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引きこもり勇者がダンジョンマスターになったら  作者: ニンニク07
第三章 勇者強襲編
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混乱

「ゴブイチお前はそこから動くな!」


 僕はベンチの隅で正座している一匹のゴブリンに命令した。ゴブイチと僕が名付けたこのゴブリンこそ一番最初にガチャから排出されたモンスターにして、この第一層の真のフロアボスである。倒されれば、ダンジョンから脱出されてしまう扉を出現させるフロアボスをわざわざ危険な観客席に置くわけがない。僕の目の届かない場所に配置していたのだが、正しい判断のようだった。


「……それにしてもまずいですね」


 ガイアールの言うように事態は深刻だ。こちらの最大戦力であるガブリエルが寝返ってしまったのだから。いくらユニークモンスター最強であるエリザベスでも一人でガブリエルの相手をするのはかなり厳しいだろう。


「私、戦ってもいい?」

「サクラばっかずるい、クーアンも戦う!」


 戦いに参加しようと、鬼族のサクラと九尾のクーアンが声をあげた。二人共、外見は小学生くらいの年齢だが、言っていることは物騒である。


「そ奴らが戦うのであれば、余も加勢しよう。先ほどの戦いでは少々物足りないのでな」


 幼女二人につられてブラドまで、戦うと言い出した。本当に好戦的な奴らばかりだ。


「皆さん、落ち着いてください。今は試合中です。部外者である、あなた方出るのはまずいでしょう」


 好戦的な三人をなだめるガイアール、どうやらこの中で一番常識的に判断できるのは彼だけのようであった。


 しかし、対戦相手である内田は観客どころか、審判まで自分の手駒としてしまった。もはや試合にならないだろう。


「ホーリー・レイ!」


 僕がどう行動すべきか判断に迷っている矢先に、ガブリエルがついに攻撃を開始してしまった。エリザベスの放つ闇魔法とガブリエルの放つ光魔法の閃光が舞台上を駆け巡る。もう悠長に考えている場合ではない。


「仕方ない、ブラドはエリザベスの加勢をしろ、残りは速やかに内田を始末しろ。あいつが死ねば洗脳が解けるかもしれない。僕はここでゴブイチを守る」


「「「「了解!!」」」」


 僕の合図と共にネームドモンスター達が行動を開始した。




「やはり、強いのぉ!」


 エリザベスは苦戦していた。外傷はないが、着ていた黒いドレスはガブリエルとの僅かな戦闘で至る所が破けていた。


 ガチャから排出されるモンスターは、生まれた時からこの世界の最低限の知識を与えられている。そこには大天使についても含まれていた。故に、エリザベスはガブリエルが自分よりも遥かに強いことを知っていた。


(それにしても妙な違和感を感じる。操られているわりには、他のモンスター共と違って、動きから切れが失われていないのぉ)


 エリザベスは今まで操られていたモンスターには意識がなかったせいか、動きに切れがないように感じていた。しかし、ガブリエルは目こそ虚ろであったが、それ以外には自分の意思が宿っているように感じられた。


「アクア・ハリケーン!」

「ちっ!また上級魔法か」


 不自然な点はあるが、それについて今は考えている余裕はない。ガブリエルは無尽蔵の魔力を使って上級魔法を連発してくるからだ。巨大な水の竜巻がエリザベスに迫る。どうやってこの魔法を対処しようかとエリザベスが考えているその時、援軍が現れた。


「ダーク・バースト!」


 闇系統の爆破魔法が竜巻を吹き飛ばす。竜巻は形を失い、舞台上に洪水のように水が降り注いだ。


「助太刀するぞ、オリジン・ヴァンパイアよ」 

「ぬしか、ノーライフキング。だが、我らといえどそう長くはあの天使を抑えられんぞ」

「問題ない、少しの間抑えられば、あやつらが術者の息の根を止めるだろう」


 ブラドの指し示す方向を見ると、まだ操られているモンスター達を倒しながら術者である内田に向かって進むガイアール達の姿があった。


「マスターと違って頼もしのぉ、ではやるかノーライフキングよ」


 圧倒的威圧を放つ天使に向かって二人のヴァンパイアは本気の戦いを始める。




「燃えるのです~!」


 普段は尾から九本の尻尾が生えている少女クーアンだが、幻獣魔法〈妖狐〉により、戦闘時には彼女の尻尾はモフモフの毛皮から灼熱の炎へと姿を変える。九本の炎の尻尾は伸縮自在であり、鞭のように振るい敵を倒す。


「操られている同胞とは言え、この程度の敵に対し本気を見せるとは、あの狐やっぱり馬鹿ですね」


 すべての金卵ネームドモンスターは流石にアルカナ能力に及ばないが、切り札として上級魔法である幻獣魔法を最初から会得している。かなりの魔力を消費する幻獣魔法をいきなり披露して操られている味方を倒しながら進むクーアンを見てサクラはため息を溢した。


「無駄口を叩くなサクラ!目標は目の前だぞ!」


 並走して進むガイアールから叱責を食らうサクラ。言い返そうとしたが、それは後にする事にした。まずは目の前の敵を排除することが先決である。


「お前達、私を守れ、肉の壁になれえー!くそ、控えの選手を出すなんてズルいぞぉー!!」


 目標である勇者内田からは焦りの声が聞こえてくる。切り札であるガブリエルはヴァンパイア達に抑えられ、残りの洗脳下にあるモンスターもサクラ達の進撃を止めることはできないからだ。


「速攻で決める!」


 雑魚の相手はガイアールとクーアンに任せて、サクラは一人敵陣に突入する。全モンスター中最速を誇るサクラのスピードに他のモンスターはついてこれない。鞘から日本刀を抜き、目標の首を取ったと思ったその時、真横から巨大な炎の渦が彼女を襲った。


「!?」

「なんだ、今の?」


 斬るのを辞めギリギリで躱すサクラ。操られているモンスターにあれだけの炎を操れる奴はいないはずと思ったが、すぐに攻撃してきた者が判明した。


「無事か、内田?」

「佐伯、うちを助けてくれたのか?」


 内田を助けた者の正体は、向こうのベンチにいたはずの勇者佐伯であった。佐伯は内田を助けるとサクラを見据えて言う。


「そちらが、控えの選手を全員出すなら、こちらだって出てきて文句ないだろう」


 確かにその通りだが、元はと言えばそこの勇者内田がこちらの観客と審判を洗脳したのが原因だろうとサクラは心の中で思った。


「向こうも控えの勇者が出てきたか!」


 雑魚を振り切り、サクラの元にガイアールが辿り着いた。勇者達を睨め付ける二人だが、背後に気配を察し振り返る。


「うっらぁー!」


 サクラの背後には、彼女を後ろから襲おうと、大剣を振りかぶる勇者寺尾の姿があった。


「躱せ、サクラ!」

「くっ、!」


 寺尾の背後から奇襲に対し刀で受け止めるサクラ、華奢な彼女の体は力の籠った寺尾の攻撃に耐えられず、そのまま吹き飛ばされてしまった。


「サクラ!」


 ガイアールは飛ばされたサクラの方へ駆けつけようとするが、突如、自分に向かって放たれた針を躱すので精一杯であった。


「何をやっている内田?」

「髪の毛飛ばして、あの男を洗脳しようとしたのよ。躱されたけど」

「あれだけの強さだ、簡単には操れんだろう」

「あの天使はあっさり操れたぞ」


 ガイアールは勇者達の話しを聞き、勇者内田が自分を洗脳させようとしたことを知る。だが、事前に知っていればあの針のように鋭い髪の毛を躱すのは造作もない。ガイアールは内田に対して警戒をしつつ、隣に立つ勇者佐伯に向けて拳を構えた。そのガイアールの構えを見て油断できないと判断した佐伯は口を開く。


「西村の時のように油断はしないぞ。俺もアルカナ能力を開放する!」


 次の瞬間、佐伯の体は激しい炎に包まれた。否、炎を鎧のように纏っていた。


「俺のアルカナ能力は〈太陽〉炎を自在に操る能力だ!」




 寺尾によって舞台上の端まで飛ばされたサクラの前に寺尾が立ち塞がった。


「お嬢ちゃん、おとなしく降参するなら、痛い目に合わなくても済むぞ。お嬢ちゃんのような幼女でもちゃんと愛してやるからさ」

(このロリコンが!)


 まだ小学生くらいのサクラを性的な目で見つめる寺尾、サクラは今すぐでも切り刻んでやりたいと思ったが、敵のアルカナ能力が分からない以上、うかつの行動はできなかった。


 両者拮抗状態でしばらく動けないと思われたその時、サクラ目の前にいたはずの寺尾がいやらしい印象を与える笑顔を見せた途端に、一瞬で姿を消し、背後から彼女を羽交い締めにする。


「離せ!この!この!」


 羽交い締めにされたサクラの体はそのまま持ち上げられる。唯一の武器である刀も羽交い締めにされた際に落としてしまい、年相応の子供のように駄々をこね抵抗するしかない。無力化されたサクラの頬を舐めながら、寺尾は彼女の耳元で囁いた。


「僕のアルカナ能力は〈死神〉相手の死角に瞬間移動する能力さ」




「これで、粗方倒したのです!」


 敵を粗方倒したクーアンは幻獣魔法を解き、炎の尻尾をいつものモフモフの尻尾に戻し戦況を確認した。


「なんか、他の勇者が出てきているですね、おや、サクラちゃんがピンチではないですか。これを助けてあげれば、私の事を自分よりも上だと認めるはずです」


 ライバルであるサクラにどんな勝負事でも勝ちたかったクーアンは絶好の機会だと判断し、勇者に羽交い締めにされているサクラの元に行こうとする。しかし、


「!?…くっ!何です?」


 自分の直感が何かが襲ってくる察知し、クーアンは慌ててその場でしゃがんだ。攻撃は確かに躱したはずだが、彼女の腕には刃物で切り裂かれてたように浅い切り傷があった。


「誰です?」


 姿は見えないが自分の周囲に敵がいると判断したクーアンは叫ぶ。


「ふん、見た目通り獣というわけか。でもその尻尾はモフモフしていて気持ち良さそうだ。切り取ってマフラーにでもしてやるよ」


 姿なき敵は、クーアンを値踏みするように言うと自身の名前を告げた。


「私の名前は大村あすみ、アルカナ能力は自分の姿を隠すことができる〈隠者〉、あなたは私の姿を見ることもなく死んで、私が着る服の材料になるのよ!」


ブックマーク登録ありがとうございます。

まだ、私の腕が未熟な故、読みにくい部分があると思います。それでも応援して頂ける皆さまに感謝しております。

今後もよろしくお願いします。

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