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引きこもり勇者がダンジョンマスターになったら  作者: ニンニク07
第六章  冒険者編
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クエスト!! 後編

 正確な時間は分からないが、クーアンがおやつが欲しいと言い出したので、ガビ村に着いたのは恐らく十五時前くらいだろう。


 ガビ村に着くやいないや、ルーク達は若い村人の女性からオークがどこに出没したのかを尋ねた。見方を変えればナンパしているように見えるが、こう言った行動力は見習うべき部分だろう。


「聞いてきたよバベルちゃん!オーク達はこの村の裏手にある洞窟を住処にしているようで、歩いてすぐらしい。とっと倒しに行こう!」


 下心が見え隠れさえしなければいい冒険者になるのにと思いながら、村外れにあるオークが住処にしている洞窟を目指した。


「バベルちゃん!!それに他の子達はこの草陰に隠れて見ていて。これから俺達がオーク退治のするからしっかり見て置くこと!!」


 洞窟らしきものが見えてきたところで、突然ルークが言ってきたので、俺達は指示通りに草陰に隠れた。だが、その後のルーク達の動きは明らかにおかしかった。普通なら敵に気付かれないように警戒して洞窟に近づくはずが、なんと彼らは一切警戒しないまま、洞窟の前に立つばかりか大声で叫んだのだ。


「おらぁ、オーク!!人間様が来てやったぞ!早く出て来い!!!」

「やい、豚野郎早く出て来いやぁーーー!!

「グズグズするな!!」


 俺はてっきり気付かれないように慎重に行くものばかり思っていたので、突然このような行動を取ったルーク達の考えが理解できなかった。それともこれが、冒険者の戦い方なのだろうか?俺の頭の中はひどく混乱した。


「バカですか、彼らは?」

「わーー!あほだー!」


 彼らを蔑むような目で見るサクラ達を見て、どうやらおかしいのはルーク達の方だと知ることことができた。だが、それでも俺は彼らに淡い期待を抱いていた。確かに敵に気付かれる前に先制攻撃できたチャンスを彼らは自らの手で潰したが、もしかしたら暗い洞窟内では戦いづらいから外におびき寄せるための作戦かもしれないからだ。


「!?おい、出てきたぞ!」

「お前らやるぞ!」

「前に戦った時のように一方的に倒してやるぜ!」


 案の定、洞窟から手に木のこん棒を持った三体のオーク達が出てきた。


「ぶひぶひ!ふがふが!」


 あのオークはどうやら人語は喋れないらしく、豚のような声を出しながら洞窟から出てきた。


 洞窟の入口はオーク一匹が通れるほどの隙間しかないため、一匹ずつ出てきた所を攻撃するのかと期待したが、彼らは見事に期待を裏切り、何もせずに三体のオークが出てくるのを律儀に待った。いやだが、まだだ。もしかしたらまだ何か策があるかもしれない。しかし、そう期待していたのは俺だけで、サクラ達は愛想が尽きたような目で無言のままルーク達を見ていた。


「ゲストが見ているんだ一気にやってカッコイイ所を見せるぜ、アンバー!ニケル!!」

「おう!」

「食らえ!ファイアーボール!」


 ニケルの放ったファイアーボールが口火を切った。


「ぐはっー!」


 ニケルの放ったファイアーボールは、オークの一匹の腹部に命中して、オークは悲鳴のような叫び声を上げた。だが、


「!?……なんで?ファイアーボールが当たったのに何でこいつは倒れない?前戦ったオークはこの魔法で一発で倒せたのに……」

「おい!どういうことだニケル!ちゃんと魔法を放ったのか!」


 ニケルのファイアーボールはオークに多少の痛みは与えたようだが、それだけだった。攻撃を受けても何事もないかのようにオークは立っていた。そして、今度はオークがこん棒を振りかぶりながらニケルに迫った。


「どけ!ニケル!俺が止める!」


 ニケルを守ろうと、ニケルの前に大盾を持つアンバーが立ち塞がった。盾を突き出してオークの攻撃に備えるアンバー、彼の顔をオークの攻撃など防ぎきって見せるぜと自信に満ちていたものだったが、


「「ぐあああああああーーーーー!!」」


 オークが振り下ろすこん棒の威力は、盾とその背後にいたアンバーとニケルをまとめて吹き飛ばした。


「お前達ーー!!」


 その光景を見て、ルークはアンバー達の元へ駆け寄ろうとするが、仲間の元へ行かせないようにするためか残っていた二匹のオークが立ちはだかった。


「雑魚の癖に邪魔するな!!」


 ルークはロングソードでオークを切り捨てようとしたが、オークは器用にルークの剣をこん棒で受け止めた。


「馬鹿な!?俺の剣が止められた?」


 己の剣が容易くオークに止められたことを認められないルークは、やたらめたら剣を振り回すがこん棒で全て受け止められる。


「食らえ!やあー!とあー!」

「ブヒブヒ!ブヒブヒ!」


 そんなルークの姿を哀れな生き物を見ているように指さすオーク達、だが、我を忘れているのかルークの目には映っていないようだ。


「ひいーーもうだめだッ!!」

「嫌だ!死にたくないッ!殺される!」


 一方、引き飛ばされた衝撃で傷を負ったのか、それとも恐怖したのか、立ちあがることすらできないニケルとアンバーの元に得物を仕留める狩人のような目をした一匹のオークが迫る。


「ニケル何とかしろ!!」

「アンバーお前こそ、盾で俺を守れよ!」

「馬鹿か!盾で防げるような攻撃じゃないし、そもそも盾なんかどっか飛んでいったよ!」

「くそお!何だよこのオーク強すぎだろう!前戦ったオークはもっと弱かったぞ!」


 俺から見れば、ダンジョン内のオーク達と同じくらいの強さに見えるけど違うのか?だが、その疑問について考えている暇はない。このままではアンバーとニケルは殺されてしまうからだ。


「仕方ない、ファイアーランス!」


 二人にバレないように俺は、草陰から貫通力のあるファイアーボールといえるファイアーランスを発動させ、さらにアルカナ能力〈隠者〉で見えなくして、アンバー達に迫るオークに向けて放った。姿なきファイアーランスは正確にオークの心臓部を貫き、一撃でオークを葬った。


「えっ!?」

「今何が起きた!?」


 突然、目の前でオークが死んだことに驚く二人を尻目に、俺は同様の攻撃を再び放ち、ルークの方にいた二体のオークを瞬殺した。


「えっ!?」


 突然、胸に穴が開き絶命したオークを見て、アンバー達と同じくルークも間抜け声を出して立ちすくんでいた。


 さて、ルーク達は救ったが、これからどうしようかと悩む俺の袖をサクラが引っ張った。


「マスター、あれで良かったんですか?使えない冒険者なら死んだ方が街のためになるのでは?」

「クーアンもそう思う!」


 結構酷いことを言う幼女二人を俺は優しくなだめた。


「まあ、そう言うな同じ冒険者だ、お互いに助け合わなくてはこれからやっていけないぞ」

「でも、あれじゃ自分達がオークを倒したと言いませんか?」

「そんな馬鹿な事を言うな。ほら行くぞ!」


 とサクラには言ったが、段々不安になってきた。ここまでの彼らを見ているとそうやって来ても不思議ではないと思えてきたからだ。俺はサクラ達を促して草陰から出た。


「お~、君達、俺達の戦いは見た?惚れたかな?」

「俺達くらいのチームになるとオークをワンパンできるんだぜ!」

「俺の魔法の威力凄いだろう?知りたければ、手取り足取り教えてあげてもいいぜ」


 !?ビックリした。俺達が出てくる直前まで何が起こったのか分からずに混乱していたのに、俺達が草陰から出てすぐに三人ともお互いに一切示し合わずに、目の前で突然死したオークを自分達が倒したと言い張ったからだ。一人くらいならそれくらいの根性を持っている奴がいるかもしれないが、三人共同時に、同じ行動に移れるとはこいつらチームワークは抜群かもしれない。


「凄いですね~流石は先輩ですね~」


 俺はとりあえず褒めることにした。だが、それが間違いだった。何故ならルーク達を調子に乗らせてしまったからだ。


「だろ~!いや~やっぱり、俺達は若手ナンバーワンのチームだからな!」

「そうだぞ!これからドンドン出世するからな、こんなに早く俺達とコネを持てて、お前達はラッキーだぞ!」

「すぐに女達が寄ってくるはずだから、俺達を彼氏にしたいなら、早く告った方がいいぞ!」


 う・ざ・い、凄くうざい。確かに今回のオーク討伐は俺にも落ち度はあるかもしれないが、この連中の調子に乗り具合は一瞬で俺を不快な気にさせた。サクラ達も同様な気持ちらしく大変嫌そうな顔をしていた。その事がバレと気まずくなる事を悟った俺は慌てて、早くセレンに戻ることを提案した。


「日が暮れぬうちにセレンに帰りましょう!皆さんの活躍を早くギルドの人にも報告すべきです!」


 俺の発言を聞き、もっともだとルーク達が思ってくれたおかげで、すんなりとセレンに帰る運びとなった。だが、帰り道、当然のようにしつこく話かけてくるので、俺達はすっかり参ってしまった。


 

 聞いているだけでうざいルーク達の自慢話などに耐えながら、俺達がセレンのギルド支部に戻ったのは夕方頃であった。ギルドホールに着いてすぐに俺達は今回のクエストの報酬金を受け取った。


 今回のクエストの報酬は12000ワイア、ギルドの規定では、クエストで入手した素材は冒険者が自由に分配できるが、クエスト報酬は受注時の人数から均等に割ることになっている。なので、今回の報酬金12000ワイアを六人で分けたので、一人当たり2000ワイアずつ受け取ることになった。


「私達は戦ってないのにお金貰っていいんですか?」


 倒したのは俺だが、素人冒険者役をやることになってしまったので、言い出すことはできない。


「い~のい~の、ギルドの規定で報酬金は山分けだからね。それに今回の討伐対象のオークから剥ぎ取れるものはないからね。他に採取できたものなかったし、報酬金くらいしか得るものはなかったしね」


 おちゃらけてはいるが、金に執着しないだけ、まだましかもしれない。


「まあ、もっとも貴族である君達から見れば6000ワイアなんてはした金だろうけどね。でもその2000ワイアは冒険者としての初収入だから大事にしな」


 ん?貴族?ルークが何を言っているのか理解に苦しんでいる間に、アンバー達が続く。


「この街セレンは宿代が高いからな!安くても一人一泊5000ワイア前後とかぼったくりだろう。他の街はこの半分以下なのに!」

「君達はいいよな、貴族なんだから冒険者の収入がなくても何とかなるからな」

「じゃあ、また今度機会があったらまたクエストに行こう!」


 そう言い残し、ルーク達は去っていった。去っていくルーク達から、やっぱり落とせなかったじゃんとか今日はお前の驕りとか言う声が聞こえてきたが、ついさっき大問題があることに気付いてそれどころではなかった。


「マスター」

「言うな」

「マスター」

「分かっている」


 俺達の前に一陣の風が空しく吹いた。そう、俺達には金がなかった。今日泊まる宿の当てもない。俺達の手にあるものは、今回のクエストで得た合計金額である6000ワイアのみであった。



PVが10万を超えました。

読んでくださった方々、ブクマ登録してくださった方々、今まで本当にありがとうございます。

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