、そこって……」
『あそこの島にある、社になりますっ』
「でもあそこって、ホントに小さいし、人が泊まれるようには見えないけど」
『ははっ、実際に人間が泊まれるところではありません……こほん、では案内しましょう……【紫水宮】へ!』
そう言って、スッポさんがパンッ! と大きな柏手を打った。
すると、ズザザーっと海が割れて社までの道が出来ていく。
「えぇっ?!」
「みやこちゃん、あれ見て!」
「うわぁ、素敵な道ね!」
丁度島の下にあたりに洞窟の様な入口があり、そこにはしめ縄がかけられている。
一見洞窟で自然物の様に見えるのだが、そこまでの道は石畳でしっかりと舗装されており、いくつかの鳥居が作られていた。
自然物でありながら人工物の手が入れられており、これは見事と言わんばかりの調和ができていた。
これが普段は海の底にあるというのが、神秘さに輪をかけているのかもしれない。
『ささ、こちらへどうぞ』
「う、うんっ」
スッポさんに案内され、洞窟へと入っていく。
水深にしたら島から大体10mくらいにあるところの入口。
そこを潜ると、あっと驚く光景が目に飛び込んできた。
「わぁ!」
「これはすごいね」
「アクアリウム、とでもいうのかしら?」
島の地下は、水族館と融合した純和風の旅館とも言える内装だった。
涼し気で水色に包まれたそこは、海中の中で過ごしているかのような絶好の避暑地とも言える場所だ。
呆気にとられつつも、スッポさんに案内されてあたし達の泊まる部屋へと通される。
そこは見たことも無い豪華な部屋だった。
窓からは海中を覗くことができる3LDK相当のスイートルームである。
え、なにこれすごい。これ全部ウカパパさんの費用持ちなの?!
『巫女様がたは、なんでも最高かつ至高のカレーを作るためにここにおいでいただいたとか……その為にも、最高の海産物を選びやすくするために、当社が選ばれたとか。精一杯おもてなしさせて頂きます!』
「あ、あははは」
「み、みやこちゃん……」
「ね、ねぇ、ここって写真とってもいいのかしら?!」
思えば、とんでもない理由である。
あまりの豪華さに、引き攣った笑いも出てしまうし、晶も乾いた笑みを浮かべている。
おばさんは背景素材! と叫びながらシャッターを切るのを止められない。
肝が据わっている。
リビングに相当する部屋は、20畳もある和室だった。
その中央には机が置かれ、そこには巨大な魚の干物が横たわっていた。
「……なにこれ?」
『乾くわ~』
「喋った?!」
『すんごく乾くわ~』
その巨大なマグロの干物と思しきものが、チラチラとあたし達に視線を送ってくるのであった。
……あたしは煮干しの様に出汁にした方が良いのか、スルメの様に噛みしめたほうが良いのか、それだけが気になっていた。











