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引きこもり勇者がダンジョンマスターになったら  作者: ニンニク07
第二章 魔王襲来編
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魔王アドラメレク

  第八魔王アドラメレクは本来、体を動かさずに後方で策を巡らせるタイプの人物だ。彼の持つクリフォト能力〈貪欲〉は殺した相手から力を奪う能力だ。それゆえに、アドラメレクは配下の魔物で対象を弱らせた上で、自ら止めをさし、戦いの最前線には滅多には現れない。


 それが何故、今回は自ら出向いたのか?理由は彼の感じている焦りにある。


 この世界の人間達から見ればアドラメレクは天災といっても良い存在であるが、実は彼を含める序列下位の三体の魔王は他の魔王や魔王達の宿敵である天使達から最弱魔王トリオと呼ばれ蔑まれていた。プライドの高いアドラメレクはいつまでも下に見られることが許せなかった。


 アドラメレクの持つ能力〈貪欲〉はある意味で無限に進化することが可能な能力とも言える。しかし、相手から力を奪うには対象を殺さなければならないという欠点があった。そして残念なことに、彼の強さは魔王の中でも最弱クラスであった。彼と中位以上の魔王や天使達の間には月とスッポンくらいの力の差があったのだ。


 そのため、彼は自分よりも強者から力を奪えなかったので、この世界に住む弱者から力を奪うことにしたが、上手くいかなかった。〈貪欲〉は数ではなく質を求めたからだ。一万人の雑魚を殺すよりも、一人の強者を殺した方が奪える力の量が多かったのである。


 故にアドラメレク自身、セレンの街に冒険者という餌を集める作戦では自分はそこまで強くなれないのではないかと踏んでいた。だがそれでも何か行動しなければ他の魔王に遅れを取りまた馬鹿にされるのではないかという強迫観念があったため、成果が少なくても作戦は実行しなければならないだろうと決めていた。


 そんな時、部下の進言でこの地に他の魔王の拠点と思われる建造物が出現したということを知りアドラメレクの焦りは頂点に達した。自分の狩場を他の魔王に取られることを恐れたのである。抗議ないし、妨害する必要があると判断したアドラメレクはその魔王が自分よりも強者であった場合に備え人間の調査隊に紛れて塔に侵入する。


 だがアドラメレクは三階層で、この塔が魔王ではなく勇者のアルカナ能力によって生み出されたということを知った。


 どのようなアルカナ能力を使えばこのようなダンジョンを建造できるか分からないが、三階層で一目見ただけで、この塔の支配者であるあの少年が勇者であることは容易に判断できた。


 勇者は普通、単独で行動しない。複数のアルカナ能力者と行動を共にするため魔王でも倒すのは容易ではない。だが、今、目の前にいる少年は単独で行動しているようであった。これはチャンスと考えるべきだろう。勇者を殺せれば、セレンの街を落とした時以上の力を得られるだろうはずなのだから。


 三階層で、生き残った冒険者と共に姿を消したのには一瞬驚いたが、ここが塔の構造をしているのを思い出し、すぐに最上階に逃亡したと判断できた。ならば一つずつ階層を突破し、最上階で少年を仕留めてやろう。アドラメレクは得物を追い詰める狩人のような気分で上層への進撃を始める。


 自ら動くのが嫌であったため、道中の敵は部下であるオーガロードに任せながら進む。ユニークモンスターが階層ボスであった階もあったが、四体ものオーガロードを従える自分の敵ではない。こうして僅か一時間という脅威的な速度で八階層に到達した。


 そして現在、第八階層の出口がないこの迷路の中で、魔王アドラメレクは悪態をつく。


(何故、魔王たるこのボクが万全の状態である敵を相手しなければならないのだ!)


 迷路という構造に加え、大量のモンスターが徘徊していた八階層で効率よく階層ボスを見つけだし倒すために、アドラメレクは部下のオーガロード達に自分から離れて、四方に散り、単身で敵を倒せと命令を下す。


 そのため現在アドラメレクには護衛がいない。今まで部下達に戦いを任せ、弱って動けない相手に止めを刺すことしかしてこなかったアドラメレクにとって八階層は苦痛でしかなかった。


 もちろん、圧倒的な魔力と優れた身体能力を持つ魔王アドラメレクがダンジョン内の雑魚モンスターに遅れを取ることはない。だが、自分は止めだけ刺せばよいという彼の美学には反していた。


(このボクに前線で戦わせるとはあの少年、楽には殺さないぞ!)


 ただの得物であった勇者に殺意を滲ませながら、魔王は一人迷宮を進んだ。


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