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引きこもり勇者がダンジョンマスターになったら  作者: ニンニク07
最終章 神の家編
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二十階層 天使の審判

「ようやく、来たか」


 二十階層迷路、以前アドラメレクの部下である四体のオーガロードを倒したこのフィールドで、一人待ち構えていたのは、ダンジョン最高戦力であった大天使ガブリエルだ。


「ああ、来たよ、ガブリエル」


 フィールド迷路は、その名の通り迷路なので、そう簡単には接敵しないはずなのだが、何故かガブリエルは俺が二十階層に着いてすぐに目の前に姿を現した。


「元マスター、あんた、本当に強くなったな」


 強くなった? まあ、冒険者として様々な経験も積んだし〈貪欲〉でルキフグスから力を奪ったりしたからな。冒険者になるために塔を出ていった時と比べれば、二倍以上は強くなっているのは間違いない。


「そうだな、今の俺ならお前よりも強いかもな」


 以前、ガブリエルが化け物をと言っていたルキフグス。そのルキフグスを俺は倒し力を奪っているため、戦闘力と魔力量ではガブリエルを完全に上回っていた。なので、多少は見栄を張っていいはずだ。しかし、ガブリエルはそうではないと首を横に振り、左手を上げる。


「シェキナー!」


 ガブリエルが空中から取り出したそれは、かつてアドラメレクを一撃で葬り去った光の弓矢だ。


「もはや、言葉は不要だ。この部屋に設置されているモニターであんたの今までの戦いは全て見てきた。先へ進みたいのなら、アタシを倒していけ!!」


 ガブリエルは、光り輝く弓をゆっくりと引く。真剣なその顔付きから、加減するという気持ちが一切感じられない。ガブリエルは本気で俺を倒す気のようである。


 いかに最強の弓矢と言えど、どんな攻撃でも認識できる以上〈拒絶〉の前には無力であろう。しかし、俺を試そうとするかのようなガブリエルの目からは自分自身の力で私の攻撃を打ち破れと訴えていると感じた俺は〈拒絶〉を使用せずに剣を構えた。


 俺は心の中で王都での黒川との一戦で行った飛んでくる魔法を剣で斬った時のことをイメージした。これから飛んでくる光の矢は、あの時の魔法とは比べものにならない速度と威力ではあろうが、今の俺がガブリエルを超えたと彼女に見せつけるには、彼女の渾身の一撃を剣で叩き潰さなければいけないと本能的に感じたのだ。


「行くぞ! メギド・アクエリオ・アロー!!」


 ガブリエルの掛け声とと共に、光の矢が放たれた。その凄まじい速度に大気が悲鳴上げる。そして、その矢の速さは〈貪欲〉で数多の敵の力を奪い、さらに〈力〉によって自身の身体能力を倍化させた俺をもってしても、やっと反応できるほどであった。


 だが、それでも、ギリギリ反応できる。俺は全神経を研ぎ澄ませて自分の眼前に迫っている矢に向けて全ての力を込めて剣を振り降ろした。


 ガブリエルの渾身の矢は、上から斬りつけているのにも関わらず、一瞬押されるくらい凄まじいものであったが、何とかその場に踏み止まり、矢を真っ二つに切り裂いた。


「ハァハァハァ……やったか」


 二つに分かれた矢は、急速に力を失い。俺の背後に落下した。その様子を眺めた後、俺は剣を握りしめた走りだした。


「うおおおおおおおおおおーーーー!!!」


 あれだけの、魔力を矢に込めたのだ。いかにガブリエルと言えど、すぐに行動できないはず。俺は矢を放ち無防備となった瞬間を見逃さずに、気合で負けないように大声を上げながら、一気にガブリエルに向かって走り出した。







 ふっまさか、アタシの最大級の攻撃を剣で防ぐとは、


 アタシは今の攻撃に全ての力を込めた。そのため、すぐには次の行動に移せないくらい疲弊している。それを見越してか、元マスターは矢を叩き切ると全速力でこちらに向かって走ってきた。良い判断だ。後数秒で彼の剣はアタシの体を切り裂くだろう。この勝負は彼の勝ちだ。そう自らの負けを悟った途端にアタシの脳裏に、彼、元マスターとの初めての出会いの頃がよぎった。





『こ、これは』


「ガチャの精、こいつは何だ?」


 天界で、地球産のテレビゲームをしながらダラダラと過ごしていたアタシは突如、異世界に強制召喚された。


 今結構いい所だったのに、どこの誰だ! アタシを呼び出したのは!


 怒りで我を失いそうなのを何とか抑えて、アタシは召喚者と思われる人間の顔を拝んだ。そこいたのは、十代後半くらいの気の弱そうな少年であった。


 第一印象で分かった。こいつは、自分に自信が持てない、いわゆるいじめられっ子で引きこもりだと。こんな奴がよくアタシを召喚できたなと最初は思ったが、その場にあった喋るガチャポンの話を聞いて、この少年は塔の勇者で、その能力を使って召喚できたと理解できた。


 そうか、忘れていたよ。塔のアルカナだけは運だけで大天使を呼べたな。


 大天使を呼べる他のアルカナ能力は、運だけではなく気合と信仰心がなければ大天使は召喚できないが、この塔だけは完全に運任せで、大天使を召喚できるのだ。その事を思い出しアタシは頭を抱えた。


 これから、この少年をマスターと定めて、ルシファー率いる魔王と戦なければならない。そう考えるだけで、頭が痛くなった。


 元々メタトロン様とルシファーの戦いなど、どうでも良かったが、巻き込まれた以上は仕事はしよう。駄天使と周囲から言われているが、大天使としてそれくらいの分別はできているつもりだ。しかし、百歩譲ってもこの少年がマスターというのはない。


 どう見て弱そうだ。見た目もそうだが、何より精神面が脆弱過ぎる。何故精神が弱く見えるのか? それはきっと、この少年から確固たる信念を感じないからだろう。


 とは言え、弱いに越したことはない。こいつが死ねばアタシは天界に強制送還される。その際に大幅に力を失い弱体化は免れないが、それでもこの少年をマスターと崇めるよりは数段はマシだ。


 早く誰かがこいつを倒してアタシを解放してくれないかな。そう願わずにはいられなかった。


 これが、アタシが元マスター津田健也に対して最初に抱いた印象である。





「さよなら、ガブリエル」


 元マスターの刃がアタシの体を切り裂く。たったの一太刀ではあるが、その一撃で勝敗は決した。痛みで意識を手放しそうなのを堪えて、アタシは勝利者である元マスターの力強い顔を見た。


 本当に強くなったな。初めて見た時とは見違えるようだ。今の元マスターからは、奪われたダンジョンそして仲間を取り戻すために戦うという強い覚悟を感じるから強く見えるのだろう。


 最初は雑魚だった元マスターだが、徐々に強くなる様を見て、いつの間にか、子の成長を見守る親のような気分になっていた。こいつの成長をいつまでも見てみたい。そう言う願いはあるが、それは叶わぬ願いでもある。


 何故なら、彼がルシファーを倒し、このダンジョンを取り戻しても、そこにアタシはいないからだ。ダンジョン産である他のモンスターとは違い、天使であるアタシは一度負ければ天界強制送還される。つまり、これが彼との最後の別れになるかもしれなかった。


 だが、一つだけいいことがある。それはルシファーのアルカナ能力〈塔〉によって縛られている他のダンジョンモンスター達をいくら倒しても、彼の〈貪欲〉は倒したモンスターの力を奪えないが、天使であるアタシの力だけは〈貪欲〉によって彼のものになるということだ。


 それなら、悔いはない。アタシだけが、彼の力になれる。その事実に少しだけ誇らしさすら感じられた。


「勝てよ、健也」


 アタシは、最後に彼に聞こえるように呟くと、地に伏す前に敗北時のルールに従いガイアを離れた。


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