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引きこもり勇者がダンジョンマスターになったら  作者: ニンニク07
第五章 王都解放編
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世界

 ルシファーである黒川華凛を除く二十人の勇者達は今日までずっと疑問に思っていたことが二つあった。一つは、直接会った事のない女神から、いつ女神からアルカナ能力を渡されたのかという事。もう一つはアルカナは全部で二十二あるのに、自分達勇者が二十一人にしかいないことだ。つまり一つ足りないのだ。最後のナンバーを持つアルカナ〈世界〉が、




 ルシファーが上がってくるのを待っているかのように空中で制止していた女神メタトロンの元へ、ルシファーである黒川華凛は八枚の灰色の翼を羽ばたかせて飛翔した。


「久しぶりだな、メタトロン。あの方が座っていた席はさぞ居心地が良かっただろう?」


 ルシファーは千年ぶりに再会した宿敵に対して挑発するかのように挨拶をした。


「本当にお久しぶりですわね、ルシファー。千年ぶりかしら?」


 メタトロンはルシファーの挑発に一切動じずにに挨拶を返した。


「あなたが、我々に敗れ行方をくらまして千年、私はずっとあなたを探していましたのに、まさか私が選抜した勇者の中に紛れていたとは、流石に予想外でしたわ」

「確かにお前に見つからないように力を回復させるのは大変だった。……だが、おかげで私は面白い体験ができた。あの教室で私は生徒、お前は教師をやっていたのだからな!」

「ずっと探していた相手が目の前にいたのに気付かないとは、私にとって今世紀最大の失敗になるでしょうね」


 自分の失敗を反省するメタトロンに対しルシファーは畳かける。


「完全無欠のメタトロン様も失敗はするみたいだな。どうだ?神の後継者の役を代わってあげても良いぞ」


 ルシファーはメタトロンの失敗に付けこむが、メタトロンは一蹴する。


「あの方は私を後継者に選んだのです。千年前と同じく、懲りずにまだあなたは神の後継者の座を狙っているのですか?」

「ああ、狙っているとも……今でも私の方が神の後継者に相応しいと思っているよ。だからこそ、勇者に成りすまして色々準備をしてきたのだ!」


 千年前と同じく、自分の方がメタトロンよりも優れていると確信しているルシファーの顔を見て、メタトロンはため息をついた。


「はあ~、変わりませんねあなたも、一つ聞きますが何を企んでいるのですか?」

「わざわざ話す必要性は感じないないが、お前にとっては千年ぶりの再会だ。特別に教えてあげよう!」


 ルシファーは手ぶりしながら、自身の計画を説明し始めた。


「まず、あの使えない堕天使共、もとい魔王達の計画は悪くない。この世界ガイアは天界との結びつきが最も強い世界だ。この世界を手中に収め、負の魔力を充満させれば天界にもかなりの悪影響が出るだろう。だがそれだけではダメだ」


 顔を歪ませながら、ルシファーは話す。メタトロンは口を閉じて、静かに聞いていた。


「私を含め我々堕天使や悪魔は天界から追放された身、もう二度と天界には侵入できない。だからこそ、ベルゼブブ達は回りくどい手を使っているが、私はもっといい手を思いついた。それはこの世界ガイアを消滅させることだ。ガイアが消えれば同時に天界も消滅、良くても壊滅的被害が出るだろう」


 ルシファーは大地を指す。


「ベルフェゴールを使って、天界とガイアのパイプを閉じて魔力をせき止め暴発させる作戦は失敗に終わった。計算上後一万年はパイプを止めねばならないと判明したからな。だが、代わりにベルフェゴールは面白いものを見つけてくれた」


 ルシファーは腰のポケットから、野球ボールくらいの血のように赤い石のような物を取り出した。


「それは?」

「パイプをせき止めている時に、ベルフェゴールが発見した物だ。私はこれにエンド・ストーンと名付けた。この小さな石には今までに天界からガイアに流れていた膨大な魔力の一部が蓄えられている」


 危険な物だと察したメタトロンの眉が少し上がった。


「凄まじい魔力だ。この石をに込められた魔力を天界とガイアを繋ぐパイプの中で解放すれば二つの世界は跡形もなく消えるだろう。しかしこの石は封印状態になっていてな、すぐに解放することはできない。解放するためには、この世界の魔力が満ちていない完全に隔絶された空間で、私自ら一か月間集中して儀式を行う必要がある」

「なるほど……あなたの目的は分かりました。どちらにしろここで叩く必要が出てきましたね」

「どの道そうするつもりだっただろう?」

「そんなことはありませんよ。あなたが反省していれば救済措置を与えてあげても良いと考えていましたよ」

「ふんっ、私は反逆者だ。支配者からのおこぼれなど貰えるか!」


 メタトロンは残念ですと呟くと、戦闘態勢に入った。ルシファーもエンド・ストーンを仕舞うと同じく戦闘態勢に入り、天に座す太陽を指し叫んだ。


「では、私から行かせてもらう。光よ沈め、エクリプス!!」


 ルシファーは膨大な魔力を消費し、魔法の頂点である神話級魔法を発動する。次の瞬間にルシファーが指していた太陽の中心部分が黒く染まった。そのまま白紙に垂れた墨汁のように太陽を侵食し、すぐに太陽の輪郭を除いて真っ黒に染め上げた。その姿はまるで黒い太陽、科学的に言うならば日蝕と呼ばれる現象になった。


「エクリプスは千年の間に私が開発した魔法、光と闇の双方を持つ私だけが使える魔法。その効果は光の象徴である太陽を反転させ闇の象徴とする空前絶後の魔法だ!!この黒き太陽の下では闇魔法以外の全ての魔法は使用できなくなり、同時に闇魔法の力は大幅に強化される。闇魔法が使えないお前達天使はもはや魔法を使うことはできないぞぉ!!」


 自身の魔法を得意げに語るルシファーは眼下にいるガブリエル達大天使と勇者達の姿を見る。人知を超えた現象に口を開けたまま放心状態の彼らを見てさらに調子に乗った。だが、目の前にいるメタトロンだけは違った。


「確かに凄い魔法ではありますが、今の私から見れば大したことはありませんよ」

「何!?」

「あなたは失念しています。勇者達には与えていない私が持つアルカナ能力〈世界〉の存在を!時間よ戻れ!!」


 メタトロンが能力を解放すると、文字通り世界は一瞬だけ光に包まれた。そして、ガイアに住まう全ての者が再び目を開けると、黒い太陽は消え去り、いつもの明るい太陽が世界を照らしていた。


「!?何をした?」

「千年前の戦いでは私のアルカナ能力〈世界〉は未完成でした。基本能力の地形変化しかできませんでしたからね。でも五百年前の勇者達の戦いを見て気が付きました。能力は進化すると。だから私はこの力を鍛え上げました。そして今では、時間操作と空間操作と物質変化を兼ね備えた最強のアルカナ能力へと変貌を遂げたのです」

「ば、馬鹿な!?何だそのインチキ能力は!」

「前後五分程度までしか時間干渉できませんが、今のは、時間操作を行い、あなたがその魔法を発動する前の状態まで時間を巻き戻したのです。あなたや他の方にも分かるように記憶を残したままね。ただし時間が戻るのを認識しているため、あなたが消費した魔力は戻ってきません。」


 でたらめのチート能力を前に流石のルシファーも怯えるように後ずさる。


「せめて、あなたが本来の肉体でかつあなた固有のクリフォト能力〈無神論〉を持っていれば対抗できたでしょうが、そうではない以上あなたに勝ち目はありませんよ」


 千年前の戦いで肉体と能力を失ったルシファーにはもはや、なすすべがなかった。だが、神は反逆者に最後の慈悲を与えた。


「閉ざせ!」


 メタトロンは再び能力を発動する。すると、王都にいるルシファーや高木、アスタロトに悪魔達の体がゆっくりと透け始めた。


「一体何をした?!」

「そう、声を荒げないでください。これは私からの最後の慈悲です。これからあなた達を異次元空間に強制転移させます。半年は出られないでしょう。そこでゆっくりと己が犯した罪を見つめ返して反省をしてください。それとその空間は私の魔力で満ちているので、エンド・ストーンとやらの解除は無理でしょう」

「何だと!?」

「神はあらゆる者に平等に救済を与えるのです。善も悪も平等に」


 その言葉を聞き、最後にルシファーは激しい怒りを露わにした。


「貴様ぁ!!それだ!お前のその傲慢な態度が、自分が一番偉いと思っている態度が気に入らなかったのだぁ!傲慢は私の特権だ!私は諦めないぞ。必ず!必ず!!貴様を天の座から引きずり降ろしてやる!!!覚悟しておけ!」


 その言葉を最後にルシファーと全ての悪魔達の姿は王都から消え失せた。





 目の前で起こった超現象を僕らはただ見ることしかできなかった。複数のアルカナ能力を持つ僕も、圧倒的な戦闘力を持つ天使や魔王、高木ですら、空を見上げて二人の天使の壮絶な戦いを指を咥えて見ていることしか許されなかった。メタトロンとルシファー神々の前には人間など本当に取るに足らない生き物だと思い知らされたのであった。


 さて、二人の天使はかなりの高い所を飛翔していたが、どういうことか分からないがメタトロンとルシファーの会話は僕らの耳にまで届いた。なので、おおよその事は知ることができた。ルシファーである黒川の目的も、高木を含め彼らが何故消えたのかも知ったのだ。


 この数分間で多くの情報を得たため、まだ混乱している部分もあるが、それは後からガブリエル辺りに聞くとして今は、地上へと降りてきた藤原先生いや最高位天使メタトロンの話に耳を傾けるべきだろう。


「久しぶりですね。三年三組の皆さん。今から、あなた達がこれから何をすべきかをお話します。ノートも筆記用具もありませんが、授業と同じで聞き洩らさないように気を付けて聞いてください」


今回でようやく全てのアルカナ能力が出揃いました。

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