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引きこもり勇者がダンジョンマスターになったら  作者: ニンニク07
第三章 勇者強襲編
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第一次勇者派閥抗争

タイトルを変更しました。

応援ありがとうございます。

 ここで物語は約一か月前、津田健也が王宮を逃げ出した直後に遡る。


「本当に逃げたぜ、あいつ!」

「役立たずなんだから、放っておいてもいいけどな!」


 津田をいじめていたクラスメイト達は王宮から逃げ出す津田を笑い者にした。


「おい、みんな、いずれあいつを見つけてしめてやろうぜ!」


 クラスメイト達に高らかに宣言したのは、津田がいじめる原因を作った人物にしてクラス内の最大派閥である高木一派のリーダー、高木拓斗だ。


「皆様、落ち着いてください!誰か、あの方を追いかけてください!」


 勇者達を召喚に立ち会ったリリア王女は慌てて、護衛の騎士に津田を連れ戻すように指示を出す、しかし、


「王女様、あんな奴ほっとこうぜ!」

「どうせ、役に立たないんだから」

「そうだ!そうだ!」

「あいつを連れ戻すなら俺達が出て行くぞ!」


 女神の使徒にして救世主であるはずの勇者達が何故逃げ出した少年を蔑むのか、リリアは理解に苦しんだ。だが、合理的に考えて彼の持つ〈塔〉の力は、五百年前の戦いで結果を残せなかったので、ハズレ能力と認識されている。使えない能力者一人を庇って、ここにいる勇者達との関係がこじれることを危惧したリリアは、勇者達の要求通りに津田の追跡は行わないことを決めた。


「ところで、お姫様、俺の能力は〈愚者〉っていうんだけど、どういう能力なのかな?」


 自分は津田よりも優れているから、当たり能力を持っていると信じて疑わない高木はリリアに自分の能力について尋ねる。だが、リリアは愚者という言葉を聞き、何故か悲しそうな顔で答えた。


「残念ながら〈愚者〉はすべてのアルカナ能力の中でも最も使えない能力です。能力は一言でいえば無能、あらゆる才能を失い、天に見放されたかのように、何をやっても上手くいきません」

「えっ、今なんて言った?俺が無能?もしや津田よりもこの俺が劣っているというのか」


 クラスカーストで頂点だった者が、無能な存在になった。リリア王女のこの爆弾発言はクラス内の勢力図は大きく変えることになる。




 その後、勇者達は王宮騎士団の指導の元、剣と魔法の修行を行うこととなる。これは王宮内で豪遊させるための交換条件であったため、逆らう者はいない。だが、それらの日々は高木にとっては人生で最も苦痛といえる時間の始まりでもあった。


「おい、無能が来たぜ!」

「視界に入るな無能が移る!」


 津田がいなくなり、新たなストレスのはけ口を求めたクラスメイト達は、いじめの対象を津田から高木に変更した。そして、リーダーの没落で崩壊した高木一派に代わり、クラスカーストの頂点に立ったのは、クラス内で高木一派の次に勢力を誇っていた佐伯一派を率いる佐伯集である。


 高木自身が陸上部に所属し、屋外系のスポーツの部員が多数を占めている高木一派、それに対し佐伯集はバスケ部に所属していたため、佐伯一派は屋内系のスポーツの部員で構成されていた。


 屋外派の高木一派と屋内派の佐伯一派、両者は対立関係にあり仲が悪かったが、皮肉にも津田をいじめている時だけは仲が良かった。だが、今は津田は消え、高木一派も崩壊した。


 佐伯達は我が世の春であった。故に自分達に敵はいないと、それなのになんで王宮で剣や魔法の鍛錬をしなければならないのだと考え始めたのだ。


 「折角の異世界転移で自分達はチート能力を持っているのに、何故部活みたいに練習しなければならないんだ!」


 調子に乗っていた佐伯達男女五人はそう言い残すと、なんと、旅費の足しにしようと宝物庫から財宝を盗み出し、王宮を出て行った。だが、運の良いことに、勇者同士の戦いになることを恐れた王国は佐伯達の一連の行動は事前に協議した行為だと発表し黙認してしまう。


 しかし、真相を知っている他の勇者達は当然、やる気を大きく削がれることになり、訓練にも力が入らず、やがて病気を理由に参加を拒む者まで出始めた。だが、そのような状況においても、やる気を滾らせ訓練に励む者達がいた。それが、クラス委員長である朝倉楓率いる一派である。


 この集団の特徴は文武両道で努力家が多いことがあることが挙げられる。特に完璧超人と言われる朝倉は短時間でこの世界の知識を学び、数々の魔法と剣術を会得した結果、僅か三週間で勇者最強はおろか、王国最強と言われるほどになった。


「職業軍人のくせに、この間まで平和な日本で暮らしていた私一人も倒せないの?」

 

 彼女の強さはAランク冒険者クラスが多数所属している騎士団総出でも彼女傷一つ付けられないほどであった。


 何が彼女をそこまで駆り立てるのか。ある意味で究極の自己中である彼女にとって、この世界の平和などはどうでもよかった。彼女の心配ごとはいかに早く魔王達を駆逐し元の世界に戻り、人生勝ち組のレールに戻れるの一点のみであった。朝倉についていく者達も同じ考えだ。

 

 魔王討伐派の朝倉派総数四名、この世界をエンジョイする佐伯派総数五名、そして、高木を含む、未だ王宮に籠る王宮残留派総数十一人。そしてロイヤルニート生活をし始めた津田健也、こうして、勇者達は大きく三つの派閥と一人に分かれた。




 そして一月後の現在、派閥を形成した彼らの元に、かつて自分達がいじめた津田健也が魔王アドラメレクを倒したという一報が入った。その知らせを聞き勇者達の反応は、


「馬鹿な、あのカスが魔王を倒しただと!」


 と、驚いた者と、


「津田で倒せるなら、俺にも倒せる。魔王なんて大したことないな!」


 と、魔王をあざ笑う者の二者に分かれた。


 特に王宮残留派は津田を見下すだけで、自分達も魔王討伐しようとは考えなかった。だが、魔王の怖さを良く理解している王国上層部が津田に勲章を贈ることを検討していることを聞き、初めて勇者達に焦りが生まれた。


 このままでは、色々とまずい、何より自分達が津田に劣るのが我慢できなかった残留派は、朝倉派と協議して彼らを津田の元に派遣し、自分達の元に連れてこさせ、締め上げることにした。


 朝倉派も、王都から出ないどころか修行すらしないで文句ばかり言う残留派に思う所はあったが、魔王との戦いがどのようなものであるか知るために、渋々了承した。


 そして、王都を飛び出して、道中で購入した奴隷達を侍らす佐伯派は、


「おい!津田が魔王を倒したそうだ!」

「マジで!?あいつにやられるとか魔王どんだけ~、アタシでも倒せるんじゃね?魔王」

「かもな!それとセレンとかいう街の近くに津田がいるそうだ!」

「じゃあ、これからそこに行って調子のっている津田を締めようぜ!」


 こうして、残留派、朝倉派、佐伯派、どの派閥も志も目的も異なるが、すべての勇者が津田健也を目指し歩き出した。



愚者の能力を一部変更しました。

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