狙われた少年
僕のモンスター達は皆優秀だ。優秀なのはいいことだ。だが、優秀すぎて僕は今暇である。
メイルや吉村さん達と別れた僕はヴァンパイア部隊を率いて王宮の方を目指した。道中、当然のことながら何度も敵である悪魔達が襲撃を受けた。
しかし、敵はわらわらと出てくるが、ヴァンパイア達があまりにも強いため僕の出番がほとんどこないのだ。まあ大将である僕が最前線で戦うのは少し問題がある気もする。
だが、僕はヴァンパイア達が一方的な戦いを展開しているのを見て、自分も折角チート能力を持っているのだからラノベの主人公のように俺Tueeeがしたいと思うようになっていた。
しかし、現実の僕ができることはヴァンパイア・ホースに騎乗して一方的に悪魔達を屠る一番隊の戦いを眺めているだけだ。正直言ってかなりつまらない。
また、僕も戦うと言うとヴァンパイア達が、
「マスターが自ら手を下すほどの相手ではございません」
「この程度の敵、我々の手で駆逐できます」
「ブラド様から、マスターの身を最優先で守るように仰せつかっております」
等と言い僕を戦わせてくれないのだ。ブラドも王都侵入時には単独行動を許してくれたが、自分達の手で何とかできる相手だと判断した後は、僕の事を部下に守られる王様のような扱いだ。
こうして考えてみれば、塔を出て僕が戦闘をしたのは、上位悪魔に襲われるメイル達を助けるために戦った時だけだ。あの時も結局はエリザベスが上位悪魔達を洗脳して配下にしたあげく、肝心の魔王と黒川には逃げられてしまっていた。つまり、現在の僕の撃破数は名も知らぬ上位悪魔一体のみだ。
「あ~暇だな」
わざと声を出して、ヴァンパイア達の反応を伺うが、無視しているかの如く相手にしてくれない。このままずっとこうなのかと少し焦りを覚えた頃、あるチャンスが巡ってきた。
「なんだこの魔力は?」
突然、地下からおぞましく膨大な魔力を感じたのだ。魔力を抑えたためか、すぐに反応は消えたが、僕に匹敵する量の魔力に流石のヴァンパイア達から焦りの色が見られた。
「よっし!あの魔力の正体を知るために地下に潜るぞ」
これは僕の出番だと張り切った僕に対しヴァンパイア達は複雑な顔で答えた。
「ブラド様とエリザベス様がいない今、あの魔力の持ち主と事をまみえるのは危険だと思われます」
ブラドは別動隊を指揮、エリザベスは黒川達から奪った上位悪魔を引き連れて王都内の掃除をしていたので、ここにはヴァンパイア小隊十個分の戦力(ヴァンパイア十体、レッサーヴァンパイア二十体、ヴァンパイア・ホース三十体)しかいない。魔王が出てこなければ十分に戦える戦力ではあるが、地下から感じた魔力と戦うにはちょっと心細い。
「それに地下では騎馬隊である我々の機動力は大幅に低下します」
「何も地下で戦わず、敵が地上に出てくるのは待ってみてはいかがでしょうか?」
夜の眷属であるヴァンパイアがこぞって地下に行くのを引き留める光景にちょっと吹き出しそうになったが、ヴァンパイア達の言い分は最もだ。それに地下には僕に勝った高木がいる。無効化能力を持つ彼が負けるとは思わないので、任せてしまっても問題ないだろう。
「は~分かった。じゃあ、西門の方に行こう。王宮周辺はガブリエル達が戦っているので正直近寄りたくないしな」
今いる所は王宮から少し離れた場所ではあるが、激しい爆発音が聞こえてくる。僕はともかくヴァンパイア達は流石に巻き込まれる可能性を感じるくらい激しい戦いだ。無駄に近づいて戦力を失いたくはないので、、僕もメイル達を追いかけて迂回して西門の方に行くことにした。
西門への道中はメイル達が倒したのか悪魔達は襲ってこなかった。代わりに中央に噴水がある大きな広場を通過した時に、僕はあるものを発見してしまった。
「なんだ、あれ?」
三階建の建物の中間くらいに、天使と思われる者が壁に磔にされていたのだ。翼の先と体の至る所に、金色の杭のようなものが刺さっており、体を壁に固定していた。また刺さっている部分から赤い血が流れており、痛い痛いしい。そして一番の問題点はこの天使がガブリエルと同じで翼を六枚も持っていたことだ。
一瞬ガブリエルかと身構えてたが、良く観察すると違う部分があったので少しだけ安心をした。ガブリエルは青い髪だったのに対しその天使の髪の色は緑で、外見年歳もガブリエルよりも五歳くらい上に見えてた。そして何よりガブリエルはあそこまで胸は大きくない。僕が抱いた磔にされた天使の印象は包容力のある巨乳のお姉さんといった感じだ。
「あの~大丈夫ですか?」
少なくとも天使は敵ではないので、生きているかを確認するために恐る恐る声を掛けてみた。するとすぐに反応があった。
ラファエル視点~
うう、ガブリエルちゃんがまさかここまで本気で攻撃してくるとは、
魔王アスタロトの目の前で何故かワタクシをボコボコにしたガブリエルちゃんは、ワタクシの体に聖杭を打つとアスタロトと戦うためにどっかに行ってしまいました。
後に一人残されたワタクシは、壁に磔にされたまま放置されました。この聖杭は勇者か天使でないと抜くことができないため、杭に打たれているワタクシではどうすることもできません。幸いな事に周囲に何故か敵がいなせんが、同時に味方もいません。こうなるとやることがないので、ワタクシはしばらく寝ることにしました。
「あの~大丈夫ですか?」
いけない、いけない、すっかり熟睡してしまった。気を引き締めなくては。そして、気を引き締めて、目を開けて、起こしてくれた人物を確認した。
「良かった、生きているようですね」
目がぼやけていて良く分かりませんでしたが、その人物からは勇者の波動を感じました。声も女の声だったので、最初は用が女性ない女勇者かと思いましたが、その勇者の顔を良く見てワタクシはすぐに考えを改めました。
ヤバぇ、めっちゃ好みだわ~
なんと、女だと思っていた勇者は男の子だったのです。童顔低身長で、声も変声期を迎えているようですが、それでもまだ高いです。気に入らなければ魔法で何とかしましょう。勇者であることを踏まえても十分に合格点に達しています。だが、ワタクシの心を刺激したのはもっと別の部分でした。
こ、これは、この顔はロリ女装ショタの頂点を狙える。
ワタクシの秘密の花園でも女装の才能を持つ男子は結構いますが。彼ほど男の娘になれるほどの逸材はいないでしょう。ああ~、男物の服を着ているのが勿体ない。あなたは女の子の恰好をして初めて輝くのですよ。
あの少年は、何故かヴァンパイアと思しき者達を率いていましたが、そんなのささいな事です。あの子を愛でたい、そして何としても、お持ち帰りしなければなりません。
そのためにも最初が肝心です。最近はファーストコンタクトに失敗して逃げられることが多いです。無理やり捕まえて、堕しているのですが、手間がかかりますし、何より興が乗りません。ワタクシは純真無垢な子が自分からワタクシを求めてくるパターンが好きなのです。
「あの~大天使ですよね?お助けしましょうか?」
あ~あ~、その甘い声にその顔、警戒しつつも母性を求めて尋ねてくる小動物のようなその顔がいい。声の方も手を加える必要はないですね。それと最近ネット通販で購入した黒のゴスロリ服を着て今のをもう一度やって欲しいですわ。
「心配には及びません。ですが、この杭がある限りワタクシは身動きが取れません。外してくださると嬉しいのですが」
不覚にも涎が垂れてきましたが、気付かれてない様子。戒めが解かれたらすぐにでも抱き着きたいです。
「そうですか、じゃあ外します。エアロ!」
少年は高度な風魔法に使い宙に浮くとワタクシのすぐ傍まで来ました。女性の体に慣れていないのか、ぎこちない感じの少年の手がワタクシの体に迫ります。
ワタクシの心臓の鼓動が激しくバクバクと鳴っております。この気持ちはもう自分ではもう抑えられません。早くメチャクチャにしたいです。
いきなり体の方から行くのは緊張するのか、少年は翼の方へと手を伸ばします。翼でも何でもいいから早く少年に触れたいと感じた時に、聞き慣れた声が聞こえてきました。
「おや、ラファエルしばらく見ないと思ったらこんなところにいましたか」
背後から突然、若い男の声が聞こえてきたので振り向くと、そこには先ほど別れた吉村さん達、囮部隊の勇者達がいた。向こうの状況が聞きたくなったため、僕は一度降りる事にした。その瞬間に天使から小さな舌打ちが聞こえてきたが、きっと気のせいだろう。外見から分かる。ガブリエルと違ってこの天使はきっと心優しい天使に違いない。何者をも包みこむ、大きな胸がそれを証明している。
魔法を解除し、吉村さん達に大体の話を聞いた。まず山城君の体には大天使ウリエルが憑依していて、彼の指示の元魔王ベルフェゴールを倒したそうだ。その後、メイルとリサさんは予定通りに王都を離れる本隊と合流したが、勇者達はウリエルに率いられて王都内の敵戦力の撃破をすることにしたらしい。そして僕と遭遇したようだ。というか、
「魔王を倒したのか?」
「ウリエルさんのおかげよ」
山城君の体に憑依しているからいまいち実感が沸かないが、大天使ウリエルは確かに山城の体を支配しているみたいだ。僕はウリエルに磔になっている天使について尋ねようとした時、爆音と共に小さな物体が広場に飛んできた。
「貴様は魔王アスタロト!」
飛んできたのはボロボロに幼女だったが、開口一番に山城君に乗り移ったウリエルが魔王だと叫び緊張が走った。磔の天使も険しい顔だ。
「…お前はウリエルか、という事は大天使が三体もいるわけか」
傷だらけの体を起こしながら、アスタロトは僕らを睨んだ。と、同時によく知った顔が広場に降り立った。
「追い詰めたぞ、アスタロト!」
アスタロトから少し遅れて広場に降り立ったのは、金色の鎧に背たけよりも巨大な大剣を持つガブリエルだった。どうやらアスタロト相手に優位に戦っていたようだ。魔王を相手にしても余裕の表情だ。流石である。
しかし、ガブリエルはアスタロトの他にも僕らがいることに気付いたみたいだが、、気付いた瞬間に余裕に満ち溢れた表情は消え、何故か頭を抱えて叫んだ。
「しまった!私としたことが、このままではカリエルの二の舞になってしまう」
突然、剣を捨てて喚くガブリエルを見て、僕は彼女も疲れているんだなと思った。帰ったら待遇を良くしてあげようかと考えた時、突然広場にあるマンホールが宙を舞い、中から一人の人物が出てきた。
「どうやら、クズ共は消え、役者が揃ったようだな」
そう言い放つのは諸悪の元凶、黒川華凛だ。また出てきたのなら今度こそ倒してあげようと思ったが、マンホールからもう一人出てきて僕は息が止まった。
「えっ?何故、お前が黒川と一緒にいるんだ高木?」
黒川に続いて出てきたのは、以前あった時とは姿が異なり、黒い翼に長い爪を持つ、まるで悪魔のような風貌をした高木拓斗であった。
次回から第5章 クライマックスです。




