海神(わだつみ)の花嫁④
久しぶりの更新。
他で連載している方が佳境だったので、そっちの完結を優先させておりました。
「ワタツ様! 調停の巫女様がお見えですよ、ワタツ様!」
『乾くわ~』
「ワタツ様!」
この社の主と思しきマグロの干物は、スッポさんがいくら話しかけても、死んだ魚の目で『乾くわ~』と連呼するだけだった。
どうしたものかとウカちゃんを見ればそっと視線を逸らされ、晶やおばさんの方を見れば、既に荷解きを始めて衣装を取り出している。晶はフリルでビキニな水着を見て逃げ出していた。
「すいません、普段はこんな人じゃないんですが、その、先日フラれてしまいまして、それから腑抜けてしまいまして……」
「フラれた?」
「えぇ、マイカ様という、それは艶かしく色白で美しいお方だったのですがその、マイカ様本人やそのご両親に大反対されまして……」
「マイカ……真烏賊? もしかして足が10本あったり?」
「そうです、マイカ様はイカの化身であられます。ずっと心焦がれており、先日熱烈な愛の言葉を伝えたのですが……結果はこの通りなんです」
「なるほど……」
そういえばテレビで見たことある。
マグロ漁でイカをロープに括りつけて釣り上げるドキュメンタリーとかそんなやつ。たしか正月初競りにかける猟師たちのやつだ。脂も乗ってて、おすし食べたいと思ったやつだ。
「ちなみに何て告白をしたの?」
「食べちゃいたいくらい可愛い、と」
「あ、あはは」
そりゃあかん。ダメなやつだ。ライオンがウサギに「食べちゃいたいくらい」て言うのと同じくらいダメなやつだ。
何故そんな事を言ったのだろう? 本能かな?
あたし? 晶の事が食べちゃいたいほど可愛いと思うし好きですが?
あ、はい。ちょっとだけ気持ちがわかりました。
「あの、調停の巫女様、ワタツ様のこと、何とかならないでしょうか?」
「何とかって言っても、ううん……」
う、これは困った。
スッポさんが頼んでくるものの、本来ここに来たあたしたちの目的はカレーである。
マグロとイカの恋愛相談ではない。というか、されたところでどうにも出来ない。
それに、せいぜいあたしに出来るのは食レポである。
マグロはやっぱり刺身かお寿司で食べたいし、晶がよく作ってくれる、ツナ缶と唐辛子と一緒にそのままフライパンに放り込んでパスタと絡めるのとかがお手軽で好きだ。
イカもやっぱり刺身やお寿司は外せないし、大根と一緒に煮たり、タレを絡めた焼きイカなんて祭りの露店じゃ外せない。イカメシだって好きだ。
食物連鎖な話はよくわからないが、どちらもおいしい。
あたしにとってはそれが全てだった。
そしてあたしはお腹が空いてきてしまった。
「よし!」
「調停の巫女様、何か妙案が?!」
「お昼ごはんをつくろう!」
「ごはん……え?」
おばさんの着せ替え人形になっていた晶を捕まえる。
さすがに女の子状態で水着の着替えを強要させられるのは、精神的にきつかったようで、涙目になっていた。
「あきらー、お昼作って欲しいんだけど」
「み、みやこちゃん! ほら、母さん、みやこちゃんもこう言ってるし、もうね? ね?」
「そんな! もっと着せたい物があるのに!」
うんうん、なかなか良いスタイルではないでしょうか? 同性とは言えごくりとしてしまう。
あ、だからそれを隠すなんてとんでもない! ほら、水着から直接エプロンつけよう? ね? ほら、裸エプロンみたいでエッロ!!!!
まって、そんな目であたしを見ないで?! 疲れた顔をしないで?!
「で、何を作るの? リクエストある?」
「あきら、あたし達は何でここに来たんだっけ?」
「カレー作り?」
「そうそう、てわけでシーフードカレーを作ろう。具材は――ツナとイカ!」
スッポさんが変な目であたしを見てくる。
うん、相性いいと思うんだ。











