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引きこもり勇者がダンジョンマスターになったら  作者: ニンニク07
第三章 勇者強襲編
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目覚め

「お前達の負けだ!」


 僕は醜く言い争いを続ける佐伯達に聞こえるようにはっきりと告げた。


「はぁ~何をふざけたことを言ってい……」


 内田さんの胸倉を掴んでいたいた佐伯君は、自分達が僕のモンスター達に囲まれている現状を把握し唖然とした表情で手を放す。


「ちょっと、なんでうちの支配下にあった審判までそちらにいるのよ。あんたうちのために戦いなさい!」


 さっきまで、自分の支配下にいたガブリエルまで、僕の支配下に戻っていることが認められない内田さんが吠える。何故今、ガブリエルは内田さんの支配下にいないのか?その理由はガブリエル本人の口から明かされた。


「確かに、あなたの支配力は中々の物だった。アルカナ能力は持ち主の精神力によって強さを増す。アタシのマスターよりもあなたの方が精神力が上なのは事実でしょう。しかし、あたしは天界に四体しかいない大天使の一人、あなたごときの力でアタシを支配するのは不可能なのだ。はっはははははっは!!!」


 ガブリエルの自信に満ちた笑い声が舞台上に響く。だが、その笑い声をかき消すように内田さんが叫んだ。


「そんな、だってあんたは、うちに操られていたじゃない?」

「ああ、あれは演技だよ。何だか体を動かしたくなったのと、ちょっと思う所があってわざと操られていた振りをしていただけだ!」


 ガブリエルの告げる真実を聞き、内田さん力を無くしその場に蹲った。


「そこの大天使の戦いぶりは明らかに不自然であった。目は他の操られている連中と同様に死んでいるのに、動きから切れが失われていなかったからのぉ。その辺に気付いていれば、主に操られていない事に気付けたはずだったの」


 ガブリエルと交戦していたエリザベスはどうやら、戦いの中でガブリエルが操られていない事に気付いていたようだ。ちなみに僕が気付いたのはついさっきだ。一緒になってガブリエルが佐伯君達を包囲している姿を見てようやく、操られていないことに気付いた。


「アタシは天界一、死んだ魚ような目をするのが上手かったんだよ!」


 それは自慢なのか?ガブリエルはよく分からない特技を胸を張って誇らしげに言い放つ。


「まだ、まだ、俺の負けじゃねぇ。寺尾と大村はどうした!」


 佐伯君は寺尾君達がすでに殺されていることにも気づいていないようだ。僕は彼らに現実を思い知らせるために寺尾君から回収した〈死神〉を発動させ、佐伯君の背後に移動した。


「後ろを見な!」


 突然、僕が消えたことに驚いてあちこち見渡していた佐伯君に僕はお前の後ろにいるぞと囁いた。


「馬鹿な、なんでお前がそこにいる?」


 驚きの表情を浮かべる佐伯君に教えてやった。


「この能力を知らないのか、君の仲間の能力だろう?」

「はぁ、何を言ってやがる。確かに相手の背後に移動するのは寺尾の死神の能力だが、それを何故てめえが使えるんだ!」


 佐伯君が吠えるのも当然だ。自分の能力をべらべら喋るのは負けフラグだが、どうせこいつらは死ぬんだから最後に教えてやってもいいだろう。


「僕の〈塔〉の能力で生み出したダンジョン内で死ぬと、死んだ奴の力を僕は回収できるんだ。このようにな!」


 僕は西村君から奪った〈力〉を発動させ、同時に抑えていた魔力も全開放した。力がみなぎってくる。元々アドラメレク並み魔力を持っていた僕の魔力は二倍になった。今ならガブリエルとも戦えるだろう。


「なんだそのチート能力は!他人の能力を奪うだと、それにその魔力、なんで最底辺の津田のくせに俺よりも強いんだぁ!!」


 僕よりも劣っていることにようやく気付いた佐伯君の絶叫が闘技場に響き渡る。まだ、認められないのか、それとも諦めが悪いのか、その怒りを自身のアルカナ能力に乗せて、激しい怒りの炎を放とうとするが、炎を開放する直前に僕はかつて山賊達から奪った足運びで佐伯君の懐に飛びこみ鳩尾に拳を叩きこんだ。


「ぐっはっ!」


 骨も内臓も砕いたような感触だ。佐伯君は吐血し、その場に倒れこんだ。だが、それでも意識は失われておらず、鋭い眼差しで僕を見据える。


 生意気な目だ。隣で今も蹲り、諦めの目をしている内田さんとは違い佐伯君の目は今なお僕に反抗的な目をしていた。


 その目を見た瞬間、僕は自分の中に自分でも制御できない怒りにも似た感情が芽生えたのに気付いた。そして、僕はその感情に自分のすべてを預けた。


「元の世界では、確かに僕は佐伯君よりも劣っていたが今は違う。なんで僕を認めない。なんで僕に反抗的な態度を取る。お前達が蔑んだ〈塔〉はお前達の持つ力よりも優れたものだと何故認めない。なんで、いつまでも僕を下に見ようとする。僕の方がお前よりも強いんだ!」


 自分が自分ではないみたいだ。僕は生まれて初めて感じる解放感に身を任せた。


 そして、僕は、もはや体を動かすことできないであろう佐伯君の体に何度も蹴りを入れた。佐伯君が僕を認めるまで何度でも繰り返してやろうと決意した。


「俺は、お前がどれだけ強くなっても、てめえなんか認めないぞ津田。ここから抜け出して必ずてめえを殺す。高木の野郎が失墜した今こそ、俺の時代だ。金もクラスの女子共もこの世界の女どもみんな俺の物だ。津田ぁ、お前如き雑魚がこの俺の野望を邪魔するなぁ-」


 佐伯君の野望など僕は知らない。だが、どんなに蹴られても佐伯君は決して僕を認めなかった。ならばもっと苦しめてやる。


「な、なにを!」


 僕はうつ伏せで地面に横たわる佐伯君の首の上に片足を乗せた。そして、


「!?てめえ、まさか?」

「そう、このまま、お前の首を押しつぶす!」


 今までの蹴りだけでは、殺されないと感じていた判断していたのか佐伯君の顔に初めて焦りの表情が生まれた。


「待て、お前を俺の派閥に入れてやる。俺の部下になれば、なんでも好きなことができるぞ。金も女も好きなだけやる。それにお前の能力は美少女を沢山生み出せるだろう?俺にも献上してもらうが、同時に飽きた女達が働ける店を紹介してやる。当然、俺も紹介料を頂くが、そこで働かせれば金に困らないぞおっ…」


 俺のモンスター達を売春宿に売り飛ばすだと。もはや僕の怒りは頂点を越えた。そしてこの期に及んでまだ僕より上に立とうとするこいつの考えが気に食わない。


「返事は、こうだ!」


 何かが潰れるような音がした。こうして佐伯君は最後まで僕を認めずに死んでいった。


「ひぃ~!」


 佐伯君の血を浴びて我に返ったのか、今まで怯えるように眺めていた内田さんが悲鳴を上げた。そういえば、まだこの女がいたな。


「津田君、いや津田様、それとも他の方と同じようにマスターとお呼びしましょうか?」


 何者にも屈しない印象を持つ内田さんが僕に媚びへつらってきた。


「うちは他の連中のようにあなたに反抗しません。だから助けてください。何ならうちの体を好きに扱ってもいいから」


 胸元ボタンを外し必死にアピールする内田さん。彼女が本気かどうか試すために僕はゲスト登録を行った。ゲスト登録は僕に敵意がある者にはできない。メイルの時はアドラメレクが突然現れたせいで、皆、気が動転してしまい僕に対する敵対心を一時的に忘れてしまったから登録できたが今は違う。これで、彼女が本心で言っているのかが分かる。そして結果は不可だった。


「ふふっふふふふ!!」


 これだけのものを見せて彼女の心は折れてなかった。流石は僕からモンスターの支配権を奪った女だ。きっとこの場をやり過ごして寝首を掻くに違いない。


「……嘘だな。お前から敵意を感じる」


 一瞬驚いた顔をした内田さんは、すぐに本性を現した。


「そうだよぉ!! なんでこのうちがお前なんか根暗の言うことを聞いて体を捧げなければならない。てめえのような雑魚は一生うちらのペットのようにこき使われればいいんだよぉ!!!」


 思わず本心を語ってしまったのだろう。内田さんは、慌てて違うと叫び口を閉じた。


 それが、君の本性か、どれだけ力を見せつけても僕に負けるのが悔しいんだな。なら生かしておく価値はないだろう。


「奇遇だな。お前のような、けばけばしい女は嫌いだ。死んで僕の糧となれ!」


 僕は、モンスター達に殺せと命じた。最後に小さな悲鳴を上げて内田さんの体は血しぶきをあげて崩れ落ちた。



 僕の中に佐伯君と内田さんの力が流れこんでくる。色々あったが、〈力〉〈女帝〉〈死神〉〈隠者〉〈太陽〉の計五つのアルカナ能力を手に入れたわけだ。


 もう僕は今までの僕とは違う。沢山の部下を持ち、山賊や魔王と勇者からアルカナ能力や戦闘技術も殺して奪った。


 だが、どれだけ力をつけても最後まで佐伯君達は誰も僕を認めてくれなかった。他のクラスメイト達はどうだ?これだけの力を持つ僕だが、やはり佐伯達と同じように今まで虐げてきた僕を認めるだろうか?いや認めないな。


 自分達のストレス解消のために、クラスカーストの最下層にいた僕を散々甚振った連中だ。自分よりも劣った奴を認めるはずがない。


 では、どうする?しばらく考えたが、答えは簡単なことだった。


 認めさせればいい。圧倒的な力を見せつけてあいつら全員僕の力の前にひれ伏せさせてやる。


「はっはははははははははは!!!」


 この世界に来て、いや人生において初めて叶えたい目標ができた。突然笑いだした僕を心配する素振りをみせるモンスター達を横目に僕はしばらく笑い続けた。


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