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都子ちゃんは晶君を嫁にしたい~女子力高い幼馴染が本当の女の子になっちゃった件~  作者: 雲雀湯@てんびん2026年アニメ化決定
番外編

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ウカちゃんは都子ちゃんと晶君と美味しいカップ焼きそばを作りたい


 その日は何故か、うちのダイニングでウカちゃんと対峙していた。


 カップめんを挟んで。


 ……


 あはは。



『ば、馬鹿な! お湯を入れて3分待つだけだと?!』

「そそ。しかもこれはかやくも粉末スープも何も入れないタイプ」

『はん! ど、どうせ相応の味に決まってる』

「…………」



 晶はどこか呆れた顔であたし達を見ていた。


 ちなみに今の晶は女の子。

 普段2人だけのときは男の子と過ごし、誰か居る時は女の子になってもらっている。

 あたしが誰か居る時にテンパらないようにという措置のためだ。


 ご、ごめんね、あきら?



「そろそろ3分だよ」

『お、おぅ、ではいただくぞっ!』



 ちゅるちゅる。



『ッ!?』



 くわっ、と目を見開いたかと思えば、わなわなと震え始めた。



「ウカちゃん?」



 ずぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞっ!!



 豪快に音を立てながら、ひと息にカップめんを啜る。


 カンッ、と空のカップめんで机を叩いた。



『美味い!』



 まるでその美味しさを表現するが如く、ウカちゃんの身体から金色のオーラがあふれ出した。



『何だこれは?! まるで罪のように黒く、それでいて相反するがごとき透き通った泉を覗き込めば、深淵の中に泳ぐ金色の麺が我を誘ってきよる! 一口啜ってしまえば、黄泉比良坂(よもつひらさか)の食物を口にしたが如く、二度と戻れぬ誘惑に落ちていってしまいそうになる! 嗚呼何たることだ! 罪深い、汁を飲み干してしまうほど罪深い!!』



 なんてことはない、ただのしょうゆラーメンである。

 久々に中二病も顕現していらっしゃる。

 

 そしてはた迷惑なことに、そのオーラを受けたジャガイモやたまねぎといった常温保存している野菜が、にょきにょきと芽を出してしまっていた。



「ウカちゃんウカちゃん、野菜が!」

『あ、あぁ、すまぬ!』



 スゥッとオーラを引っ込める。

 少し考える顔をしたかと思うと、今度は黒いオーラを――


「ウカちゃん、それ肥料だから! 芽は引っ込まないから」

『で、ですよねー』



 あぶないあぶない。


 晶はあわてて野菜の処理に向かった。

 ウカちゃんが後で、ダメにした分のお野菜分けてくれるらしい。



『それにしても驚いた……お湯を注ぐだけとか一体どんな神通力というのか』



 ただの瞬間油熱乾燥法だと思います。


 だが、驚くのはまだ早い。

 カップめんは何もラーメンだけじゃないのだ。



「ウカちゃん、これ何だと思う?」

『や、焼きそばだとっ?!』



 ガタッと身を乗り出して、あたしが持つカップ焼きそばに釘付けだ。


 最近、お祭りの時に作った焼きそばが思いのほか繁盛して、向こう(高天原)でもしばしば作っているらしい。

 こないだひょっこりフツさんに遭遇したとき、毎回焼きそば作りを手伝わされて、ひたすら野菜を切らされていると愚痴られたのだ。



『馬鹿な! 焼きそばは焼くものだぞ?! それがお湯を入れるだけで出来るとか信じられん!』

「ふふ、だけどこれはラーメンよりは難易度が高いよ。何せ、『湯きり』をしないといけないからね」

『湯きり、だと?』

「そう、それこそがカップ焼きそば唯一の難点にして極意。あたしも成功率は8割を切る」

『なん……だと……?!』

「ちょっとまって、みやこちゃん! それ5回に1回以上湯きりに失敗してるってこと?!」

「シンクにお湯とともに流れていく麺と共に涙を流したものよ……先月も……」

「しかもごく最近にもやらかしてた?!」



 晶が複雑そうな顔で頭を抱えている。


 むぅ。

 たまに失敗するじゃんね?



『我にも作れるだろうか……?』

「大丈夫よ、事前の準備を怠らなければ成功率は飛躍的に上昇するわ」

「待って、お湯以外の準備って思いつかないんだけど?!」

『それは?』

「輪ゴムとガムテープ。そう、失敗の原因のほとんどは蓋の締まりの甘さ……そこさえクリアできればッ!」

『て、天才か!』

「普通に手で押さえるだけで十分だと思うよ?!」



 晶のツッコミを聞き流しつつ、お湯を注ぎいれる。

 いまだに焼かずに出来るという焼きそばに半信半疑のウカちゃんが、疑心暗鬼になりながらカップ焼きそばを見つめている。


 そして3分待つ間を利用して、輪ゴムで2重に縛り、縁をガムテープで固定する。

 もちろん、湯きり口を塞ぐなんて愚は犯さない。



「湯切りしたあと、剥がす間に麺伸びちゃわない?」


「「――ッ?!」」



 その晶の突っ込みは衝撃だった。

 天地がひっくり返ったと言っていい。



『みみみみミヤコどうしよう?!』

「おおおおおちついて、今から剥がせば……あっ」



 べちゃっ。



 慌ててたのか、シンクにいい音が鳴った。



『や、焼きそばが……焼きそばが……うえ………うぇぇええええええええんっ!!!!』


「ご、号泣?!」

「う、ウカ様泣かないで?! ほら、ボクが作るから! ね?! みやこちゃん、ウカ様を宥めて!」

「わ、わかった!」



 いそいそと晶がカップ焼きそばを作り直す間、あたしはウカちゃんを慰めた。


 え?


 うんうん。


 焼きそばは至高、それはわかる。


 世の中にはね、他にもシーフード焼きそばというものがあ……え? え? 詳しく教えろ? 晶ー! そのカップ麺シーフード焼きそばに出来るー?!



 ……


 …………


 ………………………………




『う、美味い! まさか海産物と焼きそばがこんなに合うとは!!』



 あれから3分後、ご満悦な表情のウカちゃんがカップ麺のシーフード焼きそばに舌鼓を打っていた。


 ご機嫌なのか、身体から黄金の風が吹き出している。

 その姿にあたしも一安心だ。


 冷蔵庫の中の野菜がえらいことになってると、晶が騒いでるけど。



『しかし、人間とはすごいな……飽くなき探求心というか、我は恐ろしい……』


「ウカちゃん、食べてるところ悪いけど、塩焼きそばってあるんだけどどうする? お土産で持って帰る?」



 その瞬間、時が止まった。

 唖然としたウカちゃんが、どこまでも戦慄した顔で固まっていた。




 …………


 暫くして、地元のスーパーで働くウカちゃんが確認されたという。


 そしてウカちゃんがバイト代を全てカップ麺に変えて高天原で布教した結果、地元の商店街が求職者で溢れかえったのはまた別のお話。


カップ焼きそば、たまに失敗する人もいるはず……

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